
実験的采配
この日の試合は、ミヒャエル スキッベ監督のチャレンジが見えた試合でもあったように思う。公式戦においては初めての3バックシステムを採用したためだ。この日の布陣はGKに前川黛也、最終ラインは右から山川哲史、マテウス トゥーレル、カエターノという3人のセンターバック。中盤はボランチの扇原貴宏と井手口陽介、そして広瀬陸斗と永戸勝也がウイングバックの4枚。2列目は郷家友太と前節で同点弾を決めた日髙光揮。前線に小松蓮といった並びだった。この3-4-2-1という並びは広島と同じだった。
スキッベ監督がこの試合で並びを変えた理由はいくつか考えられるが、最大のものは布陣的な不利を補うためだったように思う。普段採用している4-1-2-3の場合、中盤はアンカーとインサイドハーフの3枚で担うことになるが、この場合アンカー脇のスペースが狙われやすい。ヴィッセルはボール非保持時には4-4-2に形を変えることが多く、相手が最終ラインから組み立ててくる場合には、これはさほど問題にならない。しかし2列目でボールを失った場合などは、この形を整える時間がないため、アンカーの脇が弱点となるのだ。
これに広島の戦い方を当てはめて考えると、スキッベ監督がこのスペースを消したかった理由はより明確になる。広島は、ボランチがボールを保持している時、ウイングバックが外に開き、幅を取る。2列目の2枚は前に動き、ハーフスペースで深さを取る。これによって5レーンを使う形を整えるのだ。ここにボランチが絡んでくると、5つのレーンを7人で使う形が整う。そうなってしまうと、ヴィッセルにおける中盤の数的不利がより目立つ形となり、守備の焦点を定め難くなる。こうした広島の特徴を考え、ミラーゲームに持ち込んでしまおうと、スキッベ監督は考えたのだろう。この方針には一定の理がある。
こう考えたスキッベ監督の裏側には「負傷者の存在」もあるように思う。この日の試合では酒井高徳がベンチに名を連ねるなど、徐々に負傷者も戦列復帰を果たしつつあるが、それでもまだ「ベストメンバー」が揃っているわけではない。試合後の会見の中でスキッベ監督が発した「今、私たちがしているサッカーが素晴らしいサッカーかと言われれば、もしかしたらそうではなく、シーズンの最初にはもっと良いサッカーがあったのかもしれません」というコメントは、正直な気持ちだったのだろう。であればこそ「今いるメンバーでベストの結果を得るため」の方策が、この日の3バックだったとも言えるように思う。練度という点では数年間積み上げてきた4-1-2-3の方が高いことは承知していてなお、こうした布陣を敷いたことは「大きなチャレンジ」だったと言えるのではないだろうか。
3バックにおける課題
試合後、選手たちからはこの日の戦いについてポジティブな言葉が聞かれた。トゥーレルは「時間とともに自分たちのやるべきことをどんどん理解していって、良いパフォーマンスと良いプレーで良い試合ができました」と語った。またカエターノは3バックの左が得意なポジションだったとした上で、「自分たちは1対1のところで強くいって負けることも、そこまでなかったかなと思います。真ん中のところ、中央のラインでもしっかりと潰すところは潰すことができていました」と、守備についての自信を覗かせた。ミラーゲームになったため各所で1対1の場面が多く発生していたが、カエターノの言葉通り、そこでヴィッセルの選手が負ける場面は少なかったように思う。ただし、その中でも、決定的なチャンスを何度か創出されてしまったことは事実だ。それを考えると、この日の布陣には改善すべき点が複数残されているように思える。
筆者の考える改善点は「ボールの運び方」だ。球際の勝負でボールを奪った後、効果的な前進を見せる場面が少なかったのも、ここに原因があるように思う。ではこれを改善するために必要なものは何か。それはボールを奪った後の動きだと思う。ボール保持に変わった後、最初に考えるべきは、奪い返しに来る相手から逃げることだ。そこではバックパスや横パスが効果を発揮する。問題はそのボールを受けた選手だ。十分なスペースを確保している時には、自ら前に押し上げていく動きが必要であるように思う。自分がボールを前に運ぶことで、味方に動き出すための時間を渡す。そしてボールを奪いに来る相手を引き付けることで、味方にスペースを渡す。
