
G大阪戦との違い
予想外の戦い方に戸惑い、押し込まれた前半。そして交代カードを有効に使って巻き返し、試合を振り出しに戻した後半。
この流れは、一見すると4日前に行われたG大阪戦と同じように思える。しかしこの2つの試合には決定的な違いがある。G大阪が「ヴィッセル対策」を定めてきたのとは異なり、C大阪は自分たちの課題を解決するための策を講じてきた。要はG大阪がヴィッセルに照準を合わせていたのに対して、C大阪は自分たちにフォーカスしていたということだ。
試合後の会見で、C大阪を率いるアーサー パパス監督は、戦い方変更の理由として選手たちの疲労を挙げていたが、これは一因に過ぎないと思う。そう考えた理由は、試合前の時点でC大阪には解決すべき課題があったように思えたためだ。ではその課題とは何か。一言でいうならば、それは「流動性の確保」ということになるだろう。
本来、パパス監督が志向してきた戦い方は、ボール保持の時間を延ばし、パスをつなぎながら相手を崩していく戦い方だ。しかし、昨季リーグ2位の18得点を記録したラファエル ハットン(上海申花)がチームを去ったことで、チームには大きな変化が生じた。今季のC大阪において、ここまで攻撃の軸となっているのは、横浜FCから移籍した190cmという長身の櫻川ソロモンだ。この日、先制点を挙げた井上黎生人が試合後に「これまではソロ(櫻川)に頼りすぎていたところもあった」と語ったように、身体を張った献身的なプレーによって、チームメイトからの信頼も勝ち得ている。しかしそれが思ったほどの得点には結びついていないことも事実だ。前節までの公式戦7試合でチーム総得点が6得点に留まっているという結果が、パパス監督にとって満足のいくものでなかったことは間違いないだろう。
これはパスを繋いで戦うチームだったはずが、前線の高さを活かすというスタイル変更を行ったためであり、櫻川の責任ではない。1-2での逆転負けを喫した前節・岡山戦の後、パパス監督は「攻撃の際に間延びしてしまい、ロングボールを使うのが早すぎて中盤で握れなかった。そうなるとセカンドボールが増えて、相手が回収することが多く、試合を難しくした」というコメントを残した。この言葉の中には、パパス監督が感じた課題が詰まっていたように思う。
0トップ
前段で書いたC大阪の課題解決策が、この日の試合で見せた「0トップ」だった。今季初めて櫻川をベンチスタートとして、前線には本間至恩と柴山昌也を並べた。両選手ともMF登録であり、本間が164cm、柴山が161cmと小柄だ。しかし両選手とも動きながらボールを扱う術に長けており、正確なキックも持っている。本来であれば中盤で攻撃の組み立て役となるこの両選手を前線に並べた時点で、ヴィッセルの選手も0トップであることは認識したはずだ。
スパレッティ監督時代のローマ、グアルディオラ監督時代のFCバルセロナ、クロップ監督時代のリヴァプールなど欧州の強豪チームでも採用されてきたこの0トップの特徴を簡単に説明すると、前線に配置されたチャンスメーカータイプの選手が頻繁に中盤に下がり、中盤での数的優位を作り出す。そしてそのスペースを使ってウイングやボランチが飛び出していくという戦い方ということになる。この日C大阪が見せた戦い方は、正にそれだった。本間と柴山が積極的に中盤にポジションを落とし、そこで動きながらコネクタ役を務めた。この両選手の狙いは、ヴィッセルのアンカーである「扇原貴宏の脇のスペース」だった。その狙いを察知したインサイドハーフの郷家友太が扇原をフォローするように動いていたが、中盤の構成において人数的な不利が生じていたため、ヴィッセルは守備の基準点を定めることができない時間が続いた。試合前の2日間で整備したという「突貫工事」ではあったようだが、この戦い方によって、前半のC大阪はヴィッセルにペースを握らせなかった。
ここでもう一度、前半のC大阪の戦い方を振り返ってみる。本間と柴山が中盤まで落ちていたのは前記したとおりだが、これだけであれば扇原とセンターバックの2枚で守り切ることは可能だったように思う。問題はこの両選手を活かす厄介な2人の選手の存在だった。
