この試合の意味
のっけから仰々しい見出しになってしまったが、この日の試合を振り返る上では避けて通ることはできないだろう。
AFCチャンピオンズリーグエリート2025/26(以下ACLE)リーグステージ最終節となったこの日の試合だが、両チームの立場は全く異なるものとなっていた。12チーム中8チームがノックアウトステージ進出となる今回のレギュレーションだが、ヴィッセルにとって重要なことは4位以内でのリーグステージ通過を決めることにあった。ホーム&アウェイで行われるラウンド16だが、4位以内で通過したチームは2試合目をホームで戦うことができる。それほど大きな問題ではないように思われる方もいるかもしれないが、実はこれが無視できない要素だ。統計によれば、2試合目をホームで迎えるチームの勝率は54〜56%と、僅かではあるが高くなっている。ACLEのレギュレーションもそうだが、こうしたホーム&アウェイによる対戦では、順位が上のチームが2試合目をホームで迎えることが多いため、これは単なる実力差だという意見もある。そのため近年ではこうしたアドバンテージは減少傾向にあると言われているが、依然として数字の上では有利であることは事実だ。
ではなぜこうした傾向が生まれるのだろう。主な理由として言われていることは3つある。1つ目は環境の違いだ。仮に最初の試合を落としたとしても、戦い慣れたスタジアムで逆転を狙いやすいという精神的な影響がある。このピッチ環境の習熟度の差は、試合中の細かなプレーに影響を与える。また選手は普段慣れた環境での試合となるため、試合までのペースが作りやすい。これに対して対戦相手は長距離の移動、それに伴う時差ボケなど、克服すべき問題が複数生まれる。2つ目は戦略の立てやすさだ。1試合目の結果を踏まえた上で、スコアを考えながらの戦いができるという点だ。そして3つ目がサポーターの存在だ。地元での圧倒的な声援は選手にとっての安心感であると同時に、対戦相手にとってはプレッシャーとなる。さらに最近の研究では、圧倒的な歓声は審判の判断-主にアディショナルタイムの取り方やファウルの基準ーに影響を与えているという。
上記のような理由からヴィッセルは4位以内での通過を目標としていたわけだが、前記したように、それは試合前の時点で確定していた。となると、この試合に際して勝利以外のテーマ設定が必要になる。この命題に対してミヒャエル スキッベ監督は、チーム力の底上げだけでなく「未来のヴィッセルの形を探る」という回答を見せてくれたのではないだろうか。
前者は兎も角、後者については少々大袈裟かもしれない。しかしこの試合でキャプテンを務めた岩波拓也を筆頭に、途中交代を含めて6人のヴィッセルアカデミー出身者をピッチに送り出せたという事実は、クラブ、そしてファン・サポーターにとっても大きな意味を持っている。2006年に始まった「育成・発掘型クラブへの転換」は20年の時を経て、かつては憧れだったACLEの舞台に複数のアカデミー出身者を同時にピッチに立たせることができるまでになった。この育成・発掘型のクラブという方針は、チーム強化の方法としては最も時間とコストを要し、決して効率的な方法とは言えない。しかし継続的な強さを手に入れるための方法でもある。多くのクラブが一度はこの方針を立てるが、そのほとんどがその非効率性ゆえに、途中で形骸化し、最悪の場合はこれを放棄してしまう。そんな中、実直にこれを続けてきた三木谷浩史会長以下クラブスタッフの粘り強さには、改めて頭が下がる。
この日アジアの頂点を目指す舞台に立ったヴィッセルアカデミー出身の選手たちにとっては、自分たちに課せられた責任の重さと、その先で手に入れることのできる栄光の大きさの一端を感じ取ることができたのではないだろうか。

スキッベ監督の狙い
シーズン開幕からの5連戦という状況を鑑み、スキッベ監督は試合前から大幅なターンオーバーを示唆していた。5連戦の4試合目にあたるこの試合に際して「過去の3試合に出場した選手は使いません」と明言していた。そのスキッベ監督が選んだメンバーは下記の通りだ。
GKは権田修一。最終ラインは右サイドバックに、この試合がヴィッセルでのデビュー戦となる山田海斗。センターバックは右に岩波、左にンドカ ボニフェイス。左サイドバックはカエターノの4枚。中盤は3枚。アンカーには山内翔、インサイドハーフには郷家友太と日髙光揮。前線は右ウイングに広瀬陸斗、左ウイングにはジェアン パトリッキ、そして中央には冨永虹七というメンバーだった。
