
用意された2つのプラン
公式戦の連勝を7に伸ばしたJ1リーグ・G大阪戦から中2日。約1カ月にわたって続いた過密日程の最後は、天皇杯3回戦だった。
対戦相手は「J1復帰」を目指し、J2リーグでの戦いを続けている鳥栖。ヴィッセルが試合前の時点でJ1リーグで首位に立っていることを思えば、J2リーグ15位の鳥栖との対戦が「ヴィッセル優位」で進むと予想するのは当然だ。しかし実際には、思い通りに試合を運ぶことができず苦しむヴィッセルに対して、鳥栖が自分たちの積み上げてきた戦い方で躍動した試合となった。この試合を振り返るうえでは、ミヒャエル スキッベ監督の腹積もりから読み解いていく必要があるように思う。
この日の試合を振り返るうえで注目すべきは、ヴィッセルのベンチメンバーだった。G大阪戦から中2日という超過密日程ではあったが、ベンチには山川哲史、ジエゴ、郷家友太、井手口陽介、髙橋壱晟、大迫勇也、武藤嘉紀という、いわゆる「計算の立つ選手」を置いていた。これは異例の策だ。こうした過密日程の中で行われるカップ戦にターンオーバーさせて臨むこと自体は、決して珍しいことではない。そして多くの場合、ベンチには主力選手数名と若手選手を混在させる。この日のヴィッセルのように主力選手だけでベンチメンバーを構成するというのは、あまり記憶にない。
ここから推測できるのは、スキッベ監督はこの試合に臨むにあたって、2つのプランを用意していたということだ。
この日の先発メンバーは以下のとおりだ。GKには新井章太。最終ラインは右から飯野七聖、岩波拓也、カエターノ、そして永戸勝也の4枚。中盤は鍬先祐弥、日髙光揮、そして久しぶりの出場となる渡辺皓太の3枚。前線は右からエリキ、小松蓮、ジェアン パトリッキの3枚だった。唯一、G大阪戦からの連続先発となった永戸にしても、G大阪戦では左ウイングだったことを思えば、全てのポジションを入れ替えたとも言える。しかし、前線のエリキとパトリッキはG大阪戦における決勝ゴールの立役者でもあり、彼らの力で先制点を奪い切ることができるという読みが、スキッベ監督にはあったと思われる。そしてその得点を守りながら戦い、試合をクローズする。これが最初のプランだったように思う。ここでは便宜上、これを「Aプラン」と呼ぶ。
スキッベ監督がこうした戦いを想定できた根拠は、「ヴィッセルの戦い方」は全ての選手に共有されているという点にあるのだろう。選手の個性に応じて細かな部分での変化は見られるはずだが、「ハイインテンシティと高速トランジション」という基本は貫かれる。だからこそ、この日の先発メンバーでAプランを遂行できると判断したのではないだろうか。
こうした選手たちへの信頼とは別に、スキッベ監督は「保険」も用意していた。それがこの日のベンチメンバーだ。「勝負は水もの」ということを十分に承知しているスキッベ監督は試合が膠着状態に陥る、あるいはリードを許すといった展開になった際には、J1基準のフルパワーを注入し、力で捻じ伏せるというプランも用意していたのだろう。これが「Bプラン」だ。
スキッベ監督がこうした2段構えの体制を整えていたのは、この日の試合は「勝利だけが求められる」というトーナメントの本質を理解していたことの証左だ。試合後に発した「試合内容については色々と言うことはあるとは思いますが、クラブとして次のラウンドに進めたことは本当に嬉しいですし、12月の4回戦も楽しみです」という言葉は本音であるように思う。
鳥栖の戦い方
試合後の会見でスキッベ監督は、鳥栖にボールを持たれることは想定していたのかという質問に対して、「正直に言うと予想はしていなかった」と答えた。そのうえで、「小菊昭雄監督の仕事を素直に褒めたい。後ろから丁寧につないでいくサッカーを見せてもらいましたし、本当に素晴らしいチームだと思います」と続け、鳥栖の戦い方を称賛した。このスキッベ監督の言葉通り、鳥栖は計算された、そしてきわめて個性的な戦い方を見せた。
