
この試合の価値
試合後の会見で、岡山を率いる木山隆之監督は「勝てる要素を見つけるのが難しい試合になってしまった」と総括した。過去にはヴィッセルでU-18の監督や、トップチームのコーチを務めたことのある木山監督は、「ブレずに変化させるサッカー」を得意とする指導者だ。特定のフォーメーションにこだわることはなく、左右のサイドにそれぞれ異なる役割を与えるなど柔軟な戦いを得意としている。そのベースとなっているのがハードワークと強固な守備だ。そんな木山監督のもう1つの特徴は、未完成のチームを託されることが多い点にある。チームに基礎と規律を持ち込むことができる指導者という評価が確立しているためだろう。そんな木山監督にとって、岡山は6つめのJリーグクラブだ。就任3年目の2024年にクラブ史上初となる「J1昇格」を果たし、昨季は見事に「J1残留」も成し遂げた。
その木山監督はこの試合を前に昨季の2度の対戦を振り返り、「力の差を感じた」と口にした。その上で「あれからあまり時間が経っていないので彼ら(ヴィッセル)のレベルが落ちることはないし、自分たちがどこまで進歩したかは分からないけど、しっかり勝つために勝負したい」と、この試合にかける意気込みを語った。ヴィッセルが格上であることを認めつつも、そこに正面から挑み、自分たちのチーム力を確認したい、というのが、この試合におけるテーマだったのだろう。
この木山監督の姿勢は、ヴィッセルにとって歓迎すべきものだったように思う。ヴィッセルにとってこの日の試合は、明治安田J1百年構想リーグ(以下百年構想リーグ)西地区の首位を守るための戦いであると同時に、迫りつつあるAFCチャンピオンズリーグエリート(以下ACLE)・ファイナルズに向けたチーム構築の場でもあったためだ。もしここで木山監督が勝点を拾うことのみに執着し、全体を引いたうえで守り切る戦いを志向した場合、ヴィッセルはそれに対応した戦い方を余儀なくされていただろう。それも必要な戦い方ではあるが、様々な戦力を試しながらのチーム構築という視座に立ったとき、正直に言ってメリットは少ない。しかし木山監督が正面からぶつかってくれたことで、ヴィッセルは戦い方の幅が広がりつつあることを実感することができた。先を睨んだとき、これは勝点3以上の価値があったように思う。
収穫
この日の試合に際しては3つの大きな変更があった。大迫勇也と酒井高徳の先発復帰、累積警告によるマテウス トゥーレルの欠場、そして新加入した満田誠の先発起用だ。これらについての詳細は後述するが、そのいずれをもヴィッセルは収穫とすることができたように思う。試合後、ミヒャエル スキッベ監督は開口一番「チームのパフォーマンスに、非常に満足しています」と口にしたが、その言葉通り、ヴィッセルは素晴らしい試合運びを見せ、終始岡山を圧倒してみせた。これは冒頭でも触れたように、敵将も認めるところだった。
この試合でヴィッセルが岡山を圧倒した理由は複数あると思うが、最も大きかったのは、チームとしての完成度が高まってきた点にある。そこに通底しているのは、毎回のように書いていることだが、時間とスペースを管理するという考え方だ。ボール保持時にはボールホルダーが時間を作り、周囲の選手はそこでスペースに入り込む。逆にボール非保持時には相手に対して素早く寄せることで、相手から時間とスペースを奪い取る。この考えの下で全ての選手が動くことができていたため、ヴィッセルは試合を支配することができたのだ。この時間とスペースの重要性を裏付けているのが、試合後に岡山のワントップに入っていた一美和成のコメントだ。一美は球際での勝負に負けていたことを認めたうえで、自分たちで前にボールを運ぼうとしていたのかという質問に対して「縦に急ぎ過ぎていて、キツい場面が多かったです。もっとサイドを使ったりしていたらもう少し違う展開だったかなと思います。もっと前も動き出さないといけなかったかなと思いますけど、守備で前から行っているので、もう少し時間が欲しかったです」と語った。この一美のコメントは、どんな戦い方においても時間とスペースの管理が重要なことを示している。