並びとしてはいつも通りの構成ではあったが、昨季までのスキッベ監督を知る人間にとっては少々意外だったことも事実だ。昨季まで広島を率いていたスキッベ監督については、「毎回ベストメンバーで臨み、大幅なターンオーバーをしない監督」という印象を持っていた人が多いのではないだろうか。筆者も例に漏れない。昨季までの広島は、ACLEやACL2を戦っている中でも、大きなメンバーチェンジを見せる試合は少なかった。この変化を読み解くカギは、シーズン前のスキッベ監督の発言にある。これは以前にも書いたことではあるが、広島で見せていた3バックをヴィッセルにも持ち込むのかとメディアに問われた際、「私はヨーロッパでは4バックを多く使っていた」と答えた上で、広島で3バックを採用した理由を前任者の作り上げたものを変える必要性を感じなかったこと、そして広島の選手の特性を見た時、3バックが最適だと判断したためだと語った。この言葉から判ることは、スキッベ監督は極めて現実的な対応を見せる指揮官であるということだ。自らの形にこだわるのではなく、そのチームに最適な形を採る柔軟性を持っている。
この言葉をヒントとして考えると、スキッベ監督の目にはヴィッセルの選手層は厚く、レギュラーと呼ばれるメンバー以外でも十分に戦うことができるという判断に至ったように思える。もちろん前段で書いたように、最低限度のミッションである「4位以内でのリーグステージ突破」を既に決めていたことも影響しているだろうが、それ以上にこの日のメンバーで勝利を狙うことができるという自信のようなものがあったのではないだろうか。そしてそれを担保するための武器が山川哲史、永戸勝也といった、チームの守備力を担保できる選手の帯同だったように思える。
そしてこの日のメンバーからは、スキッベ監督の強かな狙いも感じることができた。この日対戦したジョホールはマレーシアにおける絶対王者ともいうべき存在だ。国内に限って言えば100試合負けなし、リーグ戦11連覇中、この試合前の直近でも33連勝中と、脅威的とも言える成績を残している。マレーシアリーグのレベルがJリーグのレベルには達していないことは事実だろうが、これだけの成績を残しているチームともなれば話は別だ。さらにジョホールは外国籍選手を積極的に採用し、彼らをチームの中心に据えたチーム作りをしている。そんなチーム相手であるだけに、この日のメンバーでヴィッセルが勝利した場合には大きな自信を手に入れることができる。また敗れたとしても、その内容次第では自分たちの力はアジアでも通用するという自信を手に入れることができる。そう考えれば、スキッベ監督が試合前に語った、「ジョホールがヨーロッパなど世界中から多くのいい選手が参加していることは知っています」としながらも、「プロとして試合を行うのであれば、まず勝ちたいという気持ちを持って試合を行うことがサッカー選手として重要です」という、一見当たり前のような言葉も深みを帯びてくる。
輝きを放った若武者たち
この日の試合で最も注目したのは、右サイドバックの山田だった。山田は、昨季ヴィッセルアカデミーからトップ昇格すると同時に、ヴィッセルがパートナーシップを結ぶシアトル・サウンダーズFC(アメリカ)のリザーブチームであるタコマ・ディファイアンスに武者修行に出た。そこで25試合出場3ゴールと結果を残してきたが、結論から言えばこの先が楽しみな選手であることを証明した。ヴィッセルアカデミー時代は192cmという長身を活かしたセンターバックとして活躍していたが、この試合ではサイドバックとしてプレーした。試合後に山田は背後を取られないように、相手よりも先に下がるという意識でプレーしていたとコメントした。これは失点しないという視座に立てば、正しい対応だ。事実、山田のサイドにはネネ、ベルクソンというスピードと突破力に優れた選手が立っていたが、山田が決定的に破られる場面は見られなかったように思う。相手のプレッシャーを受けて、下がりながら味方からのボールを受けた場面では、身体の向きを斜めにすることで、パスコースを確保しながら、相手をいなして捌くといった技術も身についていることを証明した。前にこぼれたボールに対しても積極的にチャレンジしていき、相手との競り合いにも怯むことなく立ち向かっていった姿勢は、今後に向けての希望でもある。