直近のリーグ戦から10人を入れ替えてこの日の試合に臨んだ鳥栖だが、最初のセットは3-4-2-1だった。これに対してスキッベ監督のAプランでは、ボール非保持時に日髙が高い位置でプレスをかけつつ、中央は渡辺と鍬先で締める。その中で奪ったボールをサイドに展開し、エリキとパトリッキの両ウイングが高い位置を取ることで、鳥栖の両ウイングバックを押し下げる。そして中央の小松を起点として、全体を押し上げながら鳥栖の牙城を崩すという狙いを持っていたはずだ。しかし現実は、小菊監督が準備したプレス回避策とハイプレスによって、ヴィッセルの狙いは空転させられた。
この試合で鳥栖が見せた戦いの特徴は3つだ。1つは超攻撃的なビルドアップだ。ボール保持に変わった瞬間、鳥栖の両ウイングバックは前線近くまで上がる。同時にダブルボランチは前後に分かれる。かつてヴィッセルでプレーしていた櫻井辰徳が3バックの前に残り3-1という形を作る。そして前ではもう1枚のボランチを底にして、2枚のシャドーストライカーとウイングバックが横並びになり、4枚で幅を取る。結果的に、前線には1-4-1の形で6枚が並ぶ格好となる。この極端なまでに前に重心を置いた形は、全体を見たときには歪なのだが、これこそがヴィッセルの連続したプレスを回避する策であり、ヴィッセルの守備を混乱させた。
ヴィッセルの最終ラインは4枚であるため、最終ライン前では4対6の状況が生まれる。これは、ヴィッセルのサイドバックを押し下げるための布陣でもあった。両サイドバックに対してウイングバックとシャドーストライカーの2枚が挟み込むように立つことで、その前進を阻む。これによってヴィッセルの出口を中央に絞ってきたのだ。
2つ目の特徴は中盤をあえて空ける並びだ。今季の鳥栖はポゼッションを軸とした戦いを目指すと公言しているが、その場合、中盤には人数をかけるのが常道だ。しかしこの日の鳥栖は中盤に空白を作り出したうえで、櫻井に前の6枚に対しての縦パスを打ち込ませてきた。本来であれば渡辺と鍬先は、中盤で鳥栖のダブルボランチを捕まえて、前に圧力をかけたかったはずだ。しかし中盤を省略して、ヴィッセルのセンターバックの前を一気に狙ってくるため、マークすべき対象を見つけられない状態に陥った。
3つ目の特徴は高い位置での即時奪回だ。前線近くに5枚から6枚の人数を配置し、ボールの位置を中心に密度を高めたため、ヴィッセルのボール保持に変わった瞬間に見せる網の張り方は速かった。これを避けるためにヴィッセルの守備陣はサイドを使いたかったはずだが、ここで1つ目の特徴が活きてくる。サイドに出たボールに対してはウイングバックとシャドーストライカーで挟み込むことで、ヴィッセルのサイドバックが縦に逃げることを阻止した。そうなると残された逃げ道は2つだ。1つはボランチを経由した逃げ方だが、ここでは2つ目の特徴が活きてくる。常時、高い位置へボールを差し込み続けたことで、ヴィッセルのボランチは守備の基準点を作れていなかった。そのためボールを受けに低い位置に下がったとしても、それは6枚の網の中に入り込むだけであり、脱出や反撃の糸口とはなり得なかった。
こうした状況が積み重なった結果、ヴィッセルの逃げ口は前線の小松へのロングボールとなった。しかし小松は中央で孤立気味になっていたため、そのロングボールが相手のカウンターの起点となってしまう形が散見された。
ヴィッセルに起きたエラー
こうした鳥栖の戦い方に押し込まれた背景には、ヴィッセルに起きていたエラーの連鎖もあった。それが3つ重なったため、前半は鳥栖に主導権を握られ続けたように思う。
1つ目のエラーはエリキのポジショニングだった。右ウイングで先発したエリキだが、この日の試合では試合経過とともに、中に入り込んでポジションを崩す場面が散見された。エリキ自身は試合後に、右サイドでプレーする重要性を認識しているコメントを残しているが、全体を俯瞰して見たときには、中に入り込みすぎていたように思う。エリキ自身が言うように、右サイドから中に入り込むことで、中央に厚みを作ることができるのは事実だ。しかしそれは全体が最適化された後でなければ、ピッチ上にスペースを作り出すだけの結果に終わってしまう。献身的に走ることのできるエリキではあるが、その献身性がゴールへの意欲に直結してしまっている。勿論、ゴールへの嗅覚は鋭く、シュート技術も高い選手であるため、エリキを中央に入れる形を整えることは、そのままヴィッセルの攻撃力向上に直結する。問題はそのタイミングだ。この日の前半、鳥栖にペースを握られる中で、前記したようにヴィッセルにとっての脱出口は前線中央の小松を狙ったロングボールになっていた。エリキとすれば、小松をフォローすることで、それを攻撃につなげたいという思いがあったのだろうが、中央に入るタイミングが悪かったように思う。