1人は左サイドハーフに入っていたチアゴ アンドラーデだ。スピードが武器のチアゴを活かすように、C大阪の中盤からはヴィッセルの右サイドを狙ったボールが多く供給されていた。これに対してはトゥーレルが対応していたが、そのスピードが速いためチアゴへの対処のみに追われてしまっていた。そのため、ここに別の選手が絡んできた時には、ヴィッセルは後ろに重くならざるを得なかった。6分のシーンでは右サイドでC大阪のスローインのボールを奪った乾が前の小松漣にボールを差し込んだのだが、小松のトラップに対して前線から戻った本間がこれを奪った。本間には扇原が背後からプレッシャーをかけたのだが、本間は自陣方向に戻りながら、ヴィッセル陣内に入っていた最終ラインまでボールを戻した。そこから縦にボールをつなぎ直し、これを受けた柴山が縦に差し込み、チアゴを走らせた。ここでチアゴに裏を取られたことで、ヴィッセルの最終ラインはチアゴを見ながら戻ることとなり、その背後から追ってきていた本間と阪田澪哉は全く見えていなかった。チアゴはペナルティエリア内に入ったところからフリーでグラウンダーのクロスをゴール前に入れた。ここではGKの前川黛也とカエターノがこれを防ぎ、本間と阪田まではボールが届かなかったが、チアゴのスピードに翻弄されたことは事実だ。
もう1人の選手はボランチの石渡ネルソンだった。C大阪アカデミー出身で、かつてはU-18日本代表で10番を背負ったこともある石渡は、ポジションを落としてきた本間や柴山を前に走らせる役割を担っていた。ここがヴィッセルの反撃を難しくしていたように思う。本間や柴山が下がった時、扇原を中心にしてそれを追い込むような態勢を整え、ヴィッセルが前に出ていたのだが、ここで石渡がボールを引き取り、本間や柴山を再び前に走らせるパスを出していたのだ。これによってヴィッセルの前に出る意思は空転させられていたように思う。
ズレ
試合後に扇原は「前半は立ち位置、守備のスイッチを含め、ちょっとチームがバラバラだったかなと思います。そういう相手に対して、ファーストディフェンダーはもっといかないといけないですし、スライドのスピードも速くしないと全部が後手後手になってしまう。ボールにいけていないと、相手が中盤の人数を多くしている意味ができてしまいます」と語り、自分たちの対応に問題があったことを認めた。次はこの言葉を基に「0トップ対策」を考えてみる。
扇原が言うとおり、ファーストディフェンダーの動きを含めて、前半はヴィッセルが後手を踏んでいたことは事実だが、これには明確な理由があったと思う。それはこの試合のメンバーだ。この日の試合に際して、ミヒャエル スキッベ監督は前節から3人の選手を入れ替え、選手配置も大きく変更した。ポジションの変更を含めると、前節からの変更は以下の6か所だった。
・マテウス トゥーレル(左センターバック→右センターバック)
・山田海斗(右サイドバック)
・カエターノ(左サイドバック)
・乾貴士(左インサイドハーフ)
・広瀬陸斗(右サイドバック→右ウイング)
・永戸勝也(左サイドバック→左ウイング)
ポジション変更した3選手はもちろんのこと、新たに起用された3選手も「レギュラーメンバー」に劣ることのない実力の持ち主だ。個々のプレーを見たときには、さほどの問題はなかったが、チームとしての全体像を見たときには変化が起きていたように思う。
ヴィッセルの「前からボールを奪いにいく守備」は、高い完成度を誇っていると言われる。ボール非保持時には4-4-2に変化し、相手が低い位置でボールを動かした時には4-2-4のような形になり、一気に前に圧力をかける。この時にはファーストディフェンダーから順にパスコースを切りながらプレスをかけていくため、相手のパスコースは徐々に限定されていく。そしてそれが一点に定まったところで、球際勝負を仕掛けてボールを奪う。この時には複数の選手で挟み込むことも多いため、ボール奪取率は高い。文字にしただけでもその完成度の高さがうかがえる守備ではあるが、これは各選手が単純にボールを追って走っているものではない。自分の次にプレスにいく選手の選択肢を減らしながら、相手に対してプレッシャーをかけているのだ。これは微妙なタイミングとバランスによって成り立っている守備でもある。そのため、選手の変更は蟻の一穴ともなりかねない危険を孕んでいる。前記したようにこの日の試合では前線と中盤だけでも3か所の選手が入れ替わっていた。これによって発生するズレが、この試合の守備を難しくした一因ではないだろうか。
後半開始からスキッベ監督が選手交代を使い、センターバックを山川哲史とトゥーレル、サイドバックを広瀬と永戸という「いつもの並び」に変えた後、守備が安定した。結局これが「積み重ねてきた時間」であり、前半の守備が嵌らなかったのは誰かの責に帰するような問題ではないということだろう。やはり組織的な守備を実戦の中で機能させるためには、単純にそれなりの時間が必要なのだと思う。
