覆面記者の目

明治安田J1百年構想リーグ 第6節 vs.名古屋 豊田ス(3/14 14:00)
  • HOME名古屋
  • AWAY神戸
  • 名古屋
  • 0
  • 0前半1
    0後半2
  • 3
  • 神戸
  • 得点者
  • (12')小松 蓮
    (58')井手口 陽介
    (88')永戸 勝也

<チーム練度>
 試合後の会見の席上、今季から名古屋を率いるペトロヴィッチ監督は、選手たちが最後まで勝利を追求した姿勢について繰り返し言及し、それを讃えた。試合についても「お互いにアグレッシブでオープンな展開が多く、非常に興味深いゲームだったんじゃないかなと思います」と述べた上で、名古屋にも相応のチャンスがあったと強調した。3-0というスコアを考えれば、強気にも聞こえるコメントではあるが、そうした中にも本音は見え隠れしていた。失点について語る際には「カウンターの速さを含め、神戸のクオリティーの高さを感じました」と述べ、自チームの完成度について尋ねられた際には「個人的には、今年のリーグにおいて神戸と広島はトップのクラブだと考えています」とした上で、「そういったクラブに対してトライするのは簡単なことでないということも理解する必要があると思います」と語った。

 この日の試合には、両チームの完成度の差が顕著に表れていたように思う。「ミシャ式」とも呼ばれるペトロヴィッチ監督のサッカーは、実に特徴的だ。この日の試合でも採用していた3-4-2-1の並びをベースとした攻撃的な可変システムで、ボール保持時には3バックの両サイドが開き、そこにボランチの1枚を加えるなどの動きによって、4-1-5や2-3-5に変化させる。その目的は、ボールを前進させる道筋上に数的優位を作り出すことにある。日本での指揮も20年目に突入したペトロヴィッチ監督だが、こうした原則部分は不変だ。とはいえ各選手はその独特の動きを理解する必要があるため、チームの完成までには一定の時間を要する。

 ヴィッセルも名古屋と同様に、今季から新監督が指揮を執っている。しかし現時点でヴィッセルは、チーム完成度という点において名古屋を大きく上回っている。それはミヒャエル スキッベ監督のチーム作りの方針に因るところが大きい。過去に何度も指摘したように、スキッベ監督はこれまでの方向性を維持しつつ、そのレベルアップを図っている。過去3シーズンで2度のリーグ優勝を含む3つのタイトルを獲得し、昨季もシーズン終盤まで優勝争いを繰り広げていたという実績が、スキッベ監督にチーム方針の維持を決断させたのだろう。これに対して名古屋は、ここ数シーズンで目立った結果を残すことができていない。そのため、大きな変革を必要としていた。この両クラブの置かれている立場の違いが、この日の試合結果に結びついたように思う。

<サッカーにおける原則>
 この日の試合を見て、改めて「攻撃と守備をシームレス」につなぐことの大事さを強く感じた。これを理解するために取り上げたいのが、36分に左センターバックのマテウス トゥーレルが見せたプレーだ。名古屋のGKからのボールをセンターサークルまで戻った森島司がフリックし、それをマルクス ヴィニシウスが後ろ向きに受けた。この場面でトゥーレルは最初からヴィニシウスをマークしていたのだが、ボールが入った瞬間、その背後からプレスをかけてボールを奪い、そのままドリブルでペナルティエリア前まで上がっていった。そしてミドルサードの出口付近で左に開いた前線中央の小松蓮に渡し、自身はそのままスピードを緩めることなくペナルティエリア内に入っていった。
 この場面で注目したい点は2か所ある。
 1つ目はボールを奪った後のトゥーレルの動きだ。ボールを奪って前に出た後、トゥーレルが首を振ったのは、守備に残っていた相手選手が前に立った時だ。そこに至るまで、トゥーレルは迷いなく中央をドリブルで上がっていった。プレスをかける前に前方のスペースは見えていたとは思うが、同時に味方が上がっていることを確信していたからこそ、周りを見ることなく前進することができたのだ。この場面でトゥーレルがプレスをかける前、名古屋陣内には2人の選手が残っていたのだが、その2枚の外側には小松とインサイドハーフの郷家友太が立っており、彼らはトゥーレルがボールを奪った段階で開くように進路を取り、前に上がっていった。これによってヴィッセルは優位性を確立した。
 もう1つはトゥーレルがプレスをかけた時の守り方だ。この時、ヴィッセル陣内には、中央に山岸祐也、そしてヴィッセルの右サイドには中山克広が立っていた。山岸には自陣に残った右サイドバックの広瀬陸斗がついていたのだが、中山はフリーだった。ここでトゥーレルの背後に立っていた右センターバックの山川哲史が山岸の傍まで戻り、アンカーの扇原貴宏がヴィニシウスと中山を結ぶ線上に立った。そしてトゥーレルの左側のスペースに対しては、インサイドハーフの井手口陽介が管理できるポジションに入った。この動きが瞬時に行われたのだが、これによって仮にヴィニシウスがトゥーレルを剥がしたとしても、名古屋はカウンターを繰り出すことは難しくなっていた。そしてトゥーレルがヴィニシウスを剥がし、ドリブルを開始したのと同時に、井手口と扇原は前に向けて動き出した。
 結果的にこの場面で得点は生まれなかったが、ヴィッセルの選手たちが攻撃と守備をシームレスにつなぐことができていることを示す好例と言えるだろう。因みにこの試合でトゥーレルが記録したスプリント回数は20回。これはセンターバックとしては異例ともいうべき数字だ。



