ファンパーク

ハワイでサッカーと出会い、北米の2部リーグでプロキャリアをスタートさせた異色の経歴を持つ大﨑玲央。
決して順風満帆な道のりではなかったが、「いくつになっても成長できる」という信念を胸に研鑽を積み、今夏、「J1でプレーする」という夢をヴィッセルで叶えた。だが、満足を知らない彼の心は、早くも次を見据える。
「日本代表も目指したい」。新たな夢の実現へ。成長を止めない男は、新たな挑戦の地、神戸で“今”に全力を注ぐ。

求められるポジションで勝利に貢献する仕事を

―6月21日にヴィッセル神戸への移籍が発表されました。前所属の徳島ヴォルティスでは常に主力として戦ってこられましたが、決断に迷いはなかったのでしょうか? 「個人的な思いとしては、ずっと目指していたJ1クラブからの誘いだったので、すぐに『行きたい』と思ったし、迷いはなかったです。ただ、チームのことを考えると、徳島では副キャプテンを任されていたし、昇格を目指して戦っている最中でもあったので、果たしてこのタイミングでチームを離れてもいいのか、自分の責任についてはすごく考えました。それでもこれまで横浜FC、徳島とずっとJ2リーグでプレーしてきて、J1リーグでプレーできるチャンスはそう何度も訪れるものではないと思ったし、今年で27歳という自分の年齢を考えて移籍を決断しました」

―J1リーグでプレーしたいという思いは、いつ頃から芽生えていたのでしょうか? 「高校生までJクラブのアカデミーでプレーしていましたし、僕自身は桐蔭横浜大学を卒業後、すぐにJリーグでプレーしたいと思っていました。ですが、現実的にJ1はおろか、J2クラブからも声が掛からず……それもあってJ3クラブのトライアウトを受けにいくことも考えましたが、そんな時にアメリカの合同トライアウトの話を聞いたんです。それで、チャレンジしてみようとリュック一つで飛び込みました。幼少の頃には約10年間、アメリカに住んでいたこともあって言葉の問題がなかったのも大きかったです。結果的に、カロライナで2年プレーした後、運良く横浜FCでの練習試合に2試合参加できて、獲得してもらえることになりましたが、その頃から将来的にはJ1リーグでのプレーを目指していたし、だからこそ、まずはチームとしてのJ1昇格を一番の目標に掲げていました」

―かつて住んでいたアメリカでプレーすることが夢だった、ということではなかったんですね。 「全く違います(笑)。Jリーグでプレーしたかったけど、声が掛からなかったので仕方なく、という感じです。しかも、僕が所属していたカロライナ・レイルホークスは北米サッカーリーグ2部のチームで、位置付けとしてはメジャーリーグサッカー(MLS)に次ぐステージに所属していましたが、たとえ優勝してもMLSに昇格できるわけではなかったですしね。ただ、僕自身はそこでプレーしながらも、いつかJリーグでプレーするんだという目標は描けていたというか……いや逆かな。そこでプレーするようになって、自分に足りないものを見つけられて、Jリーグでのプレーを描けるようになった。というのも、大学時代の僕は、周りからはメンタルが弱いと言われていたし、守備の必要性も全く感じていなかったから。でも、アメリカでの2年間で必然的にメンタルも鍛えられたし、守備というか、球際の強さを意識できるようにもなり、結果的にそれが横浜FCでのプレーにつながった気がします

―ヴィッセルでのデビュー戦は、7月28日の柏レイソル戦でした。以来、全試合にフル出場されていますが、初めてのJ1リーグとは思えないほど、落ち着いてプレーされています。 「チームとしての戦い方が、自分のプレースタイルにフィットしているのもあるし、周りのスタッフ、チームメイトに助けられているからだと思いますが、確かにすごく気持ち良くサッカーができています。それは、前所属の徳島が似たようなスタイルで戦っていたのも大きいかもしれません。実際、アツさん(三浦淳寛スポーツダイレクター)に声を掛けていただいたのも、非公開で行われたヴィッセルとの練習試合がきっかけですが、獲得に際しても、僕のプレースタイルがヴィッセルのサッカーに合うという話もしていただきましたからね。それに対して僕自身も、もともとはボランチだったこともあり、センターバックからのビルドアップはストロングポイントだと思っていたし、攻撃的なサッカーは僕が好むスタイルでもあったので、すんなりフィットできたんだと思います」

―8月19日のJ1第23節湘南ベルマーレ戦では移籍後初めて、中盤のアンカーを任されました。久しぶりのボランチでのプレーは楽しめましたか? 「公式戦では2年ぶりくらいだったし、練習でもあまり合わせる時間はなかったのですが、周りの選手にも助けられてすんなり入れたし、自分の前にいる選手のクオリティーもあって、以前ボランチをしていた時とはまた違う楽しさを感じながらプレーできました。ただ、今はセンターバックにもやりがいを感じているというか。相手攻撃陣との駆け引きや、後ろからの狙いを持ったパスを何本出せるかにこだわってプレーしている中で、試合後に実際のデータと見比べて自分に課題を見つけるのも楽しいですしね。ただ、両方のポジションができれば選手としてプレーの幅が広がるのは間違いないので、監督に求められるポジションで、チームの勝利に貢献する仕事をやっていきたいと考えています」

◇   ◇   ◇

Vol.51[OCT.2018]

ヴィッセルスマイル Vol.51 [OCT.2018]
  • 編集長スペシャル企画「ヴィッセル神戸『犬会』を開催」/渡部博文選手×前川黛也選手×藤田直之選手×高橋峻希選手×三田啓貴選手×松下佳貴選手
  • VISSEL SMILE EXPRESS/大﨑玲央選手
  • VISSEL LAB/長沢駿選手
  • 秘蔵PHOTO COLLECTION/荻晃太選手
  • 荻晃太選手コラム「ドレスコードはありません」
  • “裏”いぶき日記/前川黛也選手
  • コーチングスタッフインタビュー/林健太郎アシスタントコーチ など

価格:500円(税込)

「ヴィッセルスマイル」の詳細

大﨑玲央

Profile
大﨑玲央(おおさき・れお)
長身を生かした空中戦や対人守備、確かな足元の技術に裏打ちされたビルドアップが魅力のセンターバック。アメリカでプロキャリアをスタートし、横浜FC、徳島を経て今夏より神戸に加入。攻撃的なスタイルがフィットし、すでにレギュラーとして躍動している。
1991年8月7日生まれ、東京都港区出身、187cm/82kg

dazn閉じる