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今夏、長年在籍した横浜F・マリノスを離れ、ヴィッセルでの新たなチャレンジを選択した飯倉大樹。「『すべてやり切ったな』と思えるように、覚悟を持ってサッカーと向き合っていこう」。確固たる決意のもと、体を張ったシュートストップや積極的なビルドアップという武器を生かし新天地でも存在感を示している守護神は、これからも自分の特長を貫きながらヴィッセルを高みへ導く。

自分でも驚くくらい毎日が充実していて楽しい

―加入から約2カ月。チームメイトの皆さんからは「すぐに溶け込んだ」と伺いました。 「基本的にはかなりの人見知りですが、確かに馴染むのに時間はかかりませんでした。ただ、人としてはすぐに馴染めても、サッカー選手としてはそうはいかないと思っていました。僕がどういうプレーをするのかを公式戦で示して、仲間に認められて、初めて受け入れてもらえると思っていたからです。シーズンが切り替わるタイミングでの移籍なら、やりたいサッカー、プレーが少々うまくいかなくても『やり続けていれば成長するだろう』という前提で進めますが、シーズン中はそうもいかないですしね。加えて、僕が加入した時はいい選手はいるのに安定して戦えていなかったし、順位も下位に低迷していただけに、サッカーのクオリティーや内容も上げつつ、結果も伴わせていかなきゃいけないプレッシャーは相当ありました」

―改めて、『移籍』の決断に至った経緯を教えてください。 「小学生の時から在籍した横浜F・マリノスなので、クラブへの愛着は間違いなくあり、めちゃめちゃ悩みました。それに30歳を過ぎて、何となく頭の片隅で『マリノスで引退しよう』とも考えていたんです。というのも、過去に在籍した『ミスターマリノス』と呼ばれるような選手で、マリノスで引退した選手はほぼいないから。それもあって、ヴィッセルから話をいただいた時も一度は断ろうと思ったんです。マリノスでの引退を考えていたのに、他のチームでプレーする自分は想像できないな、と。それに移籍してまたゼロからいろいろなことを築いていくのは大変だな、みたいな気持ちもありました。ただ、いろいろな人に相談をする中で、僕が兄のように慕っている人に言われたんです。『いつか引退する時に「あの時、移籍しておけば良かった」と後悔する可能性が少しでもあるなら、移籍しろ』と。『社会人として、誰かに必要とされることなんてそうそうない。俺なら、そこまで必要とされるなら海外でも行く』とも言ってもらいました。その言葉とアツさん(三浦淳寛スポーツダイレクター)の『ヴィッセルのサッカーに、大樹のスタイルは間違いなく合う。絶対にヴィッセルに来たほうがいい』と熱く求めていただいた言葉がリンクして、最終的には『い、い、い、行きます!』みたいな感じで返事をしました」

―プロ2年目にロッソ熊本(現ロアッソ熊本)へ期限付き移籍された時とは違い、今回は『完全移籍』です。そこはどう受け止めていますか? 「熊本へ行った当時は、今ほどレンタルバックが主流じゃない時代で、期限付き移籍といっても『片道切符』がほとんどだったんです。ただ、可愛がっていただいていた奥大介さん(14年に逝去)がクラブに『絶対に大樹はマリノスに戻してやってくれ』と掛け合ってくれて、何事もなければマリノスに戻るという契約での期限付き移籍になった。そういう意味ではマリノスを離れるという感覚はなかったし、ただただ『熊本で結果を出して、成長してマリノスに帰ろう』と思っていました。それに対して33歳での今回の移籍は、年齢的にも『期限付き』は現実的ではなかったし、僕自身もせっかく決断する限りは、サッカー選手として清く正しくサッカーを楽しみ、努力しようと純粋に思ったというか。マリノスへの愛着は心の中に残しながらも、ヴィッセルで残りのサッカー人生を『すべてやり切ったな』と思えるように覚悟を持ってサッカーと向き合っていこうと考えました。結果、今では自分でも驚くくらい毎日が充実していて楽しいし、やりがいも感じています。新たな仲間との出会いから受ける刺激もたくさんありますしね。プライベートでは家が近所の(酒井)高徳や(山口)蛍と一緒にいることが多く、彼らとはいつも練習や試合についていろいろな話をしていますが、そんなふうに僕を熱く焚きつけてくれる仲間が近くにいることもすごく幸せだなって思います。だからこそ、この幸せを自分だけのもので終わらせないように、ヴィッセルを少しでも良くするために全力を注ぎたいと思っています」

―チームについて伺います。先ほど「いい選手はいるけど安定して戦えていない」という言葉がありましたが、その理由として気づいたことがあれば教えてください。 「僕の加入後に加わったトーマス(フェルマーレン)や高徳を含め、明らかに選手のクオリティーや個々が持っている武器には強さを感じましたが、最初の数試合はそれが点でしかなったというか。11人が個々の能力だけでプレーしている印象がありました。それが試合を重ねるごとに少しずつ良くなってきて、ようやく点と点が結びついて『線』になってきたことで結果も出せるようになってきたんだと思います。ただ、今の選手の能力を思えば、もっと関係性を深め、ハードワークができるようになれば、より隙のない強いチームになれるはずです。そうなれば、試合前から相手に『ヴィッセルと戦うのはキツいな』と思わせられるようになるし、その上でそれぞれの個性が発揮されるようになれば、きっとどのチームも寄せつけないほど強くなれる。そのポテンシャルは十分に備えているからこそ、個性という強みが一人歩きしてウィークポイントにならないようにみんなでベクトルを合わせて戦っていきたいです」

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つづきは、オフィシャル月刊誌「ヴィッセルスマイル」Vol.62[NOV.2019]でお読みください。

ヴィッセルスマイル Vol.62 [NOV.2019]
  • 副編集長スペシャル企画/「ヴィッセル・クッキング!」前川黛也選手×安井拓也選手×郷家友太選手
  • VISSEL SMILE SPECIAL ISSUE/飯倉大樹選手
  • VISSEL LAB/セルジ サンペール選手
  • ヴィッセル神戸×新生ホームサービス/前川黛也選手&安井拓也選手
  • 秘蔵PHOTO COLLECTION/田中順也選手
  • ダイヤの“裏”いぶき日記/前川黛也選手 など

価格:500円(税込)

「ヴィッセルスマイル」の詳細

飯倉大樹

Profile
飯倉大樹(いいくら・ひろき)
熊本へ期限付き移籍した1年間を除き、アカデミー時代から横浜FMでプレー。今夏、その愛着あるクラブを離れて神戸への完全移籍を決断。豊富な経験に加え、アグレッシブなセービングや守備範囲の広さ、正確な足元の技術を生かし攻守両面でチームに貢献している。
1986年6月1日生まれ、神奈川県横浜市出身、181cm/75kg

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