ジョホールが3-5-2でセットしていたことを思えば、ヴィッセルの前線のプレスを効果的なものとするため、山田にはもっと高い位置でプレーしてほしいという思いはあったが、本職がセンターバックだとすれば、それもやむを得ないことだったのかもしれない。それでも山田の高さがあれば、逆サイドでボールを握っている局面では、ファーサイドでの脅威となることができる。その山田にチャンスが訪れたのは21分だった。広瀬が蹴った左コーナーキックを混戦の中で拾ったパトリッキが2度にわたってシュートを放った。2本目のシュートを相手GKが弾き出したボールは右ポスト前にこぼれた。山田はこのボールにチャレンジし、ニア上を狙ったシュートを放った。タイミングは悪くなかったように思われたが、前に立っていたネネが身体を投げ出した守備で、山田のシュートするためのスペースを消した。その結果、やや窮屈な状態でのシュートとなり、これは右ポストを叩いた。得点とはならなかったものの、山田の攻撃的な能力の高さを垣間見ることができたように思えた。欲を言えば、パトリッキがシュートを放つ際、山田の外側に相手の影はなく、もう一歩前に出ていても良かったように思う。アカデミー年代であれば全く問題のない動きではあったが、トップチームの試合ともなると、その一歩が勝敗を左右する。
ヴィッセルでのデビュー戦を白星で飾れなかったことは、山田の中で悔しい思い出として刻まれたのかもしれないが、この日の試合で山田が大きな可能性を見せたことは事実だ。次の出場がどのポジションになるのかは不明だが、この日の試合で見せた「相手よりも先んじる」気持ちだけは大切にしてほしい。

3トップの中央に入った冨永だが、こちらも確実な成長を見せた。シュートに絡む回数こそ少なかったものの、ファーストディフェンダーとしての動きは決して悪くなかった。そして何度も密集の中で見せたボールを握る技術の高さは、ジョホールに対しても十分に通用していた。前で構えてボールを受けるタイプの選手ではないが、裏に抜ける意識は高く、使い方次第では面白い戦力となるだろう。冨永は実直に汗をかき続けることができる選手だ。ヴィッセルのように前に相手を押し込んでいきたいスタイルでは、こうした選手こそが貴重な存在となる。ボール非保持に変わった中で、素早く相手に寄せていくことを繰り返す中で、相手のミスを誘い、高い位置でのボールカットを促す。フォワードでありながら「縁の下の力持ち」になることのできる選手は、決して多くはない。そしてこうした選手の場合、試合を通じて相手の守備ラインに対して駆け引きを続けることができれば、ゴールを奪う可能性は高まる。1人で全てを解決するタイプではないかもしれないが、チーム全体で前に圧力をかけていくスキッベ監督のスタイル下では、冨永にはやれることが多そうだ。
この試合で際立って輝きを放った選手が2人いた。1人は濱﨑健斗だ。60分に冨永との交代でピッチに送り込まれた濱﨑だが、圧倒的な動きの良さでジョホールの守備を翻弄した。インサイドハーフとしてサイドでボールを受けた際には、そこから積極的に中に切れ込み、攻撃を仕掛けていった。特に相手最終ラインの前を横に移動していく動きは、守備の選手にとってはつかまえる場所を定め難い見事な動きだった。それもペナルティエリア近くで動いていたため、相手には「下手に倒せばPK」という警戒心が働いていたのだろう。濱﨑の動きが効果的な理由は、その根底にシュートを放つ意識があるためだ。常にゴールを狙う貪欲さがあればこそ、相手にとって危険な存在となっている。そしてそれを狙うだけの技術もある。ヴィッセルには少ないタイプの選手であることも影響し、今や濱﨑はレギュラーメンバーの中で「ジョーカー的な存在」となりつつある。膠着していたヴィッセルの攻撃を活性化した濱﨑には、この先もっと大きな選手に育ってほしい。

そしてもう1人が日髙だ。この日の試合ではインサイドハーフとして先発した日髙だが、随所で気の利いたプレーを見せていた。ボール保持時にはアンカーの山内の近くまで落ちたかと思えば、一気に前まで上がり、前線を後ろから押し上げた。そしてボール非保持時にはボールホルダーに素早く寄せ、球際での勝負を仕掛けるなど、積極的な動きが目を惹いた。昨季まではサイドバックやボランチといった場所でのプレーが多かった日髙だが、インサイドハーフという前めのポジションでの起用が、思い切りをもたらしたのかもしれない。もともと技術的には安定したものを持っており、昨季以前も目立つ活躍を見せた試合もあったのだが、それが長続きしなかったというのが実情だ。特に守備的な部分でのポジションの取り方に苦労しているように見えていた。それをスキッベ監督が見越した上で、日髙にとってプレッシャーの少ないポジションを与えたのだとすれば、これは正解だったように思う。

覚醒を望む