サッカーにおいて主導権を握るための1つの方法は、相手を自分たちの布陣の中に閉じ込めることだ。その際の形は様々あるが、3-4-1-2の並びには、後ろが重くなりやすいという特徴があるため、巧くボールを運ばなければ、前に進みきれなくなる可能性が高い。そしてそこに陥らないための基本の1つが「ボールホルダーは前が空いた時には前進、相手が寄せてきた時は引き付けてリリース」という動きだ。

かみ合わせ
試合後、スキッベ監督は「今日の試合は最終的に運良く勝ちましたが、相手が勝つ可能性もあった試合でした」と、難しい試合であったことを認めた。同様に広島を率いるバルトシュ ガウル監督は、自チームの選手が見せたパフォーマンスを高く評価した上で「この結果は内容に相応しくない、非常に残念なものです」とコメントした。この両監督のコメントだけを聞くと、ヴィッセルが思ったように試合を運ぶことができず、広島が試合を支配していたように思われるかもしれない。しかし率直な感想でいえば、「両チームとも主導権を握り切れなかった試合」というのが正しいように思う。
ここ数年、ヴィッセル対広島は「Jリーグ最高レベルの試合」と呼ばれることが多かった。それは両チームのかみ合わせが良かったためだ。ではなぜかみ合わせが良かったのかと言えば、両チームの設計思想が似通っていたからに他ならない。攻撃のスピード感、素早い攻守の切り替え、球際での強さという、似通った特徴を持つ両チームの対戦は「プロの強度とスピード」を感じられる、文字通り息つく間もない展開になることが多かった。しかしこの日の試合からは、そうしたかみ合わせの良さは感じられなかった。誤解のないように言っておくと、決してレベルが低かったというわけではない。随所で見られたプレーは、いずれも高レベルであり、その点においては昨季までと変わったようには思えなかった。プレーレベルにおいては、名古屋を率いるペトロヴィッチ監督がヴィッセルとの試合後にコメントした「今年のリーグにおいて神戸と広島はトップのクラブだと考えています」という言葉通りだったと言ってもよいだろう。
ではなぜこの日の試合はかみ合わせが悪く見えたのか。それはチーム練度に起因しているように思う。ヴィッセルで言えば、前記したように3バックの戦い方の練度が、これまでの戦い方のレベルには及んでいなかった。同様に広島もガウル監督の下でパスワークによって崩す戦い方を志向しているようだが、まだそれは道半ばだ。そのためこの日の両チームからは、いつものようなスピードと圧力を感じることはなかった。加えて、決して精度の高いとはいえないロングボールの応酬になる時間も長かった。試合後、この点についてガウル監督は「アウェイの環境下で、相手が長いボールを主体とするサッカーを望んでくる場合、どうしても序盤はその流れに付き合ってしまう部分がありました」と分析していた。これを完全に否定するつもりはないが、特に前半の広島が攻め手を欠いていたことも指摘しておきたい。ヴィッセルの最終ラインでの守備はいつも通りの強さを見せており、広島の攻撃の多くを難なく跳ね返していた。その結果として膠着したように見える時間が長く、それもかみ合わせの良さを感じなかった理由であるように思う。
もう1つの要因
この日の試合でかみ合わせの悪さを感じた理由は、もう1つある。それは「判定基準」だ。まず大前提として言っておくと、これはどちらか一方に有利に働いたという類のものではない。あくまでも、試合の流れに影響を及ぼしたという意味だ。
球際での勝負になる場面が多かったこの日の試合が、いわゆる「審判泣かせ」の試合だったことは間違いない。その理由は2つだ。1つは両チームに共通している「守備意識の高さ」だ。両チームとも構えて守備をするのではなく、前に出てボールを奪い切る守備を特徴としている。その結果、球際での激しい攻防が増えた。そしてもう1つは、両チームともロングボールを多く使ったためだ。そのため空中での競り合いが頻発した。そこではボールを収める時点での背後からのチャージも目立っていた。こうしたプレーは、技術レベルで圧倒的な差があるのならばともかく、プロ同士の対戦ではほぼ互角のように見えることが多い。そのためこうした試合では、審判のマネジメントがクローズアップされる。結果から言うと、この日の判定基準はやや解り難かったように思う。その理由は笛が多かったためだ。球際や空中での競り合いが多く発生する中で、選手の安全面を考慮していたのだろうとは思う。しかし、結果的にそれが笛の回数を増やし、両チームの選手がファウル基準を探りながらプレーしているように見える場面も多くなった。結局、これがファールアピールを増やし、試合を荒くしてしまったように感じた。