そうした「人の問題」があったとするならば、この日の試合、特に前半に限ってはブロックの位置を落とし、ミドルゾーンで構える形でも良かったように思う。結果論的ではあるが、この試合のC大阪は前半にやや動きすぎていた面があり、後半は動きが低下していたように見えた。であればこそ、前半は0トップに対してブロックを組んで守り切るという戦い方でも良かったように思う。

時間を作る
攻撃面に目を向けてみると、この2試合の中でひとつの課題が見つかったように思う。
この日の試合でも、ペナルティエリアまで良い形でボールを運んだ場面は少なくなかった。特に後半に守備が安定感を取り戻してからは、ヴィッセルが逆転するチャンスは十分にあったように思う。それはG大阪戦についても同じことが言える。しかし結果として2試合とも同点どまりに終わった理由の1つは、ペナルティエリア前でのリズムであるように思う。
この日の試合で同点に追いついた後、ヴィッセルの攻撃は加速した。巧くボールを動かしながら、ペナルティエリア前までボールを運ぶ回数は増えたのだが、そこでボールを動かすリズムは一定だったように思う。サイドにボールを入れ、そこで複数人が絡み、ペナルティエリアの横まで進出してクロス、詰まった際には後ろに戻し、中央に立つ扇原を使って逆サイドに運ぶといった具合に、一定のリズムで攻撃を繰り返していたように見えた。このやり方でもチャンスは創出できており、シュートが決まらなかったのは時の運と考えれば、このままでもいいのかもしれない。しかし多彩な選手が揃っているヴィッセルであればこそ、他の方法も見せてほしかったというのが本音だ。
「一定のリズムで繰り出される攻撃は怖くない」という言葉を、元プロボクサーから聞いたことがある。どんな強打であっても、一定のリズムで繰り出されてくるパンチは、同じリズムをつかめばガードできるということらしい。これはサッカーにおいても同じことが言えるのではないだろうか。いかに厚みのある攻撃であっても、サイドからのクロスやセカンドボールを拾って外を回してクロスといった具合に定型化してしまった場合、相手も一定のリズムで守備ができてしまうように思う。相手に読まれながらも決めてしまう大迫勇也や武藤嘉紀がピッチにいるならばともかく、そうでない場合にはこのリズムを変えることで、相手にリズムをつかませないことが、最後の部分(ゴール)を後押しするように思えるのだ。
そのために有効と思われるのが、時間を作るプレーだ。時間を作ることで相手を引き出し、そこに新たなスペースを生み出す。サッカーが時間とスペースを渡し続けるゲームであるとするならば、これをアタッキングサードまでボールを運ぶための方策に留めてしまうことはもったいない。ゴール前でこそ時間を作り、味方にスペースを渡す工夫が必要であるように思う。
新戦力
3人の選手を入れ替え、3人のポジションを入れ替えた結果、ズレが生じていたように見えたと前記した。しかしそれぞれの選手を見た時には、いずれの選手もヴィッセルの新しい力となる可能性を十分に見せてくれたように思う。
まずは乾だ。前半のみの出場にとどまったが、攻撃のキーマンは乾だったように思う。この試合で乾は密集の中でもボールを握る力、確実に味方にボールを届けるパスセンスを発揮した。3分には扇原が自陣から縦に差し込んだボールを小松が受けた。乾は小松の左に出てパスを受け取り、そのまま中央をドリブルで上がっていった。そして相手に身体を寄せられながらも、戻ってきた相手選手2人の間を斜めに抜くスルーパスを、左の永戸に通した。また5分には相手のスローインのボールを前に出た扇原がカット。このボールを小松経由で、ペナルティエリア左角前で受け、ダイレクトで相手選手2人の間を通すスルーパスを見せた。これらのプレーは得点にこそ結び付かなかったものの、文字通り「技術は年を取らない」ことを証明してみせたプレーだった。
こうしたプレーから感じたのは、乾が主体となったときの凄みだ。まだ味方との意思疎通に若干のズレがあるようには感じたものの、確実に相手の急所に打ち込むパスセンスは健在だ。今後、日々のトレーニングを通じて「乾の感覚」を言語化し、周りに伝えてほしい。どんな時も楽しそうにプレーする乾らしく、アイデアの溢れるプレーをチームが理解したとき、ヴィッセルの得点力は確実に高まるだろう。
