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2026年9月12日

5分でわかる!今節のヴィッセル(明治安田J1第7節 鹿島戦)


「5分でわかる!今節のヴィッセル」は、サッカー未経験者でもプレーや戦術を学びながら目のつけ所を磨ける、5分でサクッと読める新コーナーです。(※『覆面記者の目』とは別のライターが執筆しています)

大迫勇也が古巣相手にPKで貴重な先制弾。
そして山川哲史の決勝点で“王者”に競り勝つ。

ゲームのポイント

・試合の入り方で後手を踏まない。
・先制点を奪えるかどうか。

試合概要

 明治安田J1リーグ第7節は、J1百年構想リーグを制したヴィッセルと昨シーズンのJ1リーグで頂点に立った鹿島アントラーズによる“王者対決”となった。J1リーグ3連勝中の2位・ヴィッセルは大迫勇也と武藤嘉紀が先発。チームをまとめる中盤の底(アンカー)には3試合連続で酒井高徳が入った。一方、2連敗中の3位・鹿島アントラーズはエースのレオ セアラがコンディション不良で欠場。代わりにFW徳田 誉がスタメンに名を連ねた。試合はヴィッセルが大迫勇也のPKで先制に成功。その後、鹿島アントラーズに同点ゴールを許したが、後半の77分に山川哲史の今シーズン初ゴールで再び1点リード。スコアはそのまま動かず、ヴィッセルが4連勝で2位キープに成功した。
 試合のポイントは酒井高徳が警戒していたように「試合の入り方」だった。J1百年構想リーグでヴィッセルに敗れてタイトルを逃した鹿島アントラーズは、最初からフルスロットルで来ると想定された。だが、予想に反して鹿島アントラーズが用意してきたのは“奇策”。基本布陣の[4−4−2]ではなく、[4−2−3−1]と並びを変えてきたのだ。
 意表を突かれたヴィッセルだったが、冷静にボールを回しながら相手の出方をうかがうことができた。そして徐々に攻略の糸口をつかんでいく。特に右サイドでは大迫勇也と武藤嘉紀が攻撃の起点を作り、右サイドバックの髙橋壱晟が絡んで分厚い攻撃を展開。深い位置まで攻め込む形を作った。「試合の入り方」という点では、相手のパワーを回避しながらコントロールできたと見ていいだろう。
 もう一つのポイントは先制点の行方だった。ヴィッセルは前節までの6試合で先制点を奪った4試合は全て勝利していた。逆に先制点を奪われた試合は1分け1敗で勝てていない。J1百年構想リーグの鹿島アントラーズ戦では先制点を奪ったプレーオフラウンド第1戦を5−0で圧勝した一方で、先制点を許した第2戦は0−2で敗れている。ヴィッセルにとって先制点は勝つための大きな要素だった。
 その中で、ヴィッセルは後半の56分に先制点を奪う。ジエゴのロングスローから、こぼれ球を拾った山川哲史がシュートを放つと、それが相手選手の手に当たってPKチャンスを獲得。それを大迫勇也がしっかりと決めた。
 その後、73分にチャヴリッチに同点ゴールを許したが、77分にはジエゴによるロングスローからの二次攻撃で山川哲史がヘディングシュートを決めて追加点。最終的にヴィッセルが2−1でシーズン序盤の天王山を制した。