<ゲーム体力>
 試合前、勝敗のカギを握っているのは「疲労度」だと思われた。名古屋が中6日でこの日の試合を迎えたのに対して、ヴィッセルは中2日。FCソウルとの試合がナイターであったことを思えば、実質1.5日といったところだろう。そのためコンディション面では、当然名古屋に分があると思われていた。しかし蓋を開けてみれば、結果は真逆とも言えるものだった。この試合におけるトラッキングデータを見てみると、ヴィッセルは総走行距離において約3km、スプリント回数においては50回以上も名古屋を上回っていた。なぜこうした差が生まれたのだろう。以下では、ヴィッセルが名古屋を走力で上回った理由を考えてみる。
 筆者が考える最大の理由は、両チーム間に生じたシチュエーションの違いだ。これはチーム練度の差に起因するものだが、ヴィッセルは選手間での意識が共有されているため、明確な目的をもって動くことができていた。これに対して名古屋は守勢に回る時間が長く、自分たちが意図する形でボールを動かした時間は短かった。一言でいえば、「ヴィッセルが名古屋を走らせた」時間が長かったということになる。
 3年前に日本認知科学会で発表された論文に拠ると、サッカーにおける認知的負荷の多くは、敵選手という複雑な動きを行う相手の存在によって生じると考えられている。要はヴィッセルの選手が見せた連動した動きは、それに対応した名古屋の選手個々にとっては複雑な動きであり、それによって試合中に負荷がかかり続けていたということだ。
 また失点などのネガティブなシチュエーションも、疲労度を引き上げる要因とされている。キックオフ直後は名古屋もヴィニシウスを使った縦の攻撃などによって、ヴィッセルゴールを陥れようとしていたが、10分に迫る辺りから、ヴィッセルが主導権を握り始めた。その流れの中で12分にヴィッセルが先制点を奪ったことも、名古屋の疲労度を引き上げた一因だと思われる。
 名古屋とのシチュエーションの違いは相対的な理由だが、もう1つ絶対的な理由もあったように思う。それはヴィッセルのトレーニングの質の高さだ。
 サッカーの試合において走り続けることが難しい理由は4つあると言われている。
 1つ目は筋肉に負荷がかかる動きだ。試合の中ではスプリント、急停止、バックステップといった動きが不規則に繰り返されるため、選手は有酸素能力と瞬発的な無酸素能力を同時に消費していく。
 2つ目は単純な運動量の多さだ。サッカーにおいては攻撃と守備の切り替えが絶えず発生し続けるため、回復を図る時間の確保が難しい。
 3つ目は筋肉のダメージだ。サッカーにおける動きは、陸上のような直線的かつ規則的な動きではない。さらにその中で相手との接触も頻発するため、筋肉の受けるダメージは大きい。
 そして4つ目は頭脳の消耗だ。試合の中で選手は判断と予測を続けなければならない。そのため肉体的な疲労だけではなく、頭脳の消耗も激しい。
 この4つの理由によって、試合を通して走り続けることは難しいといわれているのだが、逆に考えれば「正しく走り続ける」ことができれば、それだけで勝利に近づくとも言えるのではないだろうか。ヴィッセルがそうした能力を伸ばすことができているのは、日々のトレーニングがより実践的であるためであるように思う。
 ポルトガルのヴィトール・フラーデ教授が提唱し、ヨーロッパの主要クラブで採用されているサッカーのトレーニング理論である「戦術的ピリオダイゼーション」によれば、実戦的なトレーニングによってチームのパフォーマンスを最大化し、勝利につなげるためには4つの要素が必要とされている。その4つとは「ゲームモデルの設計」、「技術、戦術、フィジカル、判断力の統合」、「試合日からの逆算によるトレーニングメニューの設定」、「実戦的な状況設定」だ。これらの中に目新しい要素はない。しかしこれを取り入れ、成功に導くことは難しいという。その理由は、そこに3つの要素が求められるためだ。その3つとは「選手に合わせた適切なカスタマイズ」、「トレーニングメニューの意味を周知徹底させる」、そして「継続する忍耐」だ。
 これは推測でしかないが、これまでのヴィッセルの流れを見ていると、こうした流れの中で日々チームは強化されているように感じる。

