ファンパーク

ルーキーイヤーの昨シーズン、即戦力として開幕戦からピッチに立つと、本職以外のポジションに挑む中で多くの経験を積み上げた。しかし、一方で大ケガによる長期離脱にも見舞われ、失意のどん底も味わった。そんな彼が今、改めて感じているのは「サッカーができる幸せ」。その純粋な喜びを胸に抱き、松下佳貴はピッチを駆ける。「特別なクラブ」と話すヴィッセル神戸で必要とされるプレーヤーになるために。

純粋に「サッカーをやりたい」という気持ちが強くなった

―J1第3節ベガルタ仙台戦では小川慶治朗選手のアクシデントで急遽、出番が回ってきました。どんなことを考えてピッチに立ちましたか? 「アップもしていなかったし、スパイクのひもも結んでいない状態でしたからね。正直、焦りました。ただ、試合前のアップで温まっていた体がまだ冷えていない時間帯だったのは良かったというか。体がガチガチで動かないということもなかったですし、試合前のミーティングで慶治朗くんが預かっていたポジションの役割はしっかり頭に入っていたので、それを体現することだけを考えていました。また、個人的には今シーズン初スタメンを飾った第2節アルビレックス新潟戦で、質の低いプレーをしてしまったという反省がありましたから。特にワンタッチで逃げるようなパスが多くなってしまったというか……。もちろん、そういうプレーが生きる局面ではそういった選択もありだと思いますが、場合によっては自分がボールを持って時間を作るとか、前を向くシーンをもっと増やさなければいけないと感じていたので、そこは意識していました」

―後半開始早々に大森晃太郎選手が決めた先制点は松下選手のアシストによるものでした。その場面も含めて簡単に試合を振り返ってもらえますか? 「前半はアクシデントでああいう交代になったせいか、うまく噛み合っていない感じもしましたが、それでも失点ゼロに抑えられたのは大きかった。また、ハーフタイムで監督が改めてやるべきことを整理してくれて後半を迎えた中で、早い時間帯に晃太郎くんが決めてくれたことで落ち着けたところはあったと思います。そのアシストについては……チョンと横パスをしただけですけどね(笑)。でも、その後のナオさん(藤田直之)のゴールも含め、一人ひとりが頑張ってボールをつなぐとか、こぼれ球に反応するとか、2点ともチームとしてやりたいことをしっかりと発揮した上での得点だったので、それでチームが勢いづいたところはありました」

―頭の中で整理したことをピッチで体現できるシーンは、昨年に比べて増えているという手応えはありますか? 「それはすごくあります。まだ3試合ですが、J1リーグのスピードにも慣れたことで余裕を持ってプレーできるようになったし、周りが見えるようになってきた分、プレーの選択肢が増えたり、自分の背後にいる相手選手の状況なども感じられるようになった。また、自分が瞬間、瞬間でどんなプレーを選択すればいいのかを考える余裕も出てきたように思います。昨年の今頃の自分を思い返すと……昨年も開幕戦から途中出場でピッチに立てたとはいえ、ホンマにいっぱいいっぱいでしたから。ケガから復帰した後の2ndステージの自分を思い返しても、サイドハーフを始めたばかりというのもありましたが、ひたすら走って、近くの選手にボールをつけて、レアンドロにパスを出して……とシンプルな役割を担っていたから何とかこなせていた、という感じでしたしね。ただ、今年は同じ2列目でも監督に求められる仕事が変わってきていますから。守備をするのは大前提として、サイドバックと連係しながらボールを奪いに行くとか、長い距離を走るということも求められているし、最近は『(DFとDFの)間でボールを受けろ』ということもよく言われています。もっとも、これらは僕のプレースタイルを踏まえてのことで、例えば慶治朗くんが入れば、長所を踏まえて裏のスペースに走るという役割を求められるはず。ただ、基本的にボールを何回も受けて、前を向いてプレーするというのはベースにあるので、自分のところで時間を作るとか、ボールを引き込んで次のアクションにつなげるという役割をもっと増やさなければいけないと思っているし、そういうプレーを実現するためにも、自分のプレーのバリエーションを広げていく必要があると感じています」

―昨年は開幕戦のピッチに立ったものの、4月末の柏レイソル戦で大ケガを負うというアクシデントもありました。苦しい時間だったと思いますが、それは今の自分にどう生かされていますか? 「左腓骨筋腱脱臼で全治3カ月と診断されて……。これまでのサッカー人生で、ここまで長くサッカーから離れたことがなかっただけに、正直、ショックでした。最初はケガとどう向き合えばいいのか分からず、特にメンタル的にすごくキツかった。でも、そこを乗り越えてからは、外からチームを見る時間ができたことをポジティブに考えられるようになったというか。これまであまりスタンドから試合を見ることがなかった分、自分ならどうするのかとか、『良くないな』と感じたシーンについて自分ならどう解決するのかを考えられるようになったのはプラスだったと思います。また、純粋に『サッカーをやりたい』という気持ちが強くなったのも良かったです。これまで自分にとってのサッカーは常に『あって当然』のものでしたからね。プレーすることが当たり前過ぎて、自分がこんなにサッカーが好きだとは気付かなかったけど(笑)、サッカーができない状況を経験したことで、プレーできる喜びを素直に感じられるようになったというか。実際、復帰したての頃はボールを蹴れることがうれしくて、練習が終わって寮に帰っても『明日もサッカーができる』ということがすごく幸せでしたしね。それは今も続いています」

◇   ◇   ◇

つづきは、オフィシャル月刊誌「ヴィッセルスマイル」Vol.38[MAY.2017]でお読みください。

ヴィッセルスマイル Vol.38[MAY.2017]
  • 「新編集長×新副編集長『Vスマ』編集会議」田中英雄選手、東隼也選手
  • 特集「RECOMMEND FACE」松下佳貴選手
  • 「VISSEL LAB」ウエスクレイ選手
  • 「秘蔵PHOTO COLLECTION」大槻周平選手
  • 「コーチングスタッフ・インタビュー」クリスチアーノフィジカルコーチ
  • 「3.11復興応援チャリティーイベントレポート」
  • 「いぶき日記ダイジェスト」 など

価格:500円(税込)

「ヴィッセルスマイル」の詳細

松下佳貴

Profile
松下佳貴(まつした・よしき)
左足の正確なパスで攻撃を組み立てるゲームメーカー。プロ1年目の昨年はサイドバックや攻撃的MFで出場してプレーの幅を広げた一方で、負傷離脱も経験。復活した今年はチームに不可欠な選手となるべく、さらなる飛躍を心に誓う。
1994年3月3日生まれ、愛媛県松山市出身、174cm/67kg