ピックアッププレー解説

ハイライト動画はこちら) 
 今節は武藤嘉紀のプレスバックを取り上げたい。プレスバックとはボールをロストした瞬間に、自陣へ素早く戻りながら相手にプレッシャーをかける守備の動きを言う。ボールを持っている相手選手は、前にいるDFとプレスバックした選手に挟み込まれる形となる。ヴィッセルの選手たちにはこのプレスバックが求められており、できなければ試合にはなかなか出られない。
 そして武藤嘉紀の場合は、単に戻ってプレスをかけるだけではなく、自分たちのボールにしてしまうところがすごいところだ。
 例えば、後半67分頃の場面。ジエゴのロングスローをクリアされ、相手のカウンターを受けそうになったが、井手口陽介と武藤嘉紀がドリブルで前に進もうとした松村優太を挟み込んでカウンターを阻止。しかも、武藤嘉紀が相手選手とボールとの間に体を入れてファウルを受け、自分たちのボールにしている。
 78分頃には前線で小川諒也がボールを保持し、クロスボールを上げる瞬間に武藤嘉紀が体を入れてファウルを受けてマイボールに。87分には髙橋壱晟のクリアボールを林 晴己に拾われそうになったが、そこに武藤嘉紀が体を入れてまたしてもファウルを受けている。結果的にマイボールにならなかった場面を含めると、武藤嘉紀がプレスバックしたシーンはかなり多い。しかも、これを90分間続けられるから驚かされる。
 武藤嘉紀と言えば、大迫勇也と並ぶヴィッセルのエースだけにどうしても攻撃面がクローズアップされがちだが、守備面でのチーム貢献度も非常に高い。彼が“代えの効かない選手”と言われるのは、攻撃面もさることながら献身的な守備にも理由がある。
 今節はゴールやアシストといった目に見える数字は残っていないが、守備面での貢献度が光る一戦だった。

まとめ

 大迫勇也の先制点で流れをつかんだ今節。一時は同点に追いつかれたが、山川哲史のゴールで再び引き離すなど勝負強さが光った。だが、エース不在の鹿島アントラーズに1失点。それを踏まえて修正点は以下の2つだ。

・DFラインの背後を取られる
前半39分頃に決定機を作られた場面では、ロングボールをDFラインの背後に放り込まれ、スピードのある松村優太に右サイドを突破された。そこから中央に折り返され、鈴木優磨にフリーでシュートを打たれている。ゴールが外れたからよかったものの、肝を冷やす場面だった。

・終盤の守備
山川哲史は「後半の最後のほうは押し込まれる展開もありましたし、そこはずっと課題なので、まだまだ向き合っていかないといけない」と試合後に振り返った。特に今節のように相手チームが負けている場合、どんどんフレッシュな選手を投入して畳み掛けてくる。アディショナルタイムには松村優太のクロスボールを、鈴木優磨にヘディンシュートされる決定機も作られた。相手の猛攻への対処には少し課題が残った。


キープレーヤー ジエゴ選手

 今節だけではないが、キープレーヤーはジエゴだった。山川哲史がPKチャンスを獲得した場面も、山川哲史の追加点も、その始まりはジエゴのロングスローだったからだ。
 PKチャンスを獲得した場面では、ニアサイドに立つ山川哲史をめがけてジエゴがライナー性の鋭いロングスローを入れ、鈴木優磨に一度はブロックされたが、こぼれ球を山川哲史が拾ってシュートを放った。それが相手選手の手に当たってPKチャンスを得た。
 追加点の場面では、ジエゴのロングスローがクリアされるも、それをジエゴが拾い、マテウス トゥーレルとのワンツーで抜け出して山川哲史へクロスボールを供給。山川哲史がそれをヘディングでゴール左隅へと沈めた。
 大迫勇也はジエゴのロングスローについて、試合後にこんなコメントを残した。「単純にあれだけ飛ばせるロングスロワーがいる中で、それを使わない手はない。相手も簡単に外に出してはダメってなりますし、相手を押し込めます。いい意味で相手のプレッシャーになっていると思います」
 ジエゴは「(自分のロングスローが)どういう形であれチームに貢献できているのはうれしい。ヴィッセルはいい選手が揃っているチームだけれど、その中でもう一つの武器になっていると思っています」と話した。
 鋭く回転しながら伸びるロングスローは意図的ではなく「右手の力の方が強いので自然と回転がかかっている」ようだが、回転がかかっていることで相手の処理を難しくしている可能性はある。“ジエゴ・マジック”である。