ファンパーク

2シーズン続いたケガと開幕直後に負った左鎖骨骨折のケガを乗り越え、ようやく本来の姿を取り戻しつつある小川慶治朗。
2017シーズンは残りわずかとなったが、背番号13の目は輝きを全く失っていない。
「1試合1試合、楽しんでサッカーをしたい」。
その決意は「今年こそ、絶対に見たことのない景色を見たい」というブレない目標へとつながっている。クラブ初のタイトル獲得の瞬間へと── 。

前に進むことを続けていれば来年にも必ずつながっていく

―5月28日のJ1第13節セレッソ大阪戦以来、ほとんどの試合で先発出場を続けています。左鎖骨骨折を経て、どのような思いで戦列に戻ってこられたのでしょうか? 「左鎖骨の骨折から復帰し、5月3日のルヴァンカップ第4節サガン鳥栖戦で途中から使ってもらった時は、僕自身もまだゲーム勘の部分で物足りなさを感じていました。おそらく、監督にもベストな状態ではないと判断されていたと思います。ただ、ゲーム勘はやり続けることで戻っていく自信はあったので、僕自身は「使われない」という事実を素直に受け止めた上で、ケガをしないことだけを考えていました。というのも、ここ2年はケガ続きだった中で、昨年末に戦列復帰した時も『ケガのことは頭から外してしまおう』と思っていましたが、左鎖骨を骨折してからは逆に、ケガのことを常に頭に入れておくことにしたんです。本来、僕に限らず選手って『ケガのことは考えたくない』と思うのが常ですが、それだと自分にブレーキがかからないというか。もちろん、試合が始まればそんなことは言っていられないし、『点を取りたい』、『取らなアカン』という欲も自然と出てきてしまいます。でも、練習中や試合前は『今日もケガをしないようにやろう』と意識することも大事なのかな、と。そうすることで自分が無駄に焦らないというか、点は欲しいけど、それ以外のところでも貢献できることはあると冷静に考えられる。だからこそ、戦列に戻ってからも、とにかくケガをせずにフルで戦い続けられる自分でいようと意識していました」

―小川選手が戦列復帰した時期、チームは今ひとつ波に乗り切れない苦しい状況にあり、リーグ戦では第15節ガンバ大阪戦から第17節川崎フロンターレ戦まで3連敗を喫しました。この時期のチームにはどんなことを感じていましたか? 「正直、雰囲気は悪かったと思います。その雰囲気というのはオフ・ザ・ピッチのところではなく、オンのところで、です。戦いに臨むにあたっても、勝っていないから当然なのかもしれないけど、どことなく空気が澱んでいたし、本来なら勝つことで払拭されていくはずが、それもできずに何もかもが悪い方向に流れてしまっていた。それに対して、『自分がピッチに立つことで、この澱みを払拭してやる』と思っていましたが、正直そう簡単ではなかったし、実際に変えられなかったという反省は残りました。ただ、どんな時も選手それぞれが『何とかしなければ』という思いで取り組んできた結果、最近になってようやくその澱んだ空気が払拭されました。残念ながら、その間にリーグ戦の『タイトル』の可能性はなくなってしまったけど、今の状態を継続しながら前に進むこと、未来に目を向けることを続けていれば、天皇杯や来年の戦いにも必ずつながっていくと信じています」

―個人的にはチーム状況を踏まえ、どんなプレーでチームに変化を与えたいと考えていましたか? 「一番は運動量です。チーム状態が良くない時期は個々がボールを欲しがって、足元で受けて何かをしようとする傾向にあったので、だからこそ自分の走力を生かそうと思っていました。ただ、最初はそういう自分の考えとプレーがリンクしていかないところも正直ありました。これは先ほど言った試合勘の物足りなさにもつながる話ですが、練習では「やれる」と思っていたことが、試合になってみるとイメージどおりにいかないことも多かった。でも、それも先発で使い続けてもらったことで変化していったというか。途中から出るよりも先発でピッチに立つほうが、徐々に試合に慣れてギアを上げていける分、試合勘を取り戻しやすいということもあり、最近はより自分らしいプレーが出せるようになっている。特に、吉田孝行監督が就任してからは、それまでなかなか効果的に生かせていなかったルーカス(ポドルスキ)をチームとして機能させられるようになったのも大きいと思います。実際、僕自身も彼がトップ下にいてくれることで、前向きにボールを受けられるシーンが増えたし、走力が生きる回数が増えてきた。ただ、まだまだ欲しいタイミングでボールが出てくる回数は多くないので、よりコミュニケーションを深めていくことが必要だと感じています」

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Vol.44[NOV.2017]

ヴィッセルスマイル Vol.44[NOV.2017]
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「ヴィッセルスマイル」の詳細

小川慶治朗

Profile
小川慶治朗(おがわ・けいじろう)
神戸のエースナンバー「13」を背負う生え抜きアタッカー。豊富なスタミナと抜群のスプリント力を武器に攻撃を活性化させる。近年泣かされたケガの呪縛を乗り越え、完全復調。「楽しむ」ことを胸に、残りシーズンも全力で駆け続ける。
1992年7月14日生まれ、兵庫県三田市出身、170cm/65kg

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