
日本でレベルアップを図り
世界に触れる取り組みで神戸から「日本代表」を。
司会 : アカデミーでの選手育成に関する具体的な取り組みについて教えてください。
清水社長 : 現在、ヴィッセル神戸はJ1昇格を目指しています(2013年9月時点)。クラブとしては今回が2度目のJ2降格なのですが、奇しくも、1度目のJ2降格を経験した2006年が、選手の発掘・育成に力をいれることをクラブとして掲げた年でした。選手の発掘、育成はまさしくアカデミーの重要な役割です。選手の発掘、育成はすぐに答えが出るものではありませんが、施設などのハードの整備と指導者などのソフトの整備を充実させることでアカデミーの活動のレベルアップを図ってきました。その結果、各世代のチームで全国レベルの大会で安定的に戦えるレベルにチーム力が上がり、また、少しずつアカデミー出身選手がトップチームで活躍するようになりました。
今季、アカデミーからトップチームに4人の選手が昇格し、既にレギュラー選手として活躍している選手もいます。2006年が発掘・育成を掲げた年と申し上げましたが、彼らはまさしくその翌年にJr.ユースに入団した世代です。彼らはアカデミーの成果で誕生した選手といえます。
司会 : 今後、アカデミーがさらに発展するためには、どのような課題があると思われますか?
清水社長 : 今は日本人の若い選手もどんどん海外で活躍しています。アカデミーの年代でも、日本の中でレベルアップを図りながら、一方で世界のスタンダードにも触れる活動の場を増やすことが課題と考えています。具体的には18歳以下でも海外のチームと試合をするなどグローバルな活動をしなければならないと感じています。現在、各世代で年1回、スペインやタイなどの海外チームと対戦する遠征をしていますが、海外の同じ年代の選手と試合をすると、日本では得点できていたのに海外ではできないといった発見が多々あります。このような体験、発見は大きく成長するためにはとても大切なことです。また逆に、昨年、タイから中学生の受け入れを行いました。3ヵ月ほどの短期でしたが、様々な面でそうした接点を増やしていくことが重要だと思います。
高島社長 : ローカルとグローバルの両面を大切にすることは、企業経営でも同じです。「シンクグローバリー、アクトローカリー」という言葉から生まれた造語「グローカル」は、経営を考えるときの外せないキーワードとなっています。清水社長のお話をうかがい、アカデミーで国際的に活躍できる人材が育ちつつあると感じました。
皆川執行役員 : これまで弊社では、トップチームを身近に見たり、感じることが大切ということで、子ども記者を募集してピッチの中にも入って選手の息遣いを感じ、汗のしぶきが掛かるのではないかと思われるような場所で試合を見て、試合後にはインタビューをして記事にする「キッズ記者体験」企画を実施して来ました。また、試合前に選手と一緒にグラウンドに入場する「エスコートキッズ」の募集や、ヴィッセル神戸のスクールコーチによるサッカークリニックなども行ってきました。私も清水社長のお話をうかがい、地元新聞社として「地域社会の発展と福祉の向上に尽くす」という社是のもと、アカデミーの活動を今まで以上にさまざまな面からサポートしていかなければならないと痛感しました。
余談になりますが、サッカーが神戸のキラーコンテンツとしての可能性を感じるエピソードを一つ。ヴィッセル神戸のホームグラウンドである「ノエビアスタジアム神戸」は、オープン当初、神戸市立中央球技場という名称でした。1970年代でナイター整備があり、芝生のあるグラウンドとしては日本初の素晴らしい施設なのです。ペレが来日して試合に出場したときのことですが、試合後にペレが芝生の手入れをしている職人(グラウンドキーパー)に駆け寄って、「ここの芝生は素晴らしい。感謝します」と言ったそうです。それほど神戸の施設は素晴らしいのです。芝生は、芝の長さに合わせてシューズ(取替式スパイク)を調整しなければならないほど選手にとってはナーバスにならざるを得ない重要なポイントなのです。神戸にはサッカーを心から愛する市民や歴史や環境といった独特の包容力が存在するんです。
清水社長 : 確かに神戸は、あらゆる面から見て兵庫県内でもサッカーが根付いている地域だと感じます。
アカデミーの存在を一人でも多くの人に知ってほしい。
司会 : 今回の「ソダテヨウ。」企画の告知広告「神戸から『日本代表』を」が誕生した経緯などについて教えてください。
皆川執行役員 : サッカーを通じて神戸を盛り上げたいということを基本として、より多くの人にその思いを伝え、賛同していただきたいという気持ちを発端としています。一人でも多くの人にこの広告を見ていただき、読んでいただいてアカデミーの存在を知っていただきたいですね。そして、今回の私たちのてい談も読んでいただいてアカデミーパートナーとなる企業が増えることを願っています。また、一人でも多くの方にスタジアムに足を運び応援していただくなど、行動に移していただけると嬉しいですね。
高島社長 : ヴィッセル神戸のトップチームは今、J1昇格を目指して躍進しています。アカデミーパートナーとして、これを機により多くの人に若手選手の育成の大切さを知っていただきたいという想いを込めています。熱い気持ちを「ソダテヨウ。」広告で多くの人に伝えながらアカデミーの活動を続けることで「神戸はサッカーのまち」であることを浸透させていきたいと思っています。
清水社長 : 「神戸から」というコピーに共感し、使命を感じています。今日、高島社長と皆川執行役員のお話をうかがい、改めて神戸とサッカーは深い関係があり、その長い歴史と文化を担っていると感じました。神戸から日本代表を育てることを目標に、今後も精進していきたいと思います。
司会 : 最後に、ヴィッセル神戸の育成の今後の目標についてお聞かせください。
清水社長 : 世界的に見てトップクラスのクラブであるFCバルセロナは若手選手の育成にも力を入れていることでも知られています。昨シーズンのリーグ戦・レバンテ戦でピッチ上の11人全員がカンテラ(下部組織)出身の選手で占められたという新聞記事がありました。現在、ヴィッセル神戸にはFCバルセロナで副会長を務めていた人間が、役員でいます。そうした事例も目標にしながら、ヴィッセルとしても、近い将来、アカデミー出身の選手が多くを占めるチームにしたいと考えています。そして、神戸から日本代表をさらに輩出し、世界で活躍する選手を神戸一丸となって応援頂けるような日を、一日でも早く実現したいと思います。
高島社長 : 神戸から世界で活躍する選手が育つことは、神戸の誇りになります。
皆川執行役員 : スポーツはすぐに答えが出ないものですが、智恵をしぼって多くの方がアカデミーを応援できる環境づくりに取り組みたいと思います。2020年には東京オリンピックが開催されます。アカデミー生の方も練習に一層、力が入ることでしょう。
余談になりますが、サッカーに限らずすべてのスポーツは練習しなければ上達しません。ところが練習をしたからといって報われるとは限らないという不条理や理不尽な一面もあります。この不条理や理不尽さに直面したときに乗り越えることで心が成長し、人間性が高まります。
清水社長 : おっしゃる通りです。サッカーを通じて、神戸が賑わい、人が育つまちとなって神戸の新しい魅力が発信できるようになるといいですね。ヴィッセル神戸には、大きな使命があると感じます。
清水社長・高島社長・皆川執行役員 :
本日はどうもありがとうございました。
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