決定打
51分、左ウイングの永戸勝也が決めた2点目は、この試合におけるヴィッセルの勝利を決定づけた。まずはそのシーンを振り返ってみる。
GKの権田修一がセンターサークル手前から蹴ったボールは、左ペナルティエリア角に飛んだ。このボールへは途中出場してインサイドハーフに入っていた日髙光揮が競ったが、東京Vの守備がそれに競り勝ち、跳ね返された。これを受けたのは左センターバックのマテウス トゥーレルだった。トゥーレルは数歩前に出て、右サイドに開いていた右ウイングの飯野七聖へと展開。ペナルティエリア右角の近くでこのボールを受けた飯野は、目の前に立った相手を避けるように下がり、少し中に入ったところから左足でクロスを入れた。このボールに対して、抜群のタイミングで飛び込んだのは最初にボールに競った日髙だった。日髙が頭で合わせたシュートは正確に枠を捉えていたが、相手GKが少し左に跳びながら両手で弾き出した。しかしここに走りこんでいた永戸が、これを右足で押し返すようにゴールに流し込んだ。
クロスからの展開としてはよくあるケースとも言えるが、このゴールは3つの点において素晴らしいゴールだったと思う。
1.連動
1つめは複数の人間が連動して生まれたゴールであるという点だ。
まずはトゥーレルからのボールを飯野が受けるときだ。ここで飯野の前に出てきたのは、東京Vの左ウイングバックである溝口修平だった。溝口は飯野をマークするために距離を取って構えたのだが、ここで飯野を助けたのが右サイドバックの髙橋壱晟だった。髙橋はトゥーレルが蹴るとき、飯野よりも内側の中央レーンに立っていたのだが、トゥーレルのボールを見て、飯野の方向に走り、背後をまわるように動き、右サイドの深い位置に走りこんだ。髙橋が飯野の背後で重なったとき、溝口は飯野の中への動きについていこうとしていたのだが、そこで内側から出てきたシャドーストライカーの福田湧矢にマークを渡した。この場面を溝口の立場で考えてみると、当初は飯野のマークを続けるつもりだったと思うが、髙橋が外に開いた以上、それに対応せざるを得ない状況となったのだ。さらに福田が来ているのも見えていたため、自分がマークを外しても、飯野へのマークが外れることはないと考えたのではないだろうか。これが間違えているわけではないが、マークが外れた一瞬が、飯野にとってはクロスを入れるために必要な「時間と空間の余裕」となったことは間違いない。
次は日髙が飛び込むシーンだ。飯野がクロスを入れるとき、これに合わせることができる位置にいたのは日髙と前線中央の小松漣だった。日髙と小松は近い距離で立っていたが、それぞれの前には相手選手も立っていた。ここで注目すべきは小松の動きだ。小松は前に立つ相手の間に入り込むように動き、そこで潰れることを選択した。これによって日髙へのプレッシャーを取り除いたのだ。咄嗟の判断としてはベストだったと思う。センターフォワードとしてペナルティエリア内でやれることは、ゴールを奪うことだけではない。自分にマークを引き付け、味方に「時間とスペース」を与えるのも大事な仕事だ。また小松の動きを見て、迷うことなくボールに飛び込んでいった日髙の勝負勘も高く評価したい。結果的に相手GKのほぼ正面に飛んでしまったとはいえ、シュート自体も完璧なタイミングと強さを持っていた。
最後はゴールを決めた永戸だ。日髙が頭に当てた瞬間、GKの前に立っていたのは左右のセンターバックである井上竜太と鈴木海音だったが、両選手とも完全にボールの行方に目を向け、足を止めていた。しかし井上の外側にいた永戸だけが、前に向けて動き出していた。シュートがこぼれてくることも想定していたのだろう。その結果、相手GKが弾いたとき、永戸はゴールエリアに差し掛かっていたが、井上と鈴木は完全に後手を踏んでいた。時間にすれば1秒程度のことではあるが、この差が大きくものを言った。相手GKは完全に倒れていたため、永戸はノープレッシャーの状態で前からきたボールをまっすぐ蹴り返すだけで良かったのだ。
2.厚み
このゴールが素晴らしいと思う2つ目の理由は、このゴールに至る過程で厚みが形成された点だ。そしてボールにかかわったすべての選手が「時間とスペースを味方に渡す」ことを意識していた。