サッカーにおいて「チームの完成度」という言葉は頻出するが、それは選手の思考を統一するということと同義である。これが為されれば、攻守両局面での動きが定まるため、全員が最適なポジションを取ることができる。サッカー中継を見ている中では「選手同士の距離感が乱れている」といった解説が聞かれるが、これは各選手が異なる考え方の下で動いているということだ。この日の試合で、ヴィッセルのパスが乱れるシーンは何度もあった。しかし多くの場合、周囲の選手がそのズレを吸収し、ボール保持が続くといった場面が散見された。これこそが「適切な距離」に選手が配置されていたことの証左であり、それは選手同士が同じ意思の下でボールを動かしていたからこその現象なのだ。
象徴的な場面は18分だ。岡山のセンターバックである田上大地が自陣から前線の一美に差し込もうとしたボールは、センターサークルでインサイドハーフの井手口陽介がカット。これはボールに勢いがあったため、井手口自身が収めることはできなかった。しかし近くにいたアンカーの扇原貴宏がこれを拾い、左ウイングの永戸勝也へ送った。このパスは自陣方向へズレていたため、永戸は足の裏でボールの勢いを殺し、背後に立っていた左サイドバックのジエゴに戻した。ジエゴはこれを右センターバックのンドカ ボニフェイスへ渡し、ボニフェイスはこれをグラウンダーで縦に差し込んだ。下がりながらこれを受けた右ウイングの満田はヒールを使い、相手ゴール方向にフリック。相手ゴール方向に立っていたインサイドハーフの郷家友太が相手の裏を取った位置でこれを受け、ゴールに迫った。この場面では得点に至らなかったものの、一連の動きはあらかじめ設計されていたかのようにスムーズだった。これこそが、志向が統一されたうえで適切な距離を保てているときの動きだ。
ここで「適切な距離」だけを意識すると、味方同士の距離を近づけようとしてしまうケースも見られる。しかしそうした場合、多くは密集を作り出してしまうことになる。結果として相手選手も呼び込んでしまい、ボールの行方は定まらなくなってしまう。しかしこの18分のヴィッセルの動きを見てみると、比較的近くにいたのは、相手のパスをカットした井手口に対する扇原と、満田とそのフリックを受けた郷家だけだ。そしてボールの動きによって、岡山の選手を動かすことに成功している。その結果、ヴィッセルの選手はスペースを有効に使うことができていた。
構造の変化
この試合でもう1つ注目したいのは、ボールを動かす場面にかかわった選手の顔ぶれだ。この日の試合に際してスキッベ監督は4人の選手を入れ替えたが、選手が代わったことによる停滞は全く感じられなかった。ボール保持時には落ち着いたボール運びで前進し、長い時間を岡山陣内で過ごした。またボール非保持時には全体が連動した守備を見せ、岡山の前進を阻み続けた。まさにスキッベ監督が理想として掲げる戦い方を見せたのだ。これは単に選手個々の能力に因るものではなく、チーム全体が同じ意図をもって戦うことができていたためだ。そこでは大迫や酒井といった、これまでであればボールを動かす過程において中心を担っていた選手が無関係な場面も少なからずあった。前段で記した18分の場面でも井手口から扇原、そして永戸へとボールを動かす中で、前線には大迫がいた。しかしここでヴィッセルの選手たちは、大迫を全く関与させることなく、決定機を作り出すことに成功した。この間、大迫には相手センターバック2枚がついていたのだが、大迫が大きく動かないため、そこで相手選手はいわゆるピン止めされる格好になっていたのだ。これも「大迫を効果的に使う」ための1つの方策だ。
試合後、酒井は負傷者の多い現状について尋ねられた際、「誰がどこで出てもその選手が自分の役割をわかっている」としたうえで、チームの総合力が高まっているという実感があると話した。この言葉からは、チームの構造が変化しつつあることが感じられた。誤解のないように言っておくと、大迫や酒井、そして現在は戦列を離れている武藤嘉紀といった選手たちの力量は、未だ傑出している。彼らがチームの軸であることに変わりはない。しかし彼らへの依存度を下げることで、その負担を減らすことができれば、今まで以上に力を発揮してくれるであろうことは間違いない。