<2人のスタミナモンスター>
 前段でも書いたように、この日の試合でヴィッセルは素晴らしい走力を見せた。それがベースにあったとすれば、この日の試合は「走り勝った」試合だったとも言える。それを裏付けているのが、この日のトラッキングデータだ。
 この日の試合におけるヴィッセルの総走行距離は120.25km、スプリント回数は195回だ。これを昨季のJ1リーグの平均値と比較すると、その凄さは解りやすい。昨季のJ1リーグにおいて平均走行距離でトップを記録したのは柏(119km)、平均スプリント回数では京都(145回)だった。この試合でヴィッセルが記録した数値は、そのいずれをも超えている。中でもスプリント回数は傑出している。強度が異なるため一概には比べられないが、数値だけを見れば、世界的にも上位に位置していると言える。いずれにしてもチーム全体がよく走った試合ではあったが、その中でも際立っていたのが井手口と武藤嘉紀だ。
 まず井手口だが、この試合における走行距離は両チームを通じてトップの12.37kmだった。3日前のFCソウル戦でもフル出場を果たした井手口だが、この日の試合でも90分間ピッチに立ち続けた。広いエリアをカバーするプレーは、この日の試合でも健在だった。その能力がいかんなく発揮されたのは58分の得点シーンだ。自陣からドリブルで上がった武藤が、ミドルサードで左に開いていた左ウイングの佐々木大樹にスルーパスを通した。佐々木はペナルティエリア内を上がりながら、深い位置からマイナス方向に折り返した。ここに入り込んだ井手口がスライディングしながら右足の先でボールを押し出すように突き、相手GKの股下を通してゴールに流し込んだ。武藤がドリブルを開始した時、井手口はそれよりも背後にいた。前半から走り続けていながら、凡そ60mほどの距離を一気に走り切ったそのスタミナには恐れ入るばかりだ。
 このゴールで公式戦2戦連発となった井手口だが、この日の試合では積極的にシュートを放つ姿勢が目立っていた。FCソウルとの試合でゴールを決めたことが契機になったのかもしれないが、この井手口の動きが名古屋の守備陣に対して圧力を加え続けていたことは間違いない。
 そして武藤だが、こちらはスプリント回数31回を記録した。前記した井手口の得点もそうなのだが、武藤が自陣から見せるドリブルは力強く、スピードも十分にあるため、局面を裏返すだけの力を持っている。加えて武藤は走路の取り方が巧い。井手口のゴールに結び付けたシーンでも、最初、自陣の右サイドで背後の広瀬からボールを受けた武藤は、中央前方に立つ郷家を狙ったパスを出している。しかし、これはインターセプトを狙っていた名古屋のボランチである稲垣祥にカットされた。ここで武藤は稲垣が左に開きながら左足に当てたのを見て、そのボールの方向に走路を取り、背後に立つ相手選手と稲垣を結んだ線上に走りこんだ。そして稲垣が出したパスを左足に当て、そのままの角度で中央に向けてドリブルを開始した。武藤の背後からは中山が追ってきていたのだが、ここで武藤は中山の進路を横切るように動いたことで、中山から寄せるタイミングを奪い去った。武藤が横に動かなければ、中山の走路と武藤の走路は交わるような角度になっていたのだが、進路を変えることで二人の交わる点を無くしたのだ。ドリブルで動きながら、瞬時にこうした判断を見せることができる選手は、なかなかいるものではない。武藤は確実にボールを前に運ぶ技術があるからこそ、動きながらも走路を考えることができるのだろう。
 今季は開幕時からコンディションの良さを感じさせるプレーでチームを牽引している武藤だが、その存在はヴィッセルの切り札となっている。



