10人対11人
「数的不利でもやれることはありましたし、勝てる試合であったと感じています」
これは「数的不利な試合だったが」という質問に対する佐々木大樹の答えだ。この感想は佐々木だけのものではなかった。同様の言葉は、他の選手たちからも聞かれた。
この日の試合でヴィッセルは、70分以上の時間、相手より少ない人数で戦わざるを得なかった。かねてから書いているように、J1リーグは所属チームの実力差が極めて小さいという、世界でも稀な特徴を持ったリーグだ。それだけに数的不利を負って戦うという事態は、極めて厳しい状況を意味している。しかしそんな状況下でも、ヴィッセルの選手たちが「勝てる」という自信を失うことはなかったということだ。事実、清水の得点をPKによる1点に抑え込んだだけではなく、ヴィッセルの得点チャンスも数度作り出していた。今季初勝利を狙う清水の身体を張った守備の前に、最後までゴールを割ることはできなかったものの、この日の試合でヴィッセルの選手たちが見せた勝利への気迫とパフォーマンスは見事だった。と同時に、俯瞰で試合を見ることができる立場としては、ピッチ上でもう少しだけ戦い方を整理することができていれば、という悔しさが残った。
サッカーにおいて人数が少なくなった時の戦い方には、4つの鉄則がある。
1つ目は守備組織の維持だ。この日の試合ではセンターバックの山川哲史が一発退場となったわけだが、これに伴いミヒャエル スキッベ監督はインサイドハーフの乾貴士をベンチに下げ、ンドカ ボニフェイスを投入した。これによって攻撃は1枚削られたが、守備組織は維持することができた。ここでもう1つ大事なのは、選手間の距離を詰めることだ。これによって、1人少ないことで生まれるスペースの最小化を図りつつ、相手のパスコースやドリブルのスペースを消す。その際にはゴールを守ることを優先するため、選手の配置は少しだけ中に寄ることが多い。これによってサイドを使われる危険性は高くなるが、これは失点を防ぐための対価として割り切るしかない。
2つ目は攻守の切り替えの徹底だ。とはいえこれは、人数が少なくなった時点のシチュエーションにも左右される。ここでいうシチュエーションとは、その時点のスコアや残り時間だ。例えば残り時間が少なく、自分たちがリードしている場合には、当然守備を固めることが優先となり、攻撃は得点を奪うこと以上に時間を使うことが優先される。そのため、ポジティブトランジションはそれほど重視されない。難しいのはこの試合のヴィッセルのような点差がない状態、若しくはリードを許している状態の時だ。この場合は1人少ない状態で攻撃と守備の双方を繰り出さなければならないため、全員がその切り替えを徹底しなければならない。
3つ目は攻撃方法の徹底だ。1人多い相手を崩すためには、いつも以上にチーム全員がゴールまでのヴィジョンを共有していなければならない。それができなければ得点を奪うどころか、意識のズレによって生み出されるスペースが、相手の狙いどころとなってしまう。中でも重要なのは、最終ラインからの積極的なビルドアップだ。1人少ないからこそ、攻撃時にはいつも以上にリスクを負い、積極的なプレーによってチャンスを自ら作り出すことができれば、そこに活路を見出すことができる。
4つ目はメンタルの維持だ。1人少なくとも勝つという気持ちを最後まで維持することが、前記した意思の統一を図る上での土台となる。
こうした鉄則に照らし合わせたとき、この試合でヴィッセルの選手たちが見せた対応には間違いはなかったと言える。だからこそ選手たちは「勝てた試合だった」と、口をそろえたのだろう。

「-1」でできること
人数が少なくなった後も、ヴィッセルに勝機はあった。それを象徴しているのが前半終了間際、アディショナルタイムのプレーだ。まずは事象を振り返ってみる。
清水の左スローインの狙いは、前線から戻ってきた韓国代表フォワードのオ セフンだった。アンカーの鍬先祐弥がこれを察知し、内側から寄せたものの、セフンはその前に左タッチライン際の味方に預けた。しかし鍬先が寄せたことで、パスコースを限定したインサイドハーフの井手口陽介と右サイドバックの広瀬陸斗がここに詰めて、ボールを離させた。これを受けた左ウイングのカピシャーバにはボニフェイスが背後から寄せ切り、ボールを収めさせなかった。ここまでが第1段階だ。