また、これはエリキだけではなく左ウイングのパトリッキにも言えることなのだが、この日の前半、彼らが採るべき行動は鳥栖の3バックの裏を狙う動きだったように思う。ヴィッセルの守備陣は鳥栖の狙いを察知したうえで、不用意にサイドにボールを逃がすようなことはせず、中央で耐え続けた。もしも、ここでエリキとパトリッキが裏を狙う姿勢を見せていれば、そこが突破口になった可能性はある。特にロングフィードを武器とする岩波が最終ラインにいたことを思えば、それが得点チャンスに直結した可能性もある。前記したようにボール保持時の鳥栖の守備陣形は3-1という歪な形になっていたため、彼らが「サイドを使った裏への意識」を見せることができれば、それで鳥栖の陣形全体を下げさせることはできたように思う。その意味で、後半途中から左ウイングに上がった永戸と、途中投入され左サイドバックに入ったジエゴが作り出した左サイドの関係性には注目してほしい。彼らは常に相手の裏を狙う姿勢を見せつつ、異なるレーンに立ち、パスコースを確保する縦関係を確立していた。そしてそれが鳥栖の右ウイングバックを下がらせた原動力となっていたのだ。
2つ目のエラーは日髙のポジションだ。そもそも日髙に課されていたのは、ボール非保持時のファーストディフェンダーの役割だったと思う。先発起用されたモチベーションも影響したためか、ここで日髙はボールに食いつきすぎてしまい、背後にスペースを生んでしまった。これが鳥栖に対して、縦に差し込むタイミングを与えてしまい、結果としてヴィッセルは前後が分断されてしまったように思う。ボールを握る力もあり、球際での強さも見せるようになった日髙だが、この日は空回り気味だったように思う。ファーストディフェンダーとして動く際に求められる小松とのコンビネーションも確立されていなかったため、走らされているような形になってしまう場面が多かった。こうして日髙が空けたスペースを櫻井に使われたことも、前半の苦戦につながった。
3つ目のエラーは渡辺だ。ボール非保持時には鍬先とダブルボランチのように並ぶ場面が多かった渡辺だが、前後が分断されていたうえ、最終ライン前で味方が数的不利を負っていたこともあり、思うようなポジショニングを見せることができなかった。結果として周辺から浮き上がったような格好となってしまい、ボールに絡むことができていなかった。渡辺がボールを握る力と配球する能力を兼ね備えた選手であることは、前所属の横浜FMで見せていたプレーで、既に証明済みだ。さらには読みの鋭さを活かしたインターセプトにも定評がある。能力的にはヴィッセルの中心選手となれるだけのものを持っているはずなのだが、前半のような形になってしまうと、その良さは発揮されない。その意味では渡辺のエラーと断じてしまうのは違うような気もするのだが、この日のメンバーを考えたとき、渡辺に期待されていたのはチームのバランスを取り戻す「構成する力」でもあったように思う。経験値では「主力メンバー」と並ぶだけのものを持っているだけに、巧く全体をコーディネートしてほしかったという思いは残る。具体的には日髙が空けたスペースを管理してほしかったのだが、チームに加わってからの時間を考えれば、そこまでを望むのは酷なのかもしれない。
ここまで挙げた3つのエラーは、誰か特定の個人の責に帰するものではない。鳥栖の狙いに、チーム全体が絡めとられてしまった結果だ。むしろこうした状況の中でも失点を防ぎ続けた守備陣の奮闘を称えるべきなのかもしれない。しかし無失点で終えた裏には、小菊監督自身が試合後に言及したように、鳥栖の「決定力不足」があったことも事実だ。

反転攻勢