<覚醒の兆し>
 前記したように、試合の流れを決定づけたのは12分に小松が挙げた得点だった。右スローインから展開の中で、小松が左でフリーになっていた左サイドバックの永戸勝也に展開した。これを受けた永戸はペナルティエリア外で中央に切れ込みながら、右足でクロスを入れた。これに巧く飛び込んだのが小松だった。小松が頭で合わせたシュートは、正確にゴール左に飛び、ヴィッセルに先制点が生まれた。
 試合後に小松は「イン巻きのクロスは昔から得意だった」と語り、永戸のクロスを讃えていたが、小松のゴール前への飛び込み方が見事だったことは事実だ。永戸にボールを渡した後、小松は一気に前に上がらず、稲垣に敢えて認識されるように、その背後に立った。ここで稲垣は小松が前線に入っていないことを理解した上で、ゴール方向に目をやった。この時、名古屋のゴール前には4人のラインが形成されていたが、そこに入り込む可能性を見せていたのは、永戸側に立っていた左ウイングの佐々木大樹と、その反対側にポジションを取り、ライン間を窺うように立っていた郷家の2人だった。そのため稲垣は郷家の動きを気にしていた。小松が動き出したのは、永戸がキックモーションに入った後だ。永戸が右足を振り上げた後、小松は前に向けて一気に動き出した。このタイミングが絶妙だった。小松の前に立っていた稲垣、そしてゴール前にいた2枚のセンターバックとも、永戸が蹴るボールを見定めようとした瞬間であり、全員の視野から小松が消えた瞬間だったのだ。そして永戸の蹴ったボールの軌道上で名古屋のセンターバックが前後関係になった瞬間、その間に小松は斜め後方から入り込んだ。そしてしっかりとゴール方向を意識しながら頭に当てることで、ゴールに流し込んだ。ゴール自体も見事ではあったが、それ以上に小松の走路の取り方と走り出すタイミングを高く評価したい。
 明治安田J1百年構想リーグ(以下百年構想リーグ)での2試合連続ゴールを記録した小松だが、前節での初得点が小松から硬さを取り除いたように見える。これはFCソウルとの試合でも感じたことだが、福岡戦で得点を挙げて以降、ボールに対するアプローチが確実に良化している。FCソウルとの試合で大迫勇也が見せた姿に羨ましさと悔しさを感じたという小松だが、チーム内で起きている競争の中で成長を実感しているともコメントした。その言葉通り、小松は確実にJ1リーグの強度とスピードに慣れつつあるように見える。今の小松は覚醒前夜なのかもしれない。今は難しく考えることなく、好調なチームの流れの中に身を委ねてほしい。フォワードとしての優れた能力を持った選手であるだけに、成長を止めずに走り続けてほしい。
 この先制ゴールをアシストした永戸のキックも見事だった。これについて永戸は試合後に「空間に引っかからないようなボールを上げることを意識していた」とコメントしたが、その精度以上に、永戸の起用さに驚かされた。永戸は相手が左足を警戒していることを察知し、咄嗟に右足でのクロスに切り替えたというのだ。両足から高い精度のキックを蹴ることができる永戸の能力は、ヴィッセルにとって大きな武器となっている。その能力は3点目のシーンに詰まっている。試合最終盤の88分に広瀬が右から入れたクロスは相手にクリアされたが、ペナルティエリア外でそのボールを受けた永戸が、今度は左足でダイレクトボレーを放った。抑えの効いた鋭いボールは、GKの前でバウンドし、そのまま伸びるような弾道でゴール右に突き刺さった。このシュートについてペトロヴィッチ監督は、和泉竜司のシュートが枠を超えたことと対比させ、「神戸は同じような距離のシュートを一発で決めました」と、その技術を讃えた。
 この日の試合では自身のサイドを狙われる場面が少なかったことも、プレーしやすさにつながっていたのかもしれない。いずれにしても永戸のキック技術が、ヴィッセルに勝利をもたらしたと言えるだろう。