こぼれたボールを拾った井手口は前を向き、中央に立っていた佐々木に縦のパスを通し、自らもそのまま上がった。佐々木は後ろ向きのまま、このボールを上がってきた井手口に落とした。井手口はこのボールをダイレクトに左足で蹴り、相手最終ラインから5mほど前でフリーになっていた前線中央の小松漣に正確に差し込んだ。ここまでが第2段階だ。
小松は背後から上がってきた佐々木にダイレクトでボールを預けようとしたが、これは僅かにコントロールを失った。しかし佐々木の背後から押し上げてきた鍬先がこれを拾い、前を向いた小松の足もとに正確にボールを入れた。小松はこれを左足でコントロールしながら左方向に進路を取り、広大な左スペースを上がってきた左サイドバックの永戸勝也にパスを通した。ここまでが第3段階だ。
永戸がハーフスペースを使いながら上がり、ペナルティエリア角の左に差し掛かったところで、ペナルティエリア内では右ウイングの武藤嘉紀が、相手最終ラインの間に入り込んでいた。さらに背後から小松、鍬先、佐々木が走りこんできたのを見て、永戸は左足でクロスを入れた。このクロスはファーサイドに入った小松を越えていったが、右コーナー付近でこれを拾った広瀬が右足で折り返した。これは相手にクリアされたものの、中に入り込んだ永戸がこれを拾った。しかしボールをコントロールしきれず、詰めてきた相手選手との球際勝負となった。ここでこぼれたボールを拾った佐々木がフェイントで相手を動かし、そこから外に開く動きでシュートコースを作り出し、最後はニアを狙いシュートを放った。これは枠を捉えていたが、相手GKに弾き出されてしまい、惜しくも得点とはならなかった。
この一連の流れの中には、この試合で勝利する=得点を奪うためのポイントが3つあった。1つ目は第1段階でカピシャーバからボニフェイスと井手口がボールを奪ったシーンだ。井手口が前を向いた瞬間、ヴィッセルの選手でマークを受けていたのは小松だけだった。この時点で清水の守備は人についていなかったため、「+1」という状況を活かすことができていなかったことが判る。ネガティブトランジション時の配置だという声もあるかもしれないが、この時点で清水は武藤、佐々木というヴィッセルで最も警戒すべき選手を離していた。さらにスローインを投げ入れた左サイドバックの吉田豊は誰もいない左タッチライン際でポジションを取っていた。要はヴィッセルの前線の選手ならば、動くためのスペースを見つけることは容易な状況だったのだ。
2つ目は第2段階の最後のシーンだ。井手口からのボールを小松が受けた時、小松が何を狙っていたかは正確には把握できないが、結果的にヴィッセルはここから左に進路を取った。しかしここで狙うべきだったのは右サイドだった。小松にボールが入った時、武藤が吉田と左センターバックの住吉ジェラニレショーンの間で前を向くことができていたためだ。しかも武藤の背後にいた吉田、前にいた住吉とも小松を見ながらの動きであり、上半身を捻った状態であったのに対し、武藤は身体全体を前に向けていた。これに小松が気付き、武藤の進路上にボールを落とすことができていれば、武藤が抜け出し、ゴールを陥れていた可能性は高かったように思う。
3つ目は第3段階最後の、小松が永戸を使ったシーンだ。ここで永戸が縦に抜けたのに対して、それを追ってきた清水の2人の選手は永戸を内側から見る格好になっていた。そして5人の選手がペナルティエリアに向けて縦に走る武藤を追うように中に入っていった。要は清水の守備に戻った7人の選手が2人と5人のグループを形成し、それぞれ外と中に分かれながら走っていたのだ。その結果、両グループの間には広大なスペースが生まれていた。ここから判るのは、清水は「人は管理していた」が、「スペースは管理していなかった」ということだ。
1人少ないとはいえ、こうした清水の守備に対してであれば、ヴィッセルがつけ入る隙はあったように思う。1人少ない中で縦に速い攻撃が増えてしまうことはやむを得ないが、そんなときにも大事にすべきは「時間とスペースを味方に渡す」という概念だ。ましてやこの日の試合では、スペースはそれほど苦労せずとも奪える環境にあったことを思えば、「-1」という状態でも、やれることはもっとあったように思える。

試合の流れ