後半開始からスキッベ監督は小松に代えて大迫、鍬先に代えて井手口をピッチに送り込んだ。まずは前線に起点となれる大迫を置き、同時に櫻井の前のスペースを管理することのできる井手口を中盤に送り込むことで、試合の流れを落ち着かせた。その上で決定的な選手交代を見せた。それが57分の武藤の投入だ。
日髙に代わってピッチに入った武藤は、右ウイングの位置に入り、そのスペースを守り続けた。そこで狙いとしたのは鳥栖の左ウイングバックである、楢原慶輝の裏のスペースだ。武藤は中に入りすぎることなく、このスペースに高い強度で攻撃を仕掛けた。これによって楢原は前にポジションを取ることができなくなった。さらに武藤はそこからボールを握ったときには中に入り込む姿勢も見せたことで、鳥栖のボランチも引っ張り出していった。この武藤の見せたサイドでの強度こそが、スキッベ監督が当初に目論んでいた鳥栖攻略法の肝だったのだろう。これによって鳥栖の布陣は流動性を失い、前線への厚みを持つことが難しくなっていった。
大迫と武藤がピッチに揃ったことで、鳥栖に対するファーストディフェンスも機能し始めた。そしてこれが渡辺の能力を引き出した。鍬先もピッチを退いていたため、渡辺がアンカーとなっていたのだが、これが渡辺に動きやすさを与えたように見えた。ボールを触る回数は確実に増加し、広い範囲を動きながらボールを配球していく本来の良さを見せ、中盤を支配した。また相手の反撃に備えたポジショニングも見事で、相手の出足を遅らせる守備も見せた。86分に見せた守備などは、その好例と言える。渡辺が蹴り返したボールを受けた鳥栖の最終ラインは、ダイレクトで右に展開した。これをタッチライン際で受けた吉田真那斗は、中で受けに来た伊澤璃来につないだ。若干16歳にしてプロ契約を結ぶなど、鳥栖の未来を担う17歳の伊澤は、この日の試合でも巧みなポジショニングと的確な配球を見せていた。その伊澤に対して、渡辺はボールが出る前から寄せていき、前を向かせない守備で時間を作った。その前に吉田に永戸が寄せていたが、その際の永戸の身体の角度と周辺の状況から、吉田が伊澤にパスを出すことを予測した見事な動きだった。
最適解
G大阪戦の項でも触れたことだが、この日の試合もエリキの最適解が中央での起用であることを印象付けた。武藤投入と同時に中央へポジションを移したエリキだが、中央ではその得点感覚が最大限に発揮される。76分、右サイドからのフリーキックに端を発したプレーから決勝ゴールが生まれたわけだが、ここでエリキが見せた動きは秀逸だった。
鳥栖陣内のペナルティエリア前で圧力をかける中、後ろに戻したボールを中央で受けた渡辺が、左にポジションを取っていたカエターノにつないだ。カエターノはその場からほぼ動かず、左足で90度方向を変えるように蹴り、縦に差し込んだ。これをペナルティエリア外で、後ろ向きに受けたのがエリキだった。エリキはこのボールを右足のインサイドで浮かせるように当て、ペナルティエリア内中央への浮き球のパスとした。これをペナルティエリア内に入り込んでいたジエゴがそらし、中央の武藤につないだ。武藤は相手を背負うように後ろ向きになりながら、このボールをキープ。相手選手3人を引き付けたところで、近づいてきたエリキに渡した。エリキはこれをダイレクトでシュート。右足のインサイドを使った正確なキックで、文字通りゴールに流し込んだ。試合後にエリキは「カエターノの素晴らしいパスをジエゴが本当に上手くそらしてくれました。ヨッチ(武藤)はやはり強く賢いので、僕は落ち着いてシュートコースを見て蹴り込むだけという状況を作ってもらいました」と、得点にかかわった3人の選手への感謝を口にした。とはいえカエターノからのパスをゴール前にダイレクトで中に入れるセンスこそが、エリキの得点感覚であり、やはり傑出した力を持つ選手だ。G大阪戦でのゴールもそうだったのだが、エリキはゴール前で味方を使うプレーで、ゴール前に入り込むことができる。これは教えてできるといった類のプレーではない。これこそが、エリキの真骨頂なのだろう。