続いてカエターノだが、こちらは試合後にスキッベ監督が言及したように、プレーそのものは決して悪くなかったように思う。ボールを収める能力は高く、広い範囲をカバーする運動量もある。ヴィッセルの守備陣においては貴重な左足のキックも持っており、戦力として十分に計算できる選手であると思う。問題があったとすれば、ミドルレンジのパスが、幾分ズレていたように見えたことだ。しかしこれはカエターノの能力ではなく、慣れからくる距離感が不足しているためであったように思う。これを解決する特効薬は実戦経験だ。味方との距離感はトレーニングの中で把握しているとは思うが、実戦の中でそれを補正する作業が必要だ。その意味で前半だけとはいえ、ヴィッセルにとっての厳しい時間を経験したことは大きいように思う。ヴィッセルに加入以降、思うように出場機会を得られているわけではないが、それでも過去に出場した試合では左足からの縦に差し込むパスや距離の出る正確なボールなど、かつてブラジルU-20代表に選ばれた能力の高さは見せている。多くの選手が出場機会を得ている今季は、カエターノにとってチャンスだ。この絶好の機会を逃すことなく、輝きを放ってほしい。

日髙光揮
この日の試合で大きな存在感を発揮したのが、乾に代わって後半頭から登場した日髙光揮だった。後半にヴィッセルがペースを握ったことは前記したとおりだが、その中ではボール非保持時に見せた日髙の動きも大きく貢献していた。以前はボールホルダーへの意識が強く、相手に裏を取られる場面も散見されたが、この日はしっかりと相手の動きに制限を加えるように動くことができていた。さらに球際での強さも見せていたことが、高い位置で相手を押し込んでいくための一助となっていた。ゴールに至る流れも見事だった。67分にC大阪のスローインから左サイドでヴィッセルがボールを奪い取った時、日髙は自陣ハーフウェーライン付近に立っていた。そして小松が相手を背負いながらボールを受けたところで、前線に向けて動き出した。その後左タッチライン際でジエゴが起点を作った時、相手最終ラインの前には小松と濱﨑健斗が立っていたのだが、日髙はその背後にポジションを取っていた。ここで注目したいのは、そこに入る前に日髙が見せた僅かな動きだ。日髙は濱﨑の背後を追うような格好で上がっていったのだが、その途中で逆サイドに目を向けていたのだ。これは当たり前の行動のように思えるかもしれないが、この時点でのシチュエーションを考えれば誰にでもできるプレーというわけではない。1点を追っている中で、自分たちに流れが来ていると思えば、意識はゴール方向に向けられがちなためだ。しかしここで日髙が後ろを確認したことは、いざという時、前に立つ小松と濱﨑を守るための備えでもある。地味ではあるが、こうした細部に気が回るようになったということは日髙自身の成長であり、試合に集中できていたことの証左でもある。
続いて肝心のゴールシーンだが、ここでは何人かの選手が日髙のゴールをお膳立てした。まずは濱﨑だ。ジエゴからの横パスを受けた濱﨑はトラップした方向に動き出し、そのまま相手の裏を取るようなボールを送りこんだ。次は郷家だ。濱﨑のボールをジャンプして左足で中央の小松に戻そうとしたのだが、ここで前に持ち込むように動いていたとすれば、郷家のシュートコースは既に相手GKに消されていたため、行き詰っていたことは間違いないだろう。その意味でも、この場面における郷家の選択は正しかった。この咄嗟の場面で状況を把握し、正解を選ぶことのできる郷家は、やはり高い能力の持ち主だ。次はジエゴだ。小松が胸で落とした直後、左から入ってきたジエゴには相手選手がマークについていた。ジエゴは小松の落としたボールを触るつもりだったとは思うが、結果的にそのままスピードを緩めずに走ったことが奏功した。このジエゴの動きによって、マークについてきた相手選手も通り過ぎたためだ。
こうして周りが整えてくれたボールを受けた日髙だが、ここでも1つ見事な動きを見せた。中央から左に流れるようにしてここに入る際、一度ボールを追い越し、利き足である右足にボールを置いたのだ。試合後、日髙自身がコメントしたように、両足で強いシュートを蹴ることができる自信があるため、利き足である右足で正確にボールを置きなおそうとしたのだろう。結果的にこの動きによって、逆から来ていた相手を背中で防ぐ態勢が整った。この直後前のめりによろけたように見えたが、すぐに体を起こし迷いなく左足を振りぬいた。日本代表経験もある相手GKの中村航輔がシュートコースに入っていたが、日髙の放った強烈なシュートはその上をとらえ、まっすぐゴールに突き刺さった。日髙の記念すべきヴィッセル加入後初ゴールは、チームを救う値千金のゴールとなった。