ヴィッセルに勝機はあったものの、試合を通してみれば主導権を握っていたのが清水だったことは認めなければならない。とはいえこれも試合経過とともに、ヴィッセルが徐々に流れを手放してしまった結果とも言えるのではないだろうか。
最初に流れをつかんだのはヴィッセルだった。ヴィッセルらしい強度の高い守備で、球際の勝負を制し、そこから縦にボールを差し込みながら清水陣内に攻め込んでいった。4分には、右から広瀬が入れたクロスに武藤が頭で合わせた。タイミング、コースともドンピシャだったが、これは惜しくも右ポストを叩いてしまった。その後もヴィッセルの攻める時間が続いた。
その流れに水を差したのは清水の2人の選手だった。2人とは、前線のセフンとインサイドハーフの千葉寛汰だ。高いキープ力で積極的に仕掛ける千葉と前線で実直に身体を張り続けたセフンのプレーに対して、ヴィッセルの守備は手を焼いていた。特にセフンを目がけたロングボールは効果的だったように見えた。それ自体がゴールチャンスになるということではなかったが、このボールによってヴィッセルの守備陣が「戻らざるを得なくなる」という状況そのものが、ヴィッセルにとってはボディブローのように効いていたのではないだろうか。加えてセフンによる前線でのプレスも厄介だった。それが194cmという長身を活かし、ボールホルダーの視界を遮るという地味なプレーであったために、ヴィッセルの選手がそこでボールを失うということはなかったのだが、これによって常に軽いストレスを受けていたように思える。
この2人が作り出した最初の得点機会は11分だった。千葉がペナルティエリア内で巧みに切り返し、ゴール前にパス。これをニアポスト傍でセフンが後ろ向きに流し込もうとした。これは枠を外していたが、この辺りから試合の流れが徐々に変わっていったように思う。結果的にこの2人に振り回される格好で、ヴィッセルは試合の流れを手放してしまった。
DOGSO
前段の続きのような話にはなってしまうが、この試合の流れを決定づけてしまった山川の退場劇は、セフンと千葉によって引き起こされたものだ。18分に相手GKが蹴ったボールは、ハーフウェーライン上にいたウイングの北川航也を狙ったものだったが、右センターバックのマテウス トゥーレルが余裕をもってクリアした。これをきっかけにヴィッセルは左サイドでボールを動かし、清水の守備網の中に入ろうと試みた。しかし永戸からの、中に入った佐々木を狙ったグラウンダーのパスが相手にカットされた。最後は自陣深くまで戻っていた北川が前に送ったボールに対して、ハーフウェーラインから清水陣内に入ったあたりで、セフンがバックヘッドで前に流した。これはセンターサークル左にこぼれたのだが、ここに自陣から駆け上がってきた千葉が、このボールを拾った。そして山川の前に出たところで、山川の手が千葉にかかり、千葉は倒れた。このプレーが「決定的な得点機会の阻止(DOGSO)」に当たると判断され、山川にはレッドカードが提示された。
この場面で千葉が拾ったボールの落下地点は山川と千葉の中間地点辺りに着弾したように見えた。ひょっとすると山川が前に出ていれば、球際勝負に持ち込めた可能性があったのかもしれないが、既にトップスピードで走っていた千葉との勢いの差を考えれば、千葉を待ち構えた山川の判断は妥当だったように思う。もし山川に誤算があったとすれば、千葉の切り返しが思った以上に鋭かったことなのではないだろうか。結果論であることを承知でいうと、千葉と山川が競った位置はハーフウェーラインを僅かに越えた辺りであり、加えて千葉の背後からは井手口が追ってきていたことを思えば、山川が取るべき最善の行動は千葉を左に押し出すように動き、遅らせることだった。しかし山川はボールを奪いにいっていたため、かわされてしまった時点で、なかば本能的に手が出てしまったのかもしれない。
結果的にこのプレーが、試合の趨勢を定めてしまったことは事実だ。山川にとっては忘れることのできないプレーになってしまったかもしれないが、これを今後への糧とするほかない。今、山川は苦しい思いを抱えているとは思うが、ディフェンダーはこうした失敗を繰り返すことで成長するということも忘れないでほしい。誰もがここまで山川がキャプテンとしてチームをけん引し、献身的なプレーで何度もチームを救ってきたことは知っている。そして幸いなことに、この明治安田J1百年構想リーグ(以下百年構想リーグ)は、まだ始まったばかりだ。この日犯したミスを取り返す機会は十分に残されている。実力、安定感とも日本人トップクラスのディフェンダーへと成長した山川ならば、必ずやそれを成し遂げてくれるものと確信している。