このゴールでエリキは2試合連続の決勝弾を決めたわけだが、やはりそのゴール前で見せる力は素晴らしい。前半、右サイドで見せたポジションを崩すプレーが、「相手にとっての狙いどころ」となっていたことは事実だ。しかし、中央に置いたときのエリキは「相手にとっての脅威」となっていた。こうしたことを考え合わせると、現時点ではエリキの起用は中央に特化することが、エリキを活かすための最適解であるように思う。

永戸&ジエゴ
前記したように、この試合の後半途中から左サイドを構成した永戸とジエゴのコンビネーションは、ヴィッセルにとって大きな武器となっていた。ゴールに至る流れの中でも、この2人のコンビネーションは鳥栖を翻弄した。何度もボールが行き来する中で、この両選手は一度として同じレーンには立たなかった。そしてボールを動かす際は、どちらかが相手の前に立ち、そこに相手を引き付けることで、お互いに時間とスペースを渡しあっていた。ゴールに直結したのはペナルティエリア角に立った永戸とのパス交換でジエゴがペナルティエリア外で見せた、左から中央に向けてのドリブルだった。こうした動きによって鳥栖の守備の目を引き付けたことで、エリキにもスペースが生まれ、相手の最終ラインの間でボールを受けることができた。
これまではヴィッセルのサイドを使った攻撃と言えば、右サイドが主戦場となっていた。右サイドにはサイドバックの酒井高徳とウイングの武藤が並ぶためではあるが、片側を上げたときには、逆サイドが下がるという戦い方をしていたためでもある。しかし今季、スキッベ監督はどちらかを守備に下げるのではなく、全体をコンパクトに再構築することで、両サイドともが、攻撃の起点となれるような配置をしている。そこに永戸&ジエゴというコンビネーションが生まれつつある。このコンビは、この日の勝利の陰の立役者でもある。
課題の残った勝利
試合は皮肉にも、前半は機能しなかったエリキのワンチャンスでのゴールによって、1-0で決した。ヴィッセルにとっては後半に投入した主力選手たちの力で流れを引き戻した試合であり、文字通りの辛勝というべきだろう。冒頭で書いたように、この日求められていたのは「勝利」という結果だ。もし、試合開始直後わずか18秒の小松、3分の日髙に訪れた決定機がゴールに結びついていれば、「プランB」は実行されることはなかっただろう。しかし、それを逃し、試合が落ち着いてからは鳥栖の準備してきた形が機能し始め、先発陣はそれを崩すことができなかった。これは、ターンオーバー時における「再現性」という意味で、多くの課題が露呈した結果だったとも言える。
この先も複数のタイトルをかけて、過密日程のまま試合は続いていく。それらを勝ち抜いていくためには、この「再現性」は必須ともいうべき事項だ。だからこそこの日の結果については、敢えて厳しくとらえる必要があると思う。
もはやヴィッセルは「勝てばいい」というレベルのクラブではない。現在、J1リーグ戦、U-21リーグ西地区、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2026西地区と、異なる3つのカテゴリ全てにおいて首位に立っているように、日本を代表する強豪クラブへと歩を進めつつある。今のヴィッセルにはそれだけの選手がそろい、フロントはそれを後押しできる態勢を整えている。だからこそ評価は勝敗だけに拠らず、内容にも目を向け続けなければならない。
次戦に向けて
この試合の結果、ヴィッセルは無事ベスト16に駒を進めた。そして公式戦の連勝を8へと伸ばした。過密日程の9月を全勝で終えたヴィッセルだが、ここから約2週間の中断期間を迎える。まずは連戦の疲れを癒し、コンディションを整えなければならない。再開初戦となるJ1リーグ戦第9節の相手は、現在勝点差1で2位につけている柏だ。可変型の3-4-2-1をベースとして、ハイプレスとポジショナルプレーを使い分ける厄介な相手であり、リーグ戦の王座奪回のためには必ず倒さなければならない相手だ。この難敵から勝利を挙げるには、さらなるレベルアップが必要だ。そしてそのためには、チーム内の競争を激化させなければならない。この日の試合に先発した選手を含む若手選手たちの一層の奮起こそが、ヴィッセルをさらなる高みへと導く。


