ファンパーク

幼少の頃に培った強じんなメンタルを武器にプロキャリアをスタートさせ、
数々の大一番で結果を残してきた。そしてキャリアの転機となったJリーグ挑戦。
異国の地でプレーすることは決して容易いわけではなかったが、
絶対的な『自信』と溢れんばかりの『日本愛』を胸に、
ペドロ ジュニオールはこれからも未来を切り拓く。

強じんなメンタルによってここ一番で結果を残す

 生まれた時からずっと『サッカー』と一緒だった。傍らにはいつもボールがあったし、両親や兄弟に言われるまでもなくサッカーに夢中になった。子供の頃の遊び道具も常にサッカーボールで、ミニカーなどの玩具をもらっても「それで遊ぶのが楽しいと思ったことは一度もない」と本人。それは小学校に通い始めてからも変わらず、朝起きてから夜寝るまで頭の中はサッカー一色で「授業中も席には座っていたけど、気持ちの半分以上はすでにグラウンドに行っていた」と笑う。もっとも、何回かはこっそり授業を抜け出してボールを蹴りに行ったこともあった。

 初めてチームに所属したのは彼の地元、ブラジル北部のパラ州のチーム、アウバトロスだ。その一員として出場したゴイアス州の首都ゴイアニアでの大会で得点王になると、同大会に出場していたヴィラノバ(当時ブラジル2部リーグのクラブ)のスカウトから、同ユースチームでプレーしないかと声を掛けられた。『プロサッカー選手』になることを目標にしていた彼は、その誘いを二つ返事で快諾。高校を中退し、ヴィラノバに加入した。

「7歳の時に両親が離婚したこともあって、僕は一日も早く大人になる必要があったし、父にもそうした責任感を常々求められていました。だから、もしプロになれなければ、勉強をして仕事をするという別の道を決断したかもしれません。ですが、2003年6月にヴィラノバのユースチームに入った3カ月後、僕はプロ契約を勝ち取ることができました。そこにはプロを目指して集まってきた才能豊かな選手が50~60人いましたが、才能というのは努力があってこそ生かされるもの。その考えが常に頭にあったので、自分がどれだけ結果を残そうと努力だけは忘れてはいけないと思っていました」

 ポジションは幼少の頃からFW。時に遊びの中でGKを預かることはあったが、基本的にFW以外のポジションに興味はなく、ひたすら点を取ることにこだわった。そのために、居残り練習の中でその日の課題はその日のうちに克服することを心掛けたり、左右両足で同じ精度のシュートが蹴れるように練習したことも。また、ヴィラノバ加入後は武器であるスピードをより際立たせるために、瞬発系のトレーニングには人一倍熱心に取り組んだ。その甲斐あって、ヴィラノバ時代から今日まで、走力の測定テストで誰かに負けた記憶は一度しかないそうだ。

「スポルチ・レシフェ時代に、FWシーロ(現フルミネンセ)には100分の1秒くらいの差で負けたけれど、それ以外のチームで行ったスピード系のテストでは常に一番でした。それは僕の負けず嫌いな性格も影響していますが(笑)、何よりそのスピードが必ず試合の中で僕を助けてくれると考えていたからでもあります。もっとも、サッカーは100メートル走を競うスポーツではないですからね。プロになってからは、そこにアジリティを加えることでサッカーの動きの中でスピードが発揮できるよう意識しています」

 プロとしての公式戦デビューは16歳の時。ブラジル全国選手権の2部リーグに出場すると、試合前の緊張が嘘のように開始5分でゴールを決める。それによってプレッシャーからも解き放たれたのか、以降は彼の独壇場に。結果、1ゴール2アシストの活躍でチームの勝利に貢献した。

 そうしたチャンスで結果を残すことで道を切り拓いてきたペドロは、05年にグレミオ、07年にはクルゼイロという名門クラブに移籍。より高いステージに身を置くことで、自身にさらなる成長を求める。その中ではケガに見舞われたり、思うように力を発揮できない時期を過ごしたりもしたが、「基本的にはどんな時も、自分の置かれている状況を楽しむことができた」と振り返る。

 それを支えたのが、彼の強いメンタリティだろう。先にも書いた通り、幼少時に両親の離婚を経験し、「子供の時から大人であることを求められてきたことも、芯をブラすことなくサッカーに取り組んでこれた理由の一つだった」とペドロ。そうした家庭環境は、自然と彼の心を強くした。

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Vol.15[SEP.2014]

ヴィッセルスマイル Vol.15[SEP.2014]
  • 「今月の男:ペドロ ジュニオール」(ペドロ ジュニオール選手特集)
  • 田代編集長のレンタルルーム IN THE ROOM~ファビオの部屋
     (シンプリシオ選手が岩波拓也選手をゲストに迎えた対談)
  • 夏の大超戦!TUBEスペシャルインタビュー
  • 相馬崇人の欧州蹴球探訪
  • HASSY's EYE(橋本英郎選手がプレーや戦術を解説)
  • あの人は今(第5回:東京ヴェルディユースコーチ 菅原智さん) ほか

価格:500円(税込)

「ヴィッセルスマイル」の詳細

ペドロ ジュニオール

Profile
ペドロ ジュニオール
かつて大宮、新潟、G大阪などで猛威を振るったブラジル人ドリブラー。大胆に持ち出し、対面する守備陣を混乱に陥れる。FWでもサイドでもプレーでき、個人で局面を打開する切れ味鋭いドリブルは圧巻。昨季は韓国・済州で得点ランキング3位の17得点をマーク。今季も得点を量産し、チームの勝利に大きく貢献している。
1987年1月29日生まれ、ブラジル パラ州出身、182cm/75kg

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