乾貴士と小松蓮
この試合がヴィッセルでの公式戦デビューとなった乾だが、山川の退場によって交代を余儀なくされた。この交代は多分に戦術的なものであり、乾にとっては不運という他ない。それでも試合後には山川を気遣うなど、乾が見せたベテランらしい振る舞いには感心させられた。プレー時間も短く、「らしさ」を発揮する場面は訪れなかったが、コンディションは悪くなさそうに見えた。
この日の清水のように前に圧力をかけてくるチームを崩す上では、ボールを持って時間とスペースを味方に渡すことができる技術と豊富な経験を持った乾の存在は、大きな武器となる。強度の高いサッカーを志向するチームが増えた今、乾が輝きを放つ機会はそう遠くないうちに訪れるだろう。高校時代から卓越したボールスキルで見るものを沸かせ、代表や海外でも活躍してきた「乾らしさ」全開のプレーが見られることを楽しみにしている。

そしてもう1人この試合で「らしさ」を発揮しきれていなかったように感じたのが、前線で身体を張り続け、71分までプレーした小松だった。この日の試合でも小松は前線でのファーストディフェンダーとしての動きを続け、守備面では大きくチームに貢献した。問題は攻撃時だ。ロングボールのターゲットになる場面も多かった小松だが、エースである大迫勇也のように、そこから味方を動かすプレーにつなぐ確率はまだ低い。しかしこれは技術的な問題である以上に、タイプの違いであるように思う。やはり小松の高さは、ペナルティエリアの中でこそ活きるのではないだろうか。泥臭く身体を張ることができる小松ならば、ゴール前の密集の中でも、臆することなく勝負を挑むことができる。これこそが小松がJ2リーグで得点を量産してきた原動力だ。そう考えると、小松の高さを活かす場所は、この試合でプレーしたエリアよりも、もっと高い位置であるように思えるのだ。
いずれにしても小松の能力に疑いはない。ヴィッセルでは貴重な「身体を張り続ける」ことができる選手でもある。1つのゴールが生まれれば、その後は得点を量産してくれそうなストライカーらしい雰囲気も持っている。今はチーム全体が小松の活かし方を探っている最中なのかもしれないが、今後も出場した試合では、これまで通りの全力プレーを見せてほしい。それが待望の初ゴールへの最短距離であることだけは間違いないはずだ。

PK
この試合の決勝点は思わぬ形で生まれてしまった。48分に清水が得た右コーナーキックの場面で、キッカーの日髙華杜はペナルティエリア右角近くにいた千葉へつないだ。これに対して鍬先が寄せていったのだが、千葉が中を狙って蹴ったボールは、鍬先を直撃したように見えた。この時、ペナルティエリア内にいた清水の選手の何人かは手を挙げていたが、そのままプレーは続いた。ヴィッセルは巧く左サイドを使って前進し、最後はゴール近くまで永戸が侵入といった具合に、ヴィッセルがチャンスを作り出した。その後、ボールがタッチラインを割ったところで、笛が吹かれ、試合は中断した。VARが介入し、鍬先のプレーがハンドに当たる可能性を指摘したためだ。その後、OFRが行われ、鍬先のプレーはハンドと判定され、清水にPKが与えられた。映像で見直してみたが、ボールは鍬先の顔面を直撃した後、顔の横にあった右手に当たっているようには見える。手が下に降りていれば、顔に当たった後の不可抗力としてハンドとはならなかったかもしれないが、手が顔の横にあったことで「バリア」と判断されたのかもしれない。いずれにしても主審の判断が覆ることはなく、PKをセフンに決められてしまった。そしてこの失点が決勝点となった。
このプレーに関与する格好となってしまった鍬先だが、試合を通じて素晴らしい動きを見せ続けた。このPKのシーンに限っても、千葉に対していち早く反応し、一気に詰めたことの方を評価したい。もし鍬先に反省すべき点があるとすれば、ペナルティエリア内で手を上に挙げてしまったことくらいだろう。この試合で鍬先はアンカーとして最終ラインからボールを引き出し、激しい清水のプレスに対しても巧い対応を続けた。そしてボール保持時には巧く前を向きながら、ボールの出しどころを見つけるプレーで、チーム全体を前に向け続けた。ヴィッセルに加入以降、目覚ましい成長を続けている鍬先だが、今やアンカーとして扇原を脅かす存在にまで上り詰めた。この試合で鍬先が見せたパフォーマンスは、この試合をベンチから見守っていた山内翔にとっても良きお手本となったのではないだろうか。