先日とあるテレビ番組で、島根県松江市にある松江城の構造についての解説を見た。現存天守として国宝指定を受けている松江城は「互入式通し柱」という特殊な構造をしているという。これは心柱のような大きな柱を使わずに、2階分の長さを持つ通し柱を、場所を変えてバランス良く配置し、荷重を分散させる構造だ。心柱として使える巨木が手に入らなかったからだとも言われているが、これによって松江城は、巨大な心柱を使わずとも、高い耐震性能を備えることとなった。
どちらの方が構造的に優れているということはないだろうが、チーム構造としての理想は「松江城」の方式であるように思う。心柱には絶対の安定感があるものの、ひとつのパーツへの依存度が高すぎるように思えるためだ。建物の荷重をプレー依存度に置き換えれば、ヴィッセルは心柱方式から、互入式通し柱を持つ構造に生まれ変わりつつあるのかもしれない。スキッベ監督が多くの選手を起用し、結果を残すことで経験と自信を植え付けていることがこの構造変化につながっているのだとすれば、今のヴィッセルは正しい進化の過程にいると言えるのではないだろうか。
将軍2人の帰還
チームの構造が変化しつつあるとしても、この日の試合で先発に復帰した大迫と酒井の実力と存在感は、やはり別格だった。
まずは大迫だ。この日の試合では前半のみの出場にとどまったが、大迫が出場していた時間、ヴィッセルは岡山を圧倒していた。その原動力となったのは、大迫のボールを収める力とポジショニングセンスだ。大迫はパスの受け先として中盤に下がりながら、確実に相手の守備を引っ張り出していた。この大迫が下がって受ける形は以前から頻繁に見られていたが、最近の試合ではこれが形として整いつつあるように見える。厚みのある攻撃が安定的に繰り出せるようになったためだろう。前線中央の大迫が下がって受ける形になった時、両ウイングとインサイドハーフが前に出る。そして大迫は遅れて前に上がる、もしくはその後ろから攻撃を押し上げるなど、複数の手段を用いる。
この存在の大きさは、大迫が退いた後半に痛感させられた。スキッベ監督は後半開始から、大迫に変えて内野航太郎を投入した。そこからヴィッセルの前線でのボールの収まりがあまり見られなくなった。ここで誤解してほしくないのは、これは大迫と内野の能力差だけが原因ではないということだ。後半開始から木山監督はフィジカルに優れたルカオを投入し、ここを起点にヴィッセル陣内に入り込む形を整えた。これに対してヴィッセルの守備は落ち着いた対応を続けてはいたものの、前半のようにヴィッセルがボールを握り続けるという展開ではなくなった。さらに内野はハイボールに競り合う場面が多く、これをマークする岡山の守備陣に背後からプレッシャーをかけられ続けた。その中で内野は相手守備の裏にこぼれるボールに対して走りこむなど、前線での仕事を1枚でこなす時間が長く、持ち味を発揮する場面は少なかった。それでも4点目を導いたきっかけが内野の競り合いだったことは、しっかりと記憶しておきたい。
そして酒井だが、こちらは後半アディショナルタイム5分までプレーし、完全復活を印象付けた。試合後には「久しぶりだったので、シンプルにきつかったです」というコメントを残したが、それでも安定した守備とサイドを活性化する攻撃は見事だった。対面する日本代表経験もある江坂任に対しても、中を切りながらマークする名人芸で、思うようなプレーをさせなかった。酒井の守り方は身体を半身にした状態で、腰を軸にして足を運ぶため、相手にとっては中に入るタイミングを見つけきれない。この守り方は身体への負担が大きいが、世界基準で見たときにはスタンダードとも言える守り方だ。こうして外を切りつつ、中の人数がそろうまでの時間と、走りこむためのスペースを作り出す。この日の試合ではトゥーレルが累積警告によって不在だったため、センターバックは右にボニフェイス、左にカエターノというコンビだった。両者とも能力には間違いはないが、公式戦では初のコンビであるだけに、傍らに酒井がいたことは心強かったことだろう。

満田誠
この試合で最も注目されたのが、満田だったことは間違いない。3月末にG大阪から期限付き移籍でヴィッセルにやってきた満田は、この日の試合が「ヴィッセルデビュー戦」となった。まず結論から言えば、この日の試合で満田は能力の高さを存分に発揮し、ヴィッセルに新しい力を加えることのできる選手であることを、そのプレーで証明した。右ウイングで先発した満田だが、まず目を引いたのはそのポジショニングのセンスだった。相手の前で足を止め、ボールの動きに合わせて飛び出すことができるため、相手を確実に足止めできる。そしてサイドでのプレーにおいては、5レーンを意識した立ち位置を取ることができていたため、孤立することはなかった。この日のヴィッセルの攻撃において右サイドが中心となっていたのは、前記した酒井とこの満田の存在があったからこそだ。