まず東京Vのクリアしたボールがトゥーレルのもとに入ったとき、東京Vの守備には余裕があった。3-4-2-1でセットした東京Vだが、ヴィッセルがアタッキングサードに侵入した段階では、両ウイングバックを下げた5-4-1になるよう設計されていた。しかしこの5ー4のブロックには、ヴィッセルの付け入る隙もあった。それは東京Vの中盤の並びだ。トゥーレルがボールを受けた時点で、中盤の4枚は中央に集まる形になっていた。本来ならばここで右に開こうとしていたヴィッセルの意図を察して、中盤が最終ラインの前で幅を取りにいく。実際に東京Vの選手もそのように動こうとしていた。ここでそれを阻止したのが、トゥーレルが見せた動きだ。トゥーレルは自分が前に数歩出ることで、東京Vに狙いを絞らせないようにしたのだ。東京Vの選手たちは、トゥーレルがミドルサードからアタッキングサードまで縦に動く可能性があるということは認識していたはずだ。そのため中盤の4枚は一瞬、トゥーレルの動きに目を向けてしまった。これによって、右に開こうとしていた飯野と髙橋には「時間とスペース」が与えられた。また攻撃陣とトゥーレルの間に立っていた日髙と右インサイドハーフの井手口陽介へのマークも外れた。これが次のシーンでは活きてきた。
飯野が中に切れ込んでクロスを入れようと試みた時点で、ヴィッセルの選手は4人がペナルティエリア内に侵入していた。ここで注目してほしいのが井手口が見せた動きだ。小松と日髙は、飯野がキックモーションに入ったのを見て前に出ようとしていたのだが、井手口はその前にペナルティエリア内中央で深い位置まで入っており、最終ラインの目を引き付けていた。その上で、飯野のキックに合わせて下がり始めたのだ。左を向いて守る東京Vの守備陣にとって、ペナルティエリアの入り口付近まで戻ろうとしていた井手口の動きは嫌でも目に入る。そのため背後からくる小松や日髙と井手口のどちらにつくべきか迷い、動き出しが一瞬遅れた。その結果、前に出てくる小松と日髙の動きを止めることができなかったのだ。この井手口の動きも、味方にスペースと時間を与えた動きだ。
ここでもう1人注目してほしいのが、左サイドバックのジエゴだ。トゥーレルがボールを持った時点から、ジエゴは左のハーフスペースを縦に上がり、飯野がクロスを入れるときには、東京V守備陣の外側でフリーになっていた。これによってヴィッセルの攻撃には飯野を追い越し右外にポジションを取った髙橋からジエゴまでの幅ができ、東京Vの守備をその中に包んでいた。これによってヴィッセルの攻撃には幅と厚みが生まれていた。
攻撃の厚みは、相手の守備にストレスを与え続け、エラーを引き起こすための包囲網でもある。そしてこれを作り出すためには、選手個々が「時間とスペースを味方に渡す」意識を持ちながらプレーしなければならない。この得点シーンでプレーに関与した選手がどこまで意識していたかは不明だが、結果的に全ての選手が「味方を活かすプレー」を連続させた。それによってヴィッセルは理想的な攻撃を繰り出すことができ、決定的なゴールを生み出した。
3.理屈で生み出したゴール
試合後の会見で東京Vを率いる城福浩監督は「攻守におけるゴール前でのインテンシティに差があったと思います」とコメントした。確かにチャンスを得点に変えるのは、個人の強さや技術に依拠している部分が大きい。しかしそれが全てではない。サッカーにおいては「ゴールから逆算して」という表現が頻出するが、このゴールは得点を挙げるための道筋を全員が正しくたどった結果でもある。その意味では「理に叶ったゴール」とも言える。これがこのゴールを素晴らしいと評する3つ目の理由だ。
厚みをもって攻め入る中で、各選手が最適な選択を見せ、それが連なったことで強制的に東京Vの守備のズレを作り出していった。そしてこのゴールを決める過程に「特別なプレー」は登場しない。全員ができることを確実に続けた結果のゴールであったことに価値があると思う。

東京V