ヴィッセルアカデミー出身の選手を中心に、多くの若手選手が躍動した試合ではあったが、一層の奮起を望みたい選手がいる。それは山内だ。ヴィッセルでの3年目を迎えた山内は、この日の試合ではアンカーとして先発した。ヴィッセルアカデミー時代から頭脳と技術を兼ね備えた選手として高い評価を受けていた山内だが、プロになってからの2年間は、自身にとっても決して満足のいくものではなかったのではないだろうか。それだけに今季の初先発となるこの日の試合にも、並々ならぬ決意を持って臨んでいたことは想像に難くない。しかし結論から言えば、輝きを放つまでには至らなかったように思う。
過去にも指摘したことではあるが、山内に必要なのは「仕掛ける気持ち」であるように思う。山内はボールスキル、戦術眼といった部分においては優れたものを持っている。Jリーグ黎明期のスター選手で、筑波大時代に山内の指導に当たった中西哲夫氏も、その才能を高く評価していたことは、よく知られている。しかし周りが見えすぎてしまう故か、山内のプレーには意外性が少ない。
「バランスを取る気持ち」はアンカーにとって大事な要素ではあるが、これを重んじすぎてしまうと、攻撃の停滞を招きかねない。その兼ね合いは言葉で説明できるものではなく、多分に感覚的なものであり、それだけにつかむことが難しい。最終ラインの前に1人で立つアンカーとして優先すべきが「ボールを失わない」ことであるのは間違いない。しかしアンカーが前にボールを入れていく動きを見せなければ、チームの攻め方はロングボールなどに限定されてしまう。山内ほどの選手であれば、そんなことは百も承知のはずだが、実際にトップチーム同士の試合でピッチに立った時には、相手との強弱を正確に測ることが難しいためか、セーフティーなプレーが目立っているように思う。この日の試合でも、積極的に前を狙うジョホールの攻撃に対して、山内は確実にボールをつないではいたが、局面を裏返すようなプレーはあまり見られなかった。
しかしこの日の試合には、今後、山内が殻を破るためのヒントが隠されていたように思う。それは16分のシーンだ。
カエターノからの縦のボールにパトリッキが抜け出し、左からクロスを入れた。これにファーサイドから広瀬が飛び込んだが、その手前で相手選手がクリアした。このこぼれ球は日髙と競った相手が一度は拾ったが、そのボールを奪ったのが山内だった。山内はそこから自陣までボールを戻した。これは相手のカウンターチャンスとなる可能性の高いプレーであっただけに、山内のカバーはチームを救った。ここで注目してほしいのが、ボールを拾ってから自陣に戻すまでの山内の動き方だ。時間にして1秒程度の話ではあるのだが、山内がボールを受けた時、前には相手選手2人がいた。そして一瞬、山内はその間を抜くような動きを見せた。本気で抜こうとしていたかは不明だが、この動きによって相手の出足は一瞬止まった。こうした前にチャンレンジする姿勢こそが、今の山内に最も必要なものなのではないだろうか。
ボールをつなぎながら相手を押し込んでいく今季のスタイルにおいて、アンカーの選手に求められているものは、これまで以上に大きい。守備時の安定感はもちろんだが、それ以上に攻撃のスイッチを入れる動きが要求される。アンカーとして最も大事な「前に出るタイミング」をつかみ、前に仕掛ける勇気さえ持つことができれば、山内の能力は存分に発揮されるだろう。山内の覚醒を期待している。
苦労した守備
試合後、スキッベ監督は「最終的に試合を分析した際に、ジョホールの方が質の高いゴール前のチャンスを多く作ったように感じています」と語り、内容的にもジョホールに分があったことを認めた。残念ながらその感想は正しいように思う。ヴィッセルの若い選手たちの奮闘もあったが、この試合の勝敗がノックアウトステージ進出に大きくかかわってくるジョホールの本気が、ヴィッセルの技術をやや上回っていた。オフサイドで取り消されたとはいえ、失点以前にもヴィッセルは2度ゴールネットを揺らされていた。GKの権田が最後方から守り方を指示し、選手たちもそれに応えるように身体を張っていたが、ジョホールの圧力を受ける中で、そこから抜け出すことができないシーンが目立った。その理由は複数あるが、ここでは2つの理由を挙げる。
1つ目は環境の変化だ。春が近づいているとはいえ、日本では未だに最高気温が10度を超える程度であり、特に夜は上着が欠かせない。しかしこの日試合が行われたスルタン・イブラヒム・スタジアムのあるジョホール州は、試合開始の時点で気温は29度近くあり、湿度も71%と高かった。選手たちは一気に真冬から真夏に放り込まれたような格好だが、この激しい気温変化が動きに影響を与えたことは間違いないだろう。