強さと荒さ
この日の試合の判定基準が形成される中で、はじめに審判の判定に影響を及ぼしたのは日髙のプレーだったように思う。試合開始直後の2分、自陣からつないできたボールに対して、広島の左センターバックである佐々木翔と空中で競り合った。この場面では日髙と佐々木の頭が接触し、これが日髙のファウルと判定された。このプレー自体は特段問題になるものではなかったのだが、佐々木は飛んだ時に日髙が腕を横に広げたことをアピールしていた。そして7分にも同じようなプレーの中で、再び日髙は佐々木を倒してしまった。この時も佐々木は前の場面と同様に、日髙が腕を広げたことを強くアピールした。この時は広島の左ウイングバックである新井直人も日髙を小突き、そのアピールに加わっていた。この2つのプレーを映像で見直してみると確かに、日髙は跳ぶときに佐々木側の手を広げているが、そこに悪質性は感じられない。しかし2度目は、手が佐々木の顔面に当たっていたことは事実だ。そしてこの一連のプレーによって、この試合における判定基準が形成されたように思う。
跳ぶときに肘を伸ばして腕を横に広げるのは、相手の動きを制御するための動きではあり、その意味で日髙のプレーは基本に忠実だったとも言える。しかしここで注意すべきは、その腕は相手の胸や肩を押さえるためのものであるという点だ。当然日髙はそれを理解しており、佐々木の顔に当たってしまったのは結果論に過ぎない。
そして8分、相手GKが蹴ったボールに対して、ハーフウェーラインを越えたところで、広瀬が頭で大きくクリアした。このボールが相手最終ラインの前で大きく弾んだところに入り込んだのは郷家だった。佐々木と荒木隼人の間で、郷家は足を高く上げて荒木の頭を越えるボールを中央に送った。これを受けた小松が、頭でファーサイド側に巧く落とした。このボールに対しては、飛び出した相手GK、佐々木、郷家、そして郷家の後ろから走ってきた日髙の4人が追う形になった。体勢的には、身体を横に投げ出した相手GKが優位な位置にいたのだが、日髙は郷家と佐々木が到着する前からスライディングを開始していた。しかし日髙がスライディングを開始したのは、GKがボールをつかむ寸前だった。GKがキャッチした後、日髙は足をたたみ、手を前に出すことでGKに足が当たるのを防ごうとした。しかし間に合わず、日髙の足がGKに接触した。このプレーによって日髙はイエローカードを受けた。
この短時間に3度、接触プレーに関与する形になってしまった日髙だが、そのいずれにも悪意はなく、前に出るという積極的な気持ちの表れだったことは間違いないだろう。しかしプレーが荒いと言われてしまえば、それまででもある。試合に関与する機会が増えてきた今、日髙には強さと荒さの違いを、もう一度認識してほしい。球際を含めた強さという点で言えば、酒井高徳のプレーは激しく、そして強い。しかし酒井のプレーに対して荒いという印象は一切ない。その理由は、そこに技術があるためだ。その技術とは相手よりも先に優位な位置を取る戦術眼、そして腕や肩で相手を遠ざけるといった身体の使い方ということになるだろう。こうした技術を駆使した結果の接触であれば、そこには強さだけが残る。しかしボールに向かうという意識だけでプレーしてしまった場合、それは荒いと言われてしまう。対人スキルというと身体の強さばかりに目が向きがちになるが、やはりそこには技術が伴っていなければならない。
その日髙だが、この試合では前半のみの出場にとどまった。しかしその中でも見せ場は作った。32分には左サイドと中央で作ったボールを受け、ペナルティアークからシュートを放った。これは惜しくも枠の左に外れたが、目の前に立った佐々木の股下を通す見事なシュートだった。日髙はボールを受けた時点で、佐々木の動きを読み、シュートコースを見つけていたのだろう。これは前半のヴィッセルが、最もゴールに近づいた瞬間だった。今季は試合に絡む機会も増えてきた日髙だが、前に向かう積極性は大事にしてほしい。両足から強いボールを蹴ることのできる器用さもあるため、ゴール前では面白い存在になることができる。今の勢いを大事にしつつ、試合の中で使うテクニックを学ぶことができれば、念願のポジション獲得も夢ではないだろう。

攻撃の厚み
この日の試合でも先発した小松だが、試合を重ねるごとに技術面での成長が感じられる。この日の試合では広島の守備を背負いながら、足もとでボールを収めるシーンが散見された。3試合連続ゴールという実績が小松に落ち着きを与えたのかもしれないが、以前は収められなかったようなボールが収まるようになっていることは事実だ。まだボールを収めた後の展開を作り出すまでには至っていないが、ボールが収まる以上、小松を起点として前への圧力を高める方法も確立してほしい。そしてそのカギを握っているのが郷家だ。
この試合で郷家に課されていた役割は2つあったように思う。1つは相手の最終ラインとボランチの間を遮断する動き、そしてもう1つは相手の裏を狙う動きだ。これらの役割に共通して求められるのは、スペースを見つけ、それを管理する能力だ。この点においてスキッベ監督は、郷家に高い評価を与えているのだろう。このスペースを使う動きは郷家の持ち味でもあるが、小松の周囲で圧力を高めるうえでは、もう1つの特徴である高いボールスキルも発揮してほしい。郷家はスペースで動くことが多いため目立たないが、前記した8分の場面で見せたように、難しい体勢からでもボールを扱うことができる選手だ。これを活かすためには、場面によってはスペースでプレーするだけではなく、ボールにプレーする意識も持ってほしい。背後からのボールを受ける時などに顕著なのだが、郷家はスペースを使いながら動き、これを受けようとする傾向がある。そのため相手選手は、郷家そのものを潰すことでボールを奪おうとする。ここでボールにプレーすることができれば、相手に潰されたとしてもファウルを取ってもらえる確率は高い。前所属の仙台では3年間で25ゴールを挙げたように、ゴール前でのツボも知っている。自らの役割であるスペースを管理する仕事は優先されなければならないが、小松にボールが収まった時、そこに郷家が積極的に絡む形ができれば、ヴィッセルの前への圧力はより高まるだろう。
強靭なメンタル
この日、ヴィッセルが喫した失点は扇原のミスに端を発している。49分にトップ下の中村草太が自陣からクリアしたボールをピッチ中央で拾った扇原は、右に流れながらパスの出しどころを探した。ここで中村は山川の背中を取り、扇原の視界から消えた。そして扇原が山川の側に寄っていく中で、山川の背後から飛び出し、このボールを奪った。その後はドリブルで前に運び、右サイドを上がってきた鈴木章斗の走路上に正確なパスを出した。鈴木はこれをダイレクトでシュートを放った。枠の左を捉えた正確なシュートだったが、これは前川が左手で弾き出した。しかしこれが前に詰めていた木下康介の前にこぼれ、押し込まれてしまった。
扇原はボールを持つ中で、中村を視認できていなかった可能性は高い。であったとしても、中盤の底で配球役を担っている以上、やってはいけないミスだった。先を読むセンスに裏打ちされた守備力と正確な配球でチームに貢献し続けている扇原ではあるが、チームの軸である以上、こうした失点に繋がるミスは許されない。しかしその後のPKのシーンでは見事なキックを決めて、自らのミスを結果で取り返した。1点を追う中でのPKというシチュエーションは、キッカーにとって相当なプレッシャーだったはずだが、扇原は左上に打ち込むという技術の高さを見せた。試合後、PKには自信があったと話してくれた扇原だが、筆者が感心したのは、その技術以上に強靭なメンタルだ。あの場面で扇原は、左上を狙うことは最初から決めていたとコメントした。絶対に決めなければならない場面ということを考えれば、グラウンダー、もしくは低い弾道のキックを選択しがちだ。それは「失敗したくない」という気持ちが勝ってしまうためだが、そこで上を狙うことができるというのは、技術に自信がある証拠だ。この扇原のPKシーンは、技術とメンタルは相乗作用で成り立っていることを示している。