ここまで2得点目について細かく見てきたが、これだけでヴィッセルの強さの証明となるわけではない。東京Vの状態が良くなかったことは、この試合を評価するうえで踏まえておかなければならない事実だ。試合後の会見の中で城福監督は「歪な編成」という表現を何度も使った。チームを構成するうえで、守備の人数が不足していると、城福監督は見ているようだった。そして城福監督は「歪であるがゆえに生み出せるものもあるはず」としたうえで、それを作り出すのが自分の仕事だとコメントした。この城福監督の言葉には、思うようなチーム作りができていない苛立ちも込められているように感じた。
この指揮官の見立ては正しいと思う。この日の試合において東京Vは選手間の距離が定まっていないように見え、肝心の部分でのミスが散見された。そうなっている理由は、司令塔である主将の森田晃樹の不在だろう。ビルドアップ時にチーム全体を動かし、道筋をつける森田が負傷によって戦列を離れているため、東京Vのビルドアップは機能不全に陥っていた。これまでは森田が自らの立ち位置を調整することで最終ラインからのボールを引き出し、チームを前に進めていたが、この日の試合ではその道筋を見つけられないまま、ヴィッセルの守備の網にかかる場面が目立った。
そしてもう1つ、今の東京Vにおいて深刻なのは得点力の低下だ。この日の試合を含めた5試合で挙げた得点は、僅かに2点。そうした状況に陥っている理由は、この日の試合でもワントップに入った染野唯月への依存が限界に来ているためだろう。攻撃の基準点が染野であることが明白であり、それに代わる存在やそこを使わない攻撃が確立できていないため、染野をセンターバックに封じられてしまうと、そこからの2次攻撃や効果的なシュートパターンを作り出せないように見えた。
こうした状況で苦しんでいる東京Vの状況を考えると、この日の勝利はチーム状態の差による部分が大きいと言わざるを得ない。そして東京Vの選手たちはこの日の試合に際して、染野依存からの脱却を図っていたようだ。試合後の選手たちのコメントを聞く限り、後半頭から登場した齋藤功佑を軸とした組み立てとシャドーストライカーの福田や松橋優安の積極的な攻撃参加によって「新しい形」を作り出そうとしていたようだ。
ここで気になるのは、複数の東京Vの選手から「ヴィッセルの守備の強度はそれほど高くなかった」、「自分たちの戦いができれば守れると思った」というコメントが聞かれたことだ。スタンドから見ている限り、チーム力の差は歴然としていたように思うが、相手選手に強さを印象付けるには至っていなかったのかもしれない。
この日の試合でヴィッセルに対して「やれる」と感じたのは、途中交代で登場した選手たちだった。後半開始からセンターバックの中央に入った佐古真礼や59分にシャドーストライカーの一角に入った齋藤は、試合後にそうしたコメントを残している。
この日の試合におけるヴィッセルは、試合後にミヒャエル スキッベ監督がコメントしたように「ボールを自陣から遠ざける」戦いを見せた。その中で前線からの連動したプレスをかけ続け、高い位置でボール奪取に成功する場面は多かった。前半は福田の背後を狙う動き以外には、危ないと思う場面は見られなかった。逆に両サイドからのアーリークロスやジエゴのロングスローを効果的に使い、長い時間を東京V陣内で過ごすことに成功していた。
状況に変化が生まれたのは後半だった。2点リードに変わった後、東京Vが齋藤や新井悠太を投入した辺りから、自由にボールを持たれ、ポケットへの侵入を許す場面が散見された。その理由は守備のマークや受け渡しに緩さが出たためであるように思う。最後の場面はトゥーレルと山川哲史のセンターバックコンビ、3試合ぶりの公式戦出場となった権田の落ち着いたプレー、そしてスピード感を取り戻したネガティブトランジションによって決定機は作らせなかった。しかし相手との力関係を考えれば、看過できるものではない。
試合の運び方
こうした状況を招いた原因は、体力のマネジメントにあるように思う。まだシーズン開幕から公式戦は6試合を消化しただけではあるが、連日の暑さに加え、中3日という超過密日程によって、選手たちの体力は厳しい状況に置かれているはずだ。前半から連動したプレスや素早いネガティブトランジションを見せていたヴィッセルの強度が、時間経過とともに低下するのはやむを得ないとも言える。