そしてもう1つはジョホールのプレースタイルと判定基準だ。試合を通じてジョホールの選手は、競り合いの中で手を使うシーンが目立っていた。Jリーグであればファウルになると思われるプレーも少なくなかったが、その多くがノーファウルと判断された。特にヴィッセルが前に圧力をかけ始めたところで、そうしたプレーが多かったように思う。この試合の審判団はウズベキスタンのチームだったが、判定基準はJリーグに比べて緩かったように思う。その結果、選手たちが基準を探りながらのプレーとなってしまった点は気の毒だったように思う。
しかしそうした外的要因のみで敗れたというわけではない。ヴィッセルの守備において、決定的な場面でのミスが多かったことも事実だ。オフサイドによってゴールは認められなかったが、55分の山内のプレーなどはその典型ともいうべきものだ。自陣ペナルティエリア前で相手のパスをカットした山内が左に流れながら前をうかがったのだが、そこで前に抜け出す体勢を整えていたパトリッキを狙ったパスは、山内の目の前にいた相手選手の足にまっすぐに当たった。「サッカーはミスのスポーツ」と言われるが、このミスは山内らしくない軽率なプレーだったように思う。
失点シーンもそうした流れの中にあった。73分に味方からのバックパスを受けた相手GKが左足で蹴ったロングボールは、ボニフェイスと競り合った途中出場のジャイロが、これを奪い、左へパス。ここに、Jリーグでのプレー経験もあるマルコス ギリェルメが走り込み、GKとの1対1を制してゴールに流し込んだ。大きく弾んだロングボールではあったが、ボニフェイスが先に身体を入れることに成功していただけに残念な失点ではあった。このプレーを見直してみると、ボニフェイスがボールを処理しようと身体の力を抜いた瞬間にジャイロは身体を強く当て、ボニフェイスを倒しボールを奪った。結果論ではあるが、ボニフェイスには別の判断が必要だったのかもしれない。
この試合で得たもの
前記したようにジョホールはホームゲームに強い。それはこの試合でもスタジアムを埋め尽くしていた熱狂的なサポーターに支えられたものだが、ノックアウトステージ進出への思いだけではなく、「ホームでは負けない」という自信が、ヴィッセルのチャレンジ精神を上回っていたのかもしれない。とはいえ、ヴィッセルにも勝機はあった。ヴィッセルのシュートは2度ポストを叩き、チャンスに山田や濱﨑が放ったシュートは枠を捉えきれなかった。結果的にシュート数、コーナーキック数でジョホールを上回ったことを思えば、チャンスを活かせなかったヴィッセルに対して、確実にチャンスを仕留めたジョホール、という評価になるのかもしれない。
試合後の会見でジョホールを率いたシスコ ムニョス監督は、サイドをヴィッセルに破られたことを認めながらも、最終ラインは一度も守備を崩さなかったと胸を張った。確かにパトリッキのスピードはジョホールの右サイドを何度も切り裂いた。そして深い位置からの効果的なクロスを何度も見せたが、ここで中にいた選手が最終ラインを引っ張り出すことはできなかった。後半途中から登場した小松蓮が身体を張り、前線で潰れ役を演じ続けたが、その後のプレーとなる相手の最終ラインの中での駆け引きは足りなかったように思う。
選手個々の技術レベルでいえば、ヴィッセルはジョホールに引けを取ることはなく、むしろ上回っていたように思う。しかしカウンターに徹し続けたジョホールに対して、ヴィッセルはフィニッシュの形を定めきることができなかったのではないだろうか。真剣勝負の場では技術を超える実直さがあることを、この日出場した選手たちには忘れないでほしい。
次戦に向けて
この日の試合をもって、ACLEリーグステージは終了となった。ヴィッセルは無事に2位でのフィニッシュを成し遂げた。対戦相手は残る試合の結果次第ではあるが、再びジョホールと当たる可能性も残っている。いずれにしてもファイナルズ進出をかけた決戦は、3月上旬に行われる予定だ。ヴィッセルはそこまでにチーム力を引き上げ、万全の態勢を整えて、この先の決戦に臨まなければならない。
そのためにも明治安田J1百年構想リーグでは結果を残すと同時に、チームのさらなる強化、そしてコンディションの調整という3つの目的を持って戦ってほしい。
次戦、ヴィッセルは清水とアウェイで対戦する。清水の指揮官は、昨季までヴィッセルで指揮を執っていた吉田孝行監督だ。吉田監督はヴィッセルの選手の特徴をよく知っているかもしれないが、同様にヴィッセルの選手たちは吉田監督の指示を想像することができる。お互いに手の内を知り尽くした者同士の対戦ではあるが、ヴィッセルの選手たちならば、成長したチームの姿を、かつての指揮官の前で力強く披露してくれるものと確信している。再びの中3日という厳しい日程だが、ここできっちりと勝利を挙げ、5連戦の最後を締めくくりたい。