Back to Basic
ヴィッセルにも勝機はあったと繰り返し述べてきたが、試合を通じてヴィッセルが放ったシュートは2本にとどまった。しかもそれはどちらも前半に放たれたものであり、後半はシュート0本に抑え込まれた。この数字からは、形はそれなりに作れていたが、攻め切るところまでは至らなかったという状況が浮かび上がってくる。そうなってしまった最大の理由が人数的な不利にあることは間違いないだろうが、もう1つには攻め急いでいたということも挙げられる。数的不利をカバーするために選手たちは考え、努力を続けたが、今季のヴィッセルが志向している「素早くチーム全体で攻めていく」という形は作れていなかったように思う。状況によって戦い方が変わることは当然だが、スキッベ監督が求める「時間とスペースを貯めながら前進するサッカー」は、常に根底に置いていなければならない。その意味ではロングボールを多用し、サイドからのクロスによって崩そうとする吉田孝行監督のサッカーの流れに嵌まり込んでしまったとも言える。これこそが、この試合における最大の反省点だったのかもしれない。
この試合の中でも、随所でヴィッセルの選手が密集の中でボールをつなぎ、そこから抜け出していくシーンは見られた。この技術をベースに組み立てられている今の戦い方は、これまで以上の破壊力をチームにもたらしてくれることだろう。そして数的不利を克服するために採るべきだったのは「ロングボールによるスピードアップ」ではなく、「いつも以上に人数をかけた局地戦の連続」だったように思う。局地戦で相手を集め、それを剥がす。これを繰り返すことで数的不利という状況を克服することが、今のヴィッセルならば可能だったのではないだろうか。
次戦に向けて
この試合をもって開幕からの5連戦は終わったが、この日の試合でもう1つ浮かび上がったことがある。それは「ピッチ上の監督の重要性」だ。今のヴィッセルにおいてその役割を担っている酒井高徳は、この試合には不在だった。この試合で崩されての失点はなかったものの、自陣深くでのプレーとなった際、選手たちは目の前のプレーに忙殺され、周囲に声をかける姿はあまり見られなかったように思う。いつもであれば、こうした局面では酒井が全員に細かくポジションを指示し、鼓舞する。これが各選手にやるべきことを再認識させ、チームを引き締めている。本来であれば山川がその役割を担ったのだろうが、その山川までもがピッチから退いた時点で、ヴィッセル、特に守備陣には「ピッチ上の監督」が不在となってしまったのだろう。
酒井や大迫、武藤といった選手を前にした時、若い選手たちはその実績や実力を見て萎縮してしまうのかもしれない。しかしひとたびピッチに立った時点で、そうした過去はリセットされる。ピッチの上では誰もが対等だ。ヴィッセルの若い選手たちが積み重ねてきた経験は、ピッチ上で声を出すに十分なものがあるはずだ。自分たちの実績に自信を持ち、「ピッチ上の監督」として振る舞うという意識を、常に持ち続けてもらいたい。
次戦は中5日での福岡戦だ。ノエビアスタジアム神戸に戻って戦うこの試合では、もう一度、全員が自信をもってピッチに立ってほしい。そして勝利という結果で、もう一段階自信を深めてほしい。試合ごとに負傷者が増えていることは心配だが、若い選手にとっては千載一遇のチャンス到来でもある。4日前のジョホール戦で公式戦デビューを飾った山田海斗がこの日の試合でも起用されたように、スキッベ監督は可能性の見えた選手を積極的に起用する傾向が強い。トレーニングの中で力をアピールすることができれば、それは出場機会の増加に直結している。壁は高いかもしれないが、怯むことなく大胆不敵に、先輩たちに勝負を挑んでほしい。そこで生まれるエネルギーが、チームを活性化する。福岡戦ではどの選手がノエスタのピッチで躍動してくれるのか。それを楽しみにしている。
またもや平日のナイターではあるが、1人でも多くのサポーターがスタジアムに足を運んでくれることを願うばかりだ。