この日の試合でスキッベ監督は後半開始から郷家に代えて日髙、59分には小松に代えて大迫勇也を投入し、前線の強度を維持しようと試みた。しかし前半から高いインテンシティでハイプレスを続けてきた飯野や永戸といった選手には若干の疲れが表れていたように思う。この選手間の体力の差は、その後徐々に布陣が間延びするという状況を生み出し、連動したプレスがやや機能不全に陥っていたように見えた。
まだ1カ月程度は暑さが続くということを考え併せると、選手たちに望まれるのは「状況に応じた試合運び」ということになる。高い強度で押し込んでいく戦いを基本とすべきことに疑いはないが、試合の状況に応じてミドルブロックを形成し、相手に持たせる時間を作る。それによって体力を温存し、90分間を通して強度を保つ戦いを見せることは、この気象条件の中で安定した成績を残すためには必須とも言えるように思う。
また、この日の試合であれば、2点リードとなったところで戦い方を変えるという方法もあったように思う。今季まだ勝利のない東京Vが、それまで以上に前に出てくることは容易に想像がついただけに、ここでポゼッションしながら時計を進めることができれば、完全に相手の心を折ることができたのではないだろうか。しかしこの試合のスタッツを見ると、ヴィッセルのポゼッション率は45%となっている。ここには「持たせている」という意味も含まれているため、この数字だけですべてを図ることはできないが、この日の試合では、前節のC大阪戦に比べてポゼッションがスムーズさを欠いていた印象を受けた。
ボールを握る戦いを加えようと試みているヴィッセルにとっては「ハイプレス」と「ポゼッション」の兼ね合いは大きなテーマでもある。先にC大阪戦と比較してポゼッションがスムーズさを欠いていたと書いた。しかし試合全体を通じて見たとき、攻撃に迫力があったのは、この日の試合だったことは間違いない。このベクトルが異なる2つの戦い方を1試合の中で使い分けるというのは理想的ではあるが、難しいことでもある。しかしこの過密日程の中で戦い、J1リーグ戦を含むタイトル獲得を果たし、さらにアジアの頂点を狙うためには「自分たちのリズムで試合を落ち着かせる」という戦術的な引き出しは絶対に必要だ。その意味では、この部分が今のヴィッセルにとっては「最大の伸びしろ」と言える。
サイドの槍
この日の試合で2得点ともに絡む活躍を見せたのは飯野だった。1点目のシーンでは、ロングスローからの流れてきたボールに鋭く反応し、背後に立つ酒井高徳を巧く使い右サイドの深い位置に抜け出して、正確なクロスを逆サイドに入れた。2点目のシーンは前記したとおりだ。ここで注目してほしいのはクロスを打った足だ。1点目は右足、2点目は左足と、左右両足を状況に応じて使い分けてピンポイントクロスを供給し、ゴールを演出した。
この飯野のクロスは精度の高さもさることながら、東京Vの守備陣にとっては最も守り難い球種と軌道を選択していたことにも注目したい。1点目を導いた右足からのクロスは、東京Vの最終ラインとGKの間を逃げていくようなスピードのある鋭い弾道だった。これによって相手守備は後ろ向きでの対応を余儀なくされ、ゴール前でのマークのズレとクリアミスを誘発した。そして2点目のシーンでは少し高い弾道で、1点目と比較すると滞空時間の長い高質なクロスだった。これは味方が飛び込んでくるところに正確に合わせるためのボールだ。この2つのクロスに共通しているのは、動いているボールの勢いを殺すことなく蹴ったという点だ。クロスを入れる際、精度を重んじるあまり、ボールを足もとに止めてしまう選手は少なくない。しかしそれは相手に対応するための時間を与えているプレーでもある。この飯野の、動くボールを正確に蹴ることのできる技術は高く評価したい。
また飯野はこのクロスを入れる際、攻撃の厚みがある場所=相手の守備が手薄な場所を見極めている。1点目であればファーサイドに走りこんだ髙橋、2点目であれば小松と一緒に上がってきた日髙、といった具合に、得点の可能性が高い場所を一瞬で見極めている。この視野の広さも飯野の持ち味だ。
本来はサイドバックが主戦場の飯野だが、ヴィッセルに加入以降、サイドの槍としてのプレーにも取り組んできた。苦労する時期も長かったが、そこで折れない強さも飯野は備えていた。その結果、単なるスピードスターに留まることなく、インテリジェンス溢れるサイドの槍となり、チームを勝利に導いた。