<2人目の守護神>
 この試合で特筆すべき選手は、見事な守備でゴールを守り抜き、クリーンシート達成に大きく貢献した権田修一だ。この試合がヴィッセルに加入以降、初のJ1リーグ戦となった権田だが、そのプレーレベルが依然として日本人トップクラスにあることを証明した。中でも81分のプレーは圧巻だった。左からボランチの高嶺朋樹が入れたクロスに対して、途中出場したフォワードの木村勇大が頭で合わせたシュートは、枠の右上隅を捉えていたが、権田は中央から大きく跳び、これをセーブした。この場面で木村の入り方は、前記した小松と同様の「ライン間に飛び込む動き」であり、GKとしては反応し難いものであったはずだが、権田は見事にこれに反応して見せた。この場面で注目してほしいのは、権田が両手で木村のシュートをセーブした点だ。手を伸ばすことだけを考えるのであれば、左手一本でセーブしたくなるところだが、権田は目の前にヴィニシウスが入ってきていることを認識した上で、確実にボールを遠ざける選択として、両手を使ったのだ。これこそが、日本代表として長くゴールを守り続けた権田の経験値の高さを示している。
 GKとは特別なポジションだ。シュートに対する反応だけではなく、飛び出しの判断など、試合勘が必要とされるプレーが多いのに対し、その枠は1つしかない。そのため控えGKの調整には、特別な難しさがあると言われる。しかし権田は、そうしたものを一切感じさせなかった。確実に味方のところに蹴り出すキック技術などは、ポジション争いのライバルである前川黛也を上回っていると言えるだろう。
 試合後には、普段出場機会を得られていない選手たちの気持ちとプライドを背負って戦っていたことを明かした権田だが、チーム全体のムードを考えてプレーできる点も素晴らしい。「前川と権田」という、日本人トップレベルの実力を持つGKが2人在籍しているという事実は、ヴィッセルがAFCチャンピオンズリーグエリートを含む複数のタイトルを狙う上では、大きな意味を持っている。



<関西ダービー>
 見事な試合運びで名古屋を圧倒し、公式戦4連勝を飾ったヴィッセルは、暫定ながら百年構想リーグ西地区の首位に立った。次節は勝点で並んでいるG大阪をホーム・ノエビアスタジアム神戸に迎えての一戦だ。
 小松が試合後にコメントしたように、今季は多くの選手が公式戦のピッチに立っている。その中で各選手が確実に力をつけている。さらには扇原がこの試合で戦列復帰を果たしたように、負傷者も続々と復帰を果たしつつある。勝利という結果を残しながら、戦力の厚みが増していくという理想的な流れの中に、今のヴィッセルは立っている。次節までは中3日という相変わらずの厳しい日程ではあるが、近隣のライバルを撃破することで、今の良い流れを加速させてほしい。

今日の一番星
[郷家友太選手]

攻撃力が増している今季のヴィッセルだが、それを支えている郷家を今回は選出した。ここまでの郷家は、得点などの数字を残しているわけではないが、そのプレーの意味を考えると、今のチームにとって不可欠な存在であることが判る。今季のヴィッセルにおいて攻撃を牽引している大きな1つの柱が武藤であることは、本文内でも記した通りだ。その武藤のプレーエリアを作り出しているのが郷家なのだ。インサイドハーフで起用されることの多い郷家だが、課されている役割は多い。この試合では郷家がファーストディフェンダーの役割を果たす場面が目立っていた。ボール非保持時には4-4-2に変わる中で、2トップの一角に入るためではあるが、そこで見せる動きは高質だった。この試合で相手GKのシュミット ダニエルは、しつこく動きなおして寄せてくる郷家の動きを明らかに嫌っていた。さらに郷家はボール保持時には、右サイドに開くことも多い。そして右サイドに蓋をして、背後から広瀬を呼び込むなど、エリアを活性化している。
このエリアを郷家が守ることで、武藤には自由が与えられている。郷家はインサイドハーフ、トップ、サイドハーフという3つの役割を、試合の流れの中で状況に応じてこなしているのだ。この日の試合で名古屋の配球役である高嶺へのパスコースを消し続けた郷家の動きは、ヴィッセルの守備をやりやすくした。スキッベ監督が郷家にこうした難しい役割を課しているのは、郷家の頭脳を高く評価しているためだろう。試合後に小松のゴールについての評価を尋ねられた際、あえて郷家の名前を挙げ「2人とも非常に満足できる内容でプレーをしてくれています」とコメントしたのは、郷家の働きを高く評価している証左だ。この日の試合ではゴールを決めたかと思われたが、これは惜しくも手前でオフサイドがあったためノーゴールとなった。しかし今のような動きを続けていれば、数字を残す日は近いうちに訪れるだろう。4年振りにクリムゾンレッドのユニフォームを纏った「堅実な仕事人」に、さらなる活躍への期待を込めて一番星。