このPKの判定についても、筆者の考え方を記しておく。80分に自陣から井手口が縦に差し込んだボールを受けた大迫勇也が、左の永戸へパスを通した。そして永戸がゴール前に入れたスルーパスに走りこんだジエゴがGKと接触、これがPKと判定された。広島の選手たちは抗議したが、VAR検証を経て判定が確定した。映像で見直してみると相手GKがジエゴに接触したのは、ジエゴがシュートを放った後だった。それでも事実認定のみのオンリーレビューによって判定が確定したということは、審判団はシュート後のアフターコンタクトをトリッピングと判断したのだろう。この日がプロデビュー戦だったという大内一生にとっては厳しい判定だったとは思うが、ボールに飛び込む際に伸ばしていた左足が、ジエゴの軸足に届く範囲にあったため、接触を前提としたプレーと見なされたように思う。GKとしては他に選択肢はなかったと思うが、それがトリッピングを容認する理由にはならないということなのだろう。
エースの存在感
後半開始から登場した大迫は、別格の存在感を見せた。いつものように後ろからのボールを収め、味方を走らせるプレーを連発し、ヴィッセルのペースを作り出した。このプレーのいずれもが相手を背負った状態でのプレーであることに、いつもながらに驚かされた。前述したPK獲得のシーンでは、井手口が蹴ったボールを佐々木の前で受け、背後から松本泰志が挟み込みに来た瞬間、左の永戸に向けて正確にボールを通した。そして逆転シーンではカエターノからのロングボールに対して、山﨑大地を背負った状態で跳び、左を上がってきた永戸の頭に合わせた。そしてそのままゴール前に詰め、ジェアン パトリッキのクロスをファーサイドで受けた広瀬のヘディングシュートが左ポストを叩いた跳ね返りをゴールに押し込んだ。このシーンでは組み立て役と決定役の両方を1人でこなした格好だ。
体幹の強さ、ボールを握る技術、正確なキックと、サッカーに必要な要素の全てを高い次元で持ち合わせている大迫についてスキッベ監督は「彼がいることが大きな助けになっている」と称賛したが、恐らくこれは本音だろう。スキッベ監督が「チャレンジ」することができた背景には、試合を整えてくれる大迫の存在があったはずだ。停滞気味の試合を動かし、逆転勝利につなげた大迫は、この試合で改めて「エースの存在感」を放った。
ヴィッセルにとっては、この大迫の活かし方を突き詰めていくことが、そのまま得点力のアップに直結する。この日の試合でもそうだったが、下がってボールを受け、サイドに流れることも多い今の大迫のプレースタイルを活かすためには、そうした状況下における中央の埋め方を見つけなければならない。それが人によるものなのか形によるものなのかは判らないが、それはヴィッセルにとって新しい得点パターンとなる可能性が高い。

2つの発見
3バックという新しい戦い方に挑戦し、勝利を挙げた試合ではあったが、それ以上に発見のあった試合だったように思う。その発見とはジエゴとカエターノだ。
インサイドとしてはボールの収まりが良くなかったジエゴではあるが、キックフィーリングが良くないと判断した時点で、それをチームメイトに委ねる柔軟性を見せた。PKを獲得した場面では扇原が左から入れたボールを中央でジエゴが受けたのだが、相手選手を背負っていたこともあり、自分でボールを収める意思は最初から持っていなかったようだ。ジエゴはボールを胸で背後の井手口に落とし、自らはそのまま上がっていった。サイドの専門家というイメージが強いジエゴだが、前に出る力とゴールへの意欲は強く、周りとの組み合わせ次第では、新しい一面が見られるのかもしれない。
そしてカエターノだが、改めて技術の高さを見せた。相手のプレッシャーを受ける中でも、身体の角度によってパスコースを確保し、確実に味方につけるプレーは見事だった。パスの精度も高く、相手の側を通すパスを何本も見せた。このパスは相手のスペースを無効化=奪うものでもあり、ビルドアップの戦力としてもカエターノには期待が持てる。もう1つの特徴である、新たな展開を作り出す大きなパスはこの日の試合では見られなかったが、そうしたものを含め、今後が楽しみな選手であることを示した。
次戦に向けて
この日の勝利によって、明治安田J1百年構想リーグ西地区の首位に立ったヴィッセルだが、次戦はノエビアスタジアム神戸での清水戦だ。前回対戦では苦杯を舐めさせられた清水に対するリベンジを果たすとともに、かつての指揮官やコーチ陣に「チームの成長」を見せなければならない。また日髙やカエターノといった、今季になって出番をつかんでいる選手にとっては「自らの成長」を見せる場でもある。この日の試合同様に強度の高い試合になる可能性は高いが、連勝を飾り、チームの勢いを加速させてほしい。