さらに満田はボールスキルの高さも見せた。味方からのボールを確実に収め、ヒールを使いながら、新たなスペースに味方を走らせる。こうしたプレーを活かしながら、積極的にゴール方向に進む。この満田の加入は、攻撃を活性化するうえで大きな意味を持っている。実際にこの日生まれた4つのゴール全てに、満田はかかわっていた。以下でそれを見ていく。
最初の得点だが、これは酒井が自陣からタッチライン際を走らせたボールを満田がつないだところから始まった。酒井からのボールに対して、内側から走り出るような形で受けに回り、タッチライン際でヒールを使って、中の郷家につないだ。そして自らタッチライン際を上がり、アタッキングサードに入った地点で郷家からのパスを受け、中に入れた。これは相手守備にクリアされたが、それを拾った酒井がペナルティエリア角近くから蹴り入れた。グラウンダーでゴール方向に向かう、相手にとっては対応の難しいボールだった。記録としてはオウンゴールに訂正されたが、事実上は酒井のゴールと言っても差し支えないだろう。この場面で満田は「らしさ」を存分に発揮した。走り込みながらボールを止める技術。ノールックに近い形で、ヒールパスをつなぐ技術。タッチライン際を走りながらボールを受け、そのまままっすぐに走る技術。そして最後はペナルティエリア近くではゆっくりと弧を描くように中に入り込むセンスだ。
2点目でもヒールパスが冴えわたった。44分に相手がクリアしたボールを、中央付近で扇原がダイレクトに蹴り返した。これを受けた満田はダイレクトのヒールパスで、中にいた永戸につなごうとした。これは相手にカットされたが、動きながらのプレーであったため、体勢を崩した。それを見逃すことなく拾った永戸がゴールに蹴り入れた。
3点目では積極性が光った。失点直後の62分に右サイドで2人を引き付けながらドリブルで前進し、ペナルティエリア内に入り込んだ。ここで一度はボールを失ったが、そこに入り込んだ郷家が倒され、PKを獲得した。このドリブルにおいては、相手がいたこともあり、体勢を保つのが難しかったとは思うが、上げた手を巧く使いながら身体のバランスを取り続けた。そしてその間、動きを止めることがなかったのは、満田の高いボールスキルを証明している。
4点目のシーンでは時間を作り出すプレーが光った。内野が競り合ったボールを拾った満田は足を止め、対面する選手の足を止めることに成功した。時間にしてほんの数秒だが、これこそが次のプレーにつながる時間とスペースを作り出した。満田がボールを拾ったとき、これに最も近くで向き合ったのは小倉幸成だった。満田はここで軽いフェイントを入れたのだが、足を止めてボールを持ったことで、小倉の背後にいた阿部海大も満田のプレーを見なければならなくなった。満田はここでできた時間を使い、右に走り込んできた郷家を使った。これが郷家のゴールにつながった。
満田は広島でスキッベ監督のサッカーを経験しているため、それがチームに溶け込むうえで有利に作用すると見られていた。しかし試合後に満田自身が「フォーメーションも違いますし、チームが違うので、攻撃も守備も全然違います」とコメントしたように、それはさほどアドバンテージとはなっていなかったようだ。しかし続けて発した「最終的に求められてることはハードワークやゴールに向かうプレーだと、今日の試合の中でも、練習からも感じていました」という言葉が示すように、満田は本質を捉えることができる頭を持っている。これは選手にとって、最も必要とされる能力でもある。明示されたプレーを実践できる選手は多いが、そのエッセンスを抽出できる選手となると、そう多くはない。そしてそれができる選手は、チームに溶け込むのが早い。求められていることを論理的に把握できるためだ。
この日の試合で見られた満田の姿は、ヴィッセルの選手強化の正しさを証明しているとも言えるだろう。

課題