最後の砦
前記したようにこの日の試合では、ポケットを取られる場面も散見された。そこで東京Vの攻撃陣の前に立ち塞がったのはトゥーレルだった。42分に右ウイングバックの内田陽介が出したスルーパスに対して、右のハーフエリアで反応した福田が抜け出した。この場面でトゥーレルは福田に前を取られながらもボールにフォーカスしながら付き続け、福田がシュートを打つ寸前に内側から足のアウトでボールを触り、福田に当ててゴールキックへとつなげた。この場面について福田は試合後に「あれは決めなければいけない場面だった」としながらも、「シュートを打つために置き直したところで、トゥーレルに食われた」と振り返っていた。また67分には齋藤からのスルーパスに抜け出した染野に対しても、福田と同様にボールにフォーカスした守備でシュートを打たせなかった。これらの場面に象徴されるように、トゥーレルは試合を通じて東京V攻撃陣の前に立ち塞がり続けた。
トゥーレルと同様にゴール前での壁となりつつも、新しい姿を見せているのが相方である右センターバックの山川だ。ディフェンシブサードでの強さは相変わらずだが、最近の試合では山川の積極的な姿勢が目立っている。以前はボール保持に変わると、まずトゥーレルを選択していた山川だが、この日の試合でも積極的に前に出て、縦にボールを差し込む場面が何度も見られた。そしてそのパスの質は、以前と比較したとき、確実に向上している。以前は精度を気にするあまり、スピードが足りない場面も見られたが、今やそうした姿は完全に影を潜めた。さらに山川は状況に応じて回転を変えることで、受ける味方が蹴りやすい位置にボールを通すことを意識していたようだった。まだ時折パスミスも見られるが、このチャレンジこそが貴重だ。そしてそのチャレンジができる背景には、トゥーレルへの信頼感があるのだろう。
また見逃せないのが権田の動きだ。ボール保持の局面で、権田は常にボールホルダーが戻してくることを意識しながら、細かく立ち位置を変えていた。そのため相手の守備にはまった味方の選手が取り敢えず戻したとしても、権田が良い位置で受けてくれていたのだ。これは地味ながら質の高いプレーだ。ボールが遠ざかっていくにつれ、GKは前後だけに集中するケースが多い。しかしそこで横の動きを気にしながら権田が動くことができている背景には、自分もまたボールの脱出口の1つであるという意識がある。これは権田の経験がなせる業なのかもしれない。
この3人を中心とした最後の砦が堅実かつ強さを見せているという事実は、チームメイトに安心感を与えるだけではなく、スキッベ監督にチャレンジする猶予をも与えているのだ。
次節に向けて
この日の試合では大迫も戦列に復帰した。まだ本調子というわけにはいかないだろうが、大迫の能力や経験を考えれば、この試合で実戦復帰したことでコンディションは急上昇するだろう。そして何よりも今季初の連勝を挙げたという事実が、チームに与える自信は見逃すことができない。東京Vの状況に助けられた面はあるが、酒井が言うところの「気がついたら勝っている」という展開に持ち込んだことの意味は大きい。そして開幕当初に見せていた不安定さは消えつつあり、ヴィッセルらしい強さが発揮されつつある。
この流れを確実なものにするためにも、次節のV長崎戦は必勝を期して臨まなければならない。ここまで1勝1分3敗とやや苦しんでいる感のあるV長崎だが、タレントもそろいつつあり、侮ることのできない相手となっている。今節でも結果はドローだが、90分まではG大阪を相手に2点のリードを保っていたことからも、その力は明らかだ。
中3日に続いての中3日という厳しすぎる日程ではあるが、選手たちにはバランスの取れた戦いを見せてほしい。それは緩く戦うということではなく、ハイプレス・ハイインテンシティという基本は貫きつつも、試合状況や時間帯に応じた使い分けを見せてほしいという意味だ。
日曜日にはスタジアムで選手を鼓舞し続けるヴィッセルサポーターの声援を力に変え、3連勝を達成してくれることを確信している。