一時はサイドバックにコンバートされた日髙だが、今季は本職でもある中盤に戻ってプレーしている。しかし一時的とはいえサイドバックを経験したことで、違う視野を手に入れたことが、日髙を成長させたように思う。この日の試合では守備に際しても、ボールを奪った後の縦の動きを意識しているように見えたが、これなどはサイドの槍の動きを経験したからこそ手に入ったものではないだろうか。プロ入り直後から器用さにおいては目を惹くものを見せていたが、漸くそこに確実性や力強さが備わってきたように思う。

攻守のキーマン
この試合におけるキーマンを1人挙げるならば、それは広瀬だったということになるだろう。この日の試合でも安定した守備と、場面に応じたプレーでチームを牽引し、一番星級の活躍を見せた。サイドを抜かれそうになる場面では、時には相手の動きを遅らせ、時にはスライディングでボールを蹴り出すなど、ツボを心得た対応を見せ続けた。攻守両面で存在感を発揮し続けている広瀬だが、どんな場面でも顔色を変えることなくプレーできる落ち着きも素晴らしい。ピッチ上の監督的な存在が不在の今、広瀬のように広い視野を持ち、冷静に状況を分析することのできる選手の存在は、チームの支えとなっている。
4連戦を終えて
後半、ヴィッセルが主導権を握り返したことは、数字の上からも確認できる。前半のヴィッセルは枠内シュート0、パス数245本と、数字の上でもC大阪を下回っていた。しかし試合を終えてみれば枠内シュート、パス数ともC大阪を上回った。しかも後半は7本のシュートを放ち、そのうち5本が枠を捉えていたように、ヴィッセルに勝機は十分にあった。
4連戦の最後を飾るG大阪、そしてC大阪という「近隣のライバル」との2連戦は、2試合ともPKによって敗れるという残念な結果に終わった。しかしこの2試合では様々な組み合わせを試しながら戦い、その中で新しい力の台頭が見られた。特にこの日の試合では大迫、武藤、酒井高徳に加え、佐々木大樹、井手口陽介という主力選手を欠きながらも、しぶとく勝点を積み上げたという事実は、AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)を含めたこの先の戦いを考えたとき、大きな意味を持っている。この日の試合でPKを失敗した濱﨑だが、出場した試合では確実に存在感を示し続け、ヴィッセルの次世代を担う選手であることを証明しつつある。
この2試合はチーム力の底上げという点において、得るものが多かった2試合と捉えてもよいように思う。
今後に向けて
この試合の結果、明治安田J1百年構想リーグ・西地区において、ヴィッセルは暫定3位となった。上に立っている京都、そしてG大阪との勝点差は1だ。ヴィッセルはその2クラブに比べて、試合消化数が1試合少ないことを思えば、首位に立つ可能性は十分に残されている。とはいえ、鹿島が抜け出しつつある東地区とは対照的に、西地区は混戦が続いている。10クラブ中9クラブが勝点3差の中でひしめく「大混戦」となっているのだ。そしてこの状況は、もうしばらく続くように思う。だからこそ今は1試合の結果に一喜一憂することなく、落ち着いてチーム力の向上に取り組む時期であるように思う。それが来月に控えているACLEファイナルズにも活きてくる。
そうした視座に立つと、次戦への興味も俄然湧いてくる。次戦でヴィッセルはノエビアスタジアム神戸に広島を迎え撃つ。前々節の名古屋戦後、ペトロヴィッチ監督が「個人的には、今年のリーグにおいて神戸と広島はトップのクラブだと考えています」と発言したように、ヴィッセル同様に高い完成度を誇っている広島との一戦は、ヴィッセルの現在地を確認するうえでの絶好の機会だ。どのようなメンバーで戦うかは不明だが、チーム全体で戦えるようになりつつある今のヴィッセルの力をここで見せつけてほしい。
再びの「平日ナイター」となるが、ヴィッセルサポーターの皆さんにはこの試合を見逃さないでほしい。「古巣との対戦」となるスキッベ監督の采配を含めて、見どころの多い試合になるためだ。学校や仕事など様々な予定もあるかとは思うが、何とか早目に切り上げて、ぜひともスタジアムに足を運び、現在のJリーグにおける最高のご馳走を直に味わってほしい。