前記した通り、後半は岡山が盛り返した。その原動力となったのは、後半開始から投入されたルカオだった。ボールを巧く扱う技術を持った選手ではないが、191cm・96kgという恵まれた体格を活かし、守備に勝負を挑み続けることのできる選手だ。ボニフェイスとカエターノは、この巨漢に対して手を焼いているように見えた。正確に言えばルカオそのものではなく、ルカオへの対処によって生じるスペースの管理に苦慮していたというべきだろう。この試合におけるルカオは、そのフィジカルのみで味方にスペースと時間を作り出すことができることを示した。
こうした強靭なフィジカルを持つ選手との対峙は、この先に控えるACLE・ファイナルズでも予想される事態だ。それだけに対処法をチームとして確立しておくことは、決して無駄なことではない。
ヴィッセルにとってこうした選手と対峙する際、メインとなるのはトゥーレルだ。スピードと強さを併せ持つトゥーレルを当てることで、抑え込むというのは理に叶っている。しかしそれだけに頼ることは危険だ。こうした選手と対峙する際の基本はポストプレーを阻害すること、そして前を向かせないことになる。そのために必要な能力は「予測」、「間合いの確保」、そして「組織的守備」の3つだ。
まず「予測」だが、これは相手にボールが入るのを防ぐためのプレーだ。パスの出どころを予測し、インターセプトを狙う。ヴィッセルにおいては扇原や井手口の役割ということになるだろう。同時にセンターバックは相手との距離を詰め、自由を奪うことが保険として必要になる。その際に寄せすぎることは禁物だ。相手に密着しすぎた場合、ターンする際の軸として利用されてしまうためだ。寄せつつも、一歩引いた位置を保ち、相手の動きに対応できる準備をしておかなければならない。
次の「間合いの確保」だが、ここではボディアングルに注意が必要だ。正対するのではなく、半身で構えることで、相手の動きに対応できる体勢を保つ。また背中を預けられた際には、腕を使い、距離を保ち続ける必要がある。これができていれば、相手がボールを受ける瞬間に、重心をずらすことで、相手の体勢を崩すことができる。
最後の「組織的守備」だが、これはチャレンジ&カバーの徹底ということになるだろう。その際には、追い込む方向を予め定めておくことが必要になる。これができれば、相手の思惑をずらすことができる。さらにここで重要なのは、ファウルを犯さないということだ。
上記したことは基本ではあるが、これを90分間徹底することは決して簡単ではない。全員が同じ意思を持ち、集中を切らさないようにプレーしなければならないためだ。その意味では、この試合でボニフェイスとカエターノが見せたプレーは悪くなかったように思う。しかし失点した場面では、ボニフェイスがルカオに引っ張られ続けたことが、得点者である木村太哉にスペースを与えてしまった。これはチームとしての守り方の問題かもしれないが、センターバックの1枚が引っ張られた局面におけるスペースの埋め方が定まっていなかったのかもしれない。ACLE・ファイナルズでは1点を争う展開になる可能性も高い。細かな決め事も、再度見直してほしい。

名古屋戦に向けて
この試合の勝利によって、ヴィッセルは公式戦3連勝を飾った。次戦はACLE・ファイナルズ前最後の試合となる。対戦相手の名古屋は、百年構想リーグ西地区において3位につけている。前回の対戦では敵将をして「今季のJリーグで最も強い」と言わしめたが、ペトロヴィッチ監督がこのまま引き下がるとは思えない。何らかの策を用いて、ヴィッセルから勝点3を奪うための戦いを仕掛けてくるだろう。しかしヴィッセルにとっても、次は大事な試合だ。百年構想リーグ西地区の首位を守ることは当然として、それ以上にACLE・ファイナルズに向けてムードを高めなければならない。負傷者の存在は気がかりだが、そんな時だからこそ、ヴィッセルは「一致団結」して戦わなければならない。多くの選手が戦力として存在感を高めている今季だからこそ、故 三木谷良一氏が遺したこの言葉を胸に「史上最高のヴィッセル」を見せてほしい。
サポーターの皆さんには、一人でも多くスタジアムに足を運び、アジアの頂点に挑む選手たちに勇気を与えてほしい。どんな時も「トモニ」戦ってきたヴィッセルサポーターの力こそが、ヴィッセルにとって最大の武器であることは間違